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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)11601号 判決 1992年7月23日

主文

一  被告番号一ないし九番、一二番、一四番、五三番、五六番の各被告と別紙認容額一覧表の被告番号欄に記載された各被告(但し、被告番号七三番の被告を除く。)は、連帯して、同表の原告番号欄に記載された各原告に対し、それぞれ同表の認容額欄記載の金員(同じ原告番号の認容額が複数あるものは、そのうち最下段が全部の認容額、その余は内金、但し、認容額が同額のものは、上下段の被告番号欄記載の各被告も連帯して認容額欄記載の金員)及び右各金員に対する昭和六〇年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告番号一ないし五三番、五五ないし七五番、七七ないし八〇番、八二ないし九三番、九五ないし一一九番、一二一ないし一四三番の各原告が、破産者株式会社レブコジャパンに対し、別紙認容額一覧表の認容額欄記載(但し、同じ原告番号の認容額が複数あるものについては、そのうち最下段の認容額欄記載、また、原告番号一一九番の原告については、別紙債権届出状況一覧表の請求金額欄記載)の破産債権を有することを確定する。

三  原告番号一六三番、一九七番、二〇一番、二二九番の各原告の請求をいずれも棄却する。

四  前項の原告を除くその余の原告らの被告ら(但し、第二項かつこ書内で番号記載の原告の破産者株式会社レブコジャパンに対する請求を除く。)に対するその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用の負担は、別紙訴訟費用一覧表記載のとおりである。

六  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

理由

第一  請求

一  被告番号一ないし一五番、五三ないし五六番の各被告と別紙被害状況一覧表の原告欄記載の各原告に対応する同表の不法行為者欄記載の各被告(番号記載の者)は、右各原告に対し、連帯して、同表の右各原告に対応する請求金額欄記載の各金員及びこれに対する昭和六〇年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告番号一ないし五三番、五五ないし七五番、七七ないし八〇番、八二ないし九三番、九五ないし一一九番、一二一ないし一四三番の各原告が、破産者株式会社レブコジャパンに対し、別紙債権届出状況一覧表の原告欄に記載された右各原告に対応する同表の謀求金額欄記載の破産債権を有することを確定する。

第二  事案の概要

一  本件は、昭和五八年九月に営業を始めた三和信託株式会社(以下「三和信託」という。なお、同社は昭和六〇年七月一六日その商号を日本相互リース株式会社(以下「日本相互リース」という。)に変更したが、以下では三和信託を日本相互リースともいうことがある。)が原告らに純金の金地金(純金のインゴットで、以下単に「金地金」という。)の売買契約及びその賃貸借契約を締結させて金地金を引き渡さずに代金を支払わせたが、右は三和信託による組織的な詐欺などに当たるとして、原告らが、三和信託の取締役、監査役若しくは従業員または三和信託から委託を受けて金地金の購入にあたつたとされる破産者株式会社レブコジャパン(旧商号は株式会社レブコで昭和五九年九月一一日にその商号が株式会社レブコジャパンに変更された。以下「破産者レブコ」という。)の取締役若しくは監査役であつた被告らに対し、同被告ら及び破産者レブコらの共同不法行為に基づき、原告らが支払つた代金など別紙被害状況一覧表の請求金額欄記載の損害(同表の支払金額欄記載の各金額、同表の慰謝料欄記載の各金額及び同表の弁護士費用欄記載の各金額の合計から同表の填補金額欄記載の各金額を差し引いた各金額)の賠償を求めるとともに、破産者レブコに対し、三和信託の取締役、監査役及び従業員並びに破産者レブコの取締役及び監査役との共同不法行為に基づいて別紙債権届出状況一覧表の届出債権金額欄記載の損害賠償請求権(被害状況一覧表の請求金額欄記載の金額と一部異なる。)を内容とする破産債権の確定を求めた事案である。

二  三和信託の営業内容について

1  三和信託は、営業開始当時は顧客に対し金地金を販売して顧客から代金を受け取るが、顧客には金地金を引き渡さずに、顧客との間で同人が購入した金地金を三和信託に三年間または五年間預けてその間契約が成立した日から起算して六か月毎の末日に平均年一〇パーセントの利息(期間が三年の契約の利息は一年目が九・八パーセント、二年目が一〇パーセント、三年目が一〇・四パーセントであり、期間が五年の契約の利息は一年目が九・八パーセント、二年目が一〇パーセント、三年目が一〇・四パーセント、四年目が一〇・六パーセント、五年目が一一パーセントであつた。)を賃借料として支払い、三年または五年後に同種、同量の金地金または金地金取引価額相当の金員を顧客に返還する旨の契約(契約書上は賃貸借契約と称されていたが、法的には消費寄託契約と解される。そして、右の消費寄託契約のうち寄託する期間が三年の契約が「すくすく」、五年の契約が「みのり」と呼ばれていた。)を締結し、結局顧客には純金購入契約書、みのりまたはすくすく契約書及びみのりまたはすくすく契約証書の合計三通の書類を引き渡すというもので、右の金地金の売買契約とその消費寄託契約を一体の契約として顧客に斡旋していた(右の金地金の売買契約と消費寄託契約を組み合わせた契約を、以下「本件契約」という。)。

その後、みのり契約は期間が五年と長く、契約者が少なかつたので、営業開始後一年ほどで取り止め、その後は契約期間三年のすくすく契約をみのり契約に改め、同契約だけを取り扱つていた。みのりまたはすくすく契約では顧客が解約する際には解約手数料を支払わなければならなかつたが、昭和六〇年七月ころからは寄託する期間が一年、利息が年八・四パーセント、解約の際には解約手数料が不要とされる年輪契約(当時、三和信託は商号を日本相互リース株式会社に変更していたので、「につそうの年輪」などと呼ばれていた。)を取り扱うようになつた。

右の事実は、《証拠略》により認められる。

2  三和信託では、当初は東京金取引所での当日価格に一グラム当たり金五〇円を上乗せした価格を金地金の販売価格としていたが、その後一グラム当たり一〇〇円を上乗せするようになり、昭和五九年一二月ころからは、契約満期時における金地金の店頭価額が契約時の金地金の店頭価額を下回つたときは、その差損を三和信託が保証することにした(右の保証は、フルケアシステムと呼ばれており、以下「フルケアシステム」という。)のに伴い、一グラム当たり金二〇〇円を上乗せすることにした。

また、顧客が、本件契約の締結に当たつて三和信託に対し支払う手数料は、営業開始当初は、購入する金地金が五〇〇グラム未満の場合はその代金額の五パーセント、五〇〇グラム以上の場合はその代金額の三パーセントであつたが、フルケアシステムが導入されたころには、一律金地金の代金額の三パーセントとされた。

右の事実は、《証拠略》により認められる。

三  三和信託と破産者レブコの倒産

1  三和信託の顧客により昭和六〇年一〇月五日同社の破産が申し立てられ、東京地方裁判所は同月八日三和信託の全財産につき破産宣告前の仮差押えを行い、三和信託は同月一六日午後三時東京地方裁判所で破産宣告を受けた(同庁昭和六〇年(フ)第八三八号)。

右の事実は、《証拠略》により認められる。

2  破産者レブコは、昭和六一年一二月四日午後一時三〇分東京地方裁判所で破産宣告を受け(同庁昭和六一年(フ)第七四五号)、被告番号七三番の被告が破産管財人に選任された。そこで、原告番号一ないし五三番、五五ないし七五番、七七ないし八〇番、八二ないし九三番、九五ないし一一九番、一二一ないし一四三番の各原告は、破産債権者として、別紙債権届出状況一覧表記載の各債権の届出をしたが、被告番号七三番の被告は平成三年一〇月二日の債権調査期日に、同原告らの右各届出債権に異議を述べた。

右の事実は、《証拠略》により認められる。

第三  本件の争点

一  三和信託の商法の違法性について

1  原告らの主張

(一) 三和信託の商法

三和信託は、昭和五八年九月から営業を開始し、金地金売買と前記みのり、すくすくまたは年輪契約を組み合わせた商法により、多数の者から巨額の資金を集めてきた。その内容は前記第二の二のとおりであり、このように単なる金地金売買だけではせいぜい金地金の値上がり益しか期待できないところ、金地金売買契約とすくすく、みのりまたは年輪契約を組み合わせた三和信託の商法では右値上がり益のほかに年平均一〇パーセントという高い利息を稼ぐこともでき、一見はなはだ有利な話になる。

しかし、以下の事実から明らかなとおり、その商法の実態は、金地金の現物まがい商法(後記(五)を参照)であり、いわゆる豊田商事の商法を参考とし、その欠点を修正したもので、豊田商事よりも巧妙になつている。

(二) 三和信託の得意先係(三和信託の営業担当の従業員)による顧客に対する勧誘の方法の概要

(1) まず、女子社員(テレフォンと呼ばれており、以下「テレフォン」という。)が電話帳等により無差別に顧客に電話して金地金などへの投資を勧誘し、その家族関係、資産状況、購入の意思等できるだけの情報を収集し、多少とも見込みのある反応が得られた相手方を見込み客として得意先係に連絡する。

(2) 得意先係は早速見込み客の自宅を訪問し、見込み客に対し次のような説明をして三和信託との契約の締結を勧める。

(ア) 見込み客に金地金への投資であることを告げ、金地金は換金が自由であり、税金がかからず、値上がりも確実であること(金の三大利点と呼ばれており、以下「金の三大利点」という。)を強調し、金地金への投資が如何に有利であるかを説いて見込み客にその購入を勧め、数時間以上も粘つて金地金の購入を勧誘する。見込み客が金地金の購入に乗り気になると、金地金は保管していると紛失する危険があり、そのままでは利息を生むこともないなどと言い、すくすく、みのりまたは年輪契約の賃借料の利率の高さを強調し、金地金の運用方法などについても説明するなどして金地金の購入契約とともにすくすく、みのりまたは年輪契約の締結を勧める。

(イ) 見込み客に本件契約が金地金の購入契約であることを告げずに、ことさらみのり、すくすくまたは年輪契約における賃借料が銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などの利率よりも高い点などを強調して、本件契約の締結があたかも有利な預金への預け替えであるかのような説明をして本件契約の締結を勧める。

(ウ) 見込み客に金地金への投資であることを告げ、右(ア)のように金地金への投資が如何に有利であるかを説明したうえ、右(イ)のようにみのり、すくすくまたは年輪契約における賃借料が銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などの利息よりも高い点などを強調し、もつて本件契約の締結があたかも有利な預金への預け替えであるかのような説明をして本件契約の締結を勧める。

(3) 得意先係は、右(2)の説明の際、次のような説明などをすることもあつた。

(ア) 得意先係は、見込み客が三和信託という社名を聞いて三和信託を三和銀行株式会社(以下「三和銀行」という。)の関連会社であると誤信しているのに気づきながら、ことさらその誤信を利用したり、積極的に三和信託が三和銀行の関連会社であるかのような説明をするなどして、見込み客をして三和信託との契約が金融機関の扱う高金利で安全な定期預金であるかのように誤信させた。

(イ) 得意先係は、三和信託の契約は金地金の購入だから、マル優の廃止に伴う税金対策になるなどと説明して三和信託との契約に興味をもたせたうえ、三和信託は保険に入つているから客に迷惑をかけることはないとか、大蔵省、通産省、法務省などの官庁の認可を受けて営業をしているので倒産することはないなどと言つたり、あるいは、三和信託があたかも一〇年以上も営業を続けてきたり、契約実績が相当あるかのような説明をしたり、三和信託との契約は限られた人だけに紹介しており、いますぐ契約しないと、契約の枠がなくなつてしまうなどと言つて、契約の締結を躊躇している見込み客に契約を締結する気にさせていた。

(4) 見込み客が右(2)で得意先係の説明を聞いて本件契約を締結すると、得意先係は言葉巧みに誘つてその見込み客を三和信託の各支店に連れていき、会社を見せてその見込み客を安心させたうえで、会社の豪華な応接室で支店長や課長などの上司の助けを借りつつ、本件契約の追加の契約の締結を勧める。

これに対し、見込み客が右(2)で得意先係の説明を聞いても、なかなか契約の締結に応じないでいると、得意先係は言葉巧みに誘つてその見込み客を三和信託の各支店に連れていき、右同様の方法で、本件契約の締結を勧める。

(5) 以上の勧誘の結果、見込み客が三和信託と契約することにした場合、代金の支払方法は、顧客が手持ちの現金を直ちに支払う場合もあるが、多くは、得意先係が顧客から預金通帳、印鑑、委任状などの交付を受けて、これを三和信託の各支店の業務課の係員に渡し、同人がその顧客の預貯金などを解約し、その払戻しを受けた金員をその契約代金、手数料などの支払に充てるという方法をとつていた。しかし、時には得意先係が、顧客が銀行などの金融機関に解約手続に赴く際に同行したり、顧客に代わつて解約手続を代行する場合もあつた(別紙加害態様表の関与類型欄記載の「預金(保険等)解約」は右の場合を指す。)。

また、得意先係の中には、顧客に無断で、顧客に頼まれて解約した預貯金などの残金で追加の契約を締結してしまうこともあつた(同表の関与類型欄記載の「無断契約」は右の場合などを指す。)。

(6) 得意先係は、一旦契約した顧客に対しては、契約した当日に三和信託の各支店に連れて行つて追加の契約の締結を勧めたり、翌日などに預かつていた通帳や印鑑あるいは払戻しを受けた残金などを返しに顧客方を訪ねた際に追加の契約の締結を勧めるなどし、一旦契約を締結した顧客に何度も追加の契約を締結させ、もつて短期間のうちに顧客の預貯金などをすべて三和信託との契約に振り替えさせるなどした。

(三) 三和信託の得意先係の顧客に対する契約の勧誘以外の行為について

三和信託は、右(二)の勧誘をしたが、見込み客が未だ契約を締結しないうちに契約の締結をやめたいと申し出た場合には、顧客の翻意をできる限り阻止して(別紙加害態様表の関与類型欄記載の「翻意阻止」は右の場合を指す。)契約を成立させるとともに、顧客が契約を締結して代金を支払つた後に解約を申し出た場合には、多額の違約金をとるとか、いま解約すると損であるなどと言つて解約をできる限り阻止した(同表の関与類型欄記載の「解約阻止」は右の場合を指す。)。得意先係が説得しても顧客が解約を断念しないときは、やむなく解約に応じていたが、その場合には顧客が支払つた金額の三〇パーセントの金員を三六回の分割払いにするなど顧客にとつて極めて不利な和解契約を成立させていた(同表の関与類型欄記載の「和解契約」は右の場合を指す。)。また、三和信託は、昭和六〇年七月ころからは、社名を日本相互リースに変更したので証書などの書換えが必要であるなどと称して、顧客がもつている純金購入契約書、みのりまたはすくすく契約書及びみのりまたはすくすく契約証書の三通の書類を顧客から回収し、もつて証拠の湮滅を図るとともに、三和信託が本件契約に基づき顧客に負担する債務を第三者である日本相互リース保証株式会社(以下「日本相互リース保証」という。)が引き受けるなどという内容の書面に顧客の署名押印を求めるなどした(同表の関与類型欄記載の「証書書換」は右の場合を指す。)。

(四) 三和信託による金地金の調達方法及び資金運用方法について

三和信託は、右(一)の商法により総額約金六〇億円を越える資金を集め、その大半を破産者レブコに送金し、原告らの注文した金地金の現物を注文するとともに、右資金の運用を破産者レブコに任せるなどしたが、右の金地金の注文及び資金の運用などに関して、三和信託と破産者レブコは、次のような内容の合意をした(右の合意は現物条件付純金売買取引契約と呼ばれており、以下「現物条件付純金売買取引契約」という。)。

(1) 三和信託は、破産者レブコに対し、金地金の買い注文をし、注文の日から五日以内に代金を支払い、破産者レブコは、三和信託に対し、注文の日から三年後の当該日の月末に金地金を引き渡す。

(2) 破産者レブコは、三和信託に対し、手数料として注文時、満一年目の当該日の月末及び満二年目の当該日の月末にそれぞれ代金の二〇パーセントを支払う。注文時の支払方法は代金との差引き決済とする。

(3) 三和信託は契約を解約することはできない。ただ、やむを得ない事情がある場合には破産者レブコからの解約に応じなければならない。その場合、破産者レブコは、三和信託に対し、すでに受領済みの代金を三年の期間満了の日に返還し、三和信託は、破産者レブコに対し、受け取つた手数料を全額返還する。

(4) 破産者レブコが、収益を目的として右の代金を他に貸付けまたは事業に投資しても、三和信託は異議を述べない。

(5) 契約は、三和信託と破産者レブコとの間の専属取引契約であるから、三和信託は、破産者レブコに対し、毎月の総売上高の少なくとも七〇パーセント分は金地金の買い注文をしなければならない。

(6) 契約は、三和信託と破産者レブコの二社間の限定取引であつて、如何なる場合にも第三者への譲渡、転売などは許されない。

(五) 豊田商事の商法について

豊田商事は、金地金の売買と純金ファミリー契約を組み合わせた商法を行つていた株式会社であるが、純金ファミリー契約とは、客が購入した金地金を豊田商事に預け(契約書上はこれを「賃貸借」と称していた。)、豊田商事は一年または五年後に同種、同量の金地金または満期時の金地金の取引価格に相当する金員を返還するとともに、その間の賃借料として購入価格の一〇パーセント(一年契約の場合)または一五パーセント(五年契約の場合)相当額の金員を支払うというものであつた。そして、まず、営業社員が顧客に金地金の購入を勧め、顧客が購入の意思を示すと、次に営業社員はより有利な利殖方法として純金ファミリー契約を勧め、顧客に金地金が自分のものとなり、利息も受け取れる安全、確実な利殖方法であると信じ込ませて契約を締結させ、その代金名下に金員を交付させるというもので、結局、顧客は豊田商事に金地金の代金を支払うが、金地金の現物の引渡しを受けることはできず、代わりに証券の交付を受けるだけであつた(右の商法は、金地金の現物を売ると見せかけて巧みな言葉で証券とすり替えてしまうことから「金の現物まがい商法」または「金のペーパー商法」と呼ばれていた。)。豊田商事はこのようにして多額の金員を顧客から集めたが、そもそも同社には右の金員を金地金の購入に充てる意思がなく、これらを専ら人件費、先物取引などに費消し、そのため資金繰りが悪化して、昭和六〇年七月一日破産宣告を受けて同社は倒産した。

右の事実は、豊田商事に関する各社の報道や裁判例からみて、明らかである。

(六) 三和信託の商法の違法性について

(1) 共同詐欺

三和信託の商法は、顧客との間で、金地金の売買契約と一年、三年または五年間その顧客が買つた金地金を預かり、満期までの間顧客に年平均一〇パーセントの賃借料(別紙加害態様表記載のとおり原告らの中には預貯金に対する金利と誤信する者もいた。)を支払う旨の契約を締結し、顧客から金地金の代金名下に金員の交付を受けるというものであるが、右の商法は以下の事実から明らかなとおり詐欺的な商法である。

(ア) 金地金の不存在

前記第二の二の1のとおり、顧客である原告らは本件契約を締結しても本件契約の成立を証する証書の交付を受けるだけであり、三和信託自体には特に社会的信用性があるわけではないから、三和信託が先物取引をしているか、現物取引をしているかは原告らが本件契約を締結するにあたつて重要な関心事であつた。そして、三和信託も本件契約の勧誘の際には金地金の現物取引であることを強調し、原告らも三和信託が金地金の現物売買をし、金地金の現物が三和信託に保有されていると信じたからこそ本件契約を締結したのである。

しかし、本件契約の締結の際、三和信託には金地金を仕入れて原告らに引き渡す意思はなく、本件契約に先立ち契約に見合う金地金を保有せず、店頭にはわずかに見せ金用の金地金を置いてあるに過ぎず、本件契約後も契約に見合うだけの金地金を購入して引渡しを受けるなどして金地金の現物を保有しようとはしなかつたばかりか、顧客から預かつた金地金の代金の八〇パーセントの金員を破産者レブコに送金していた。

そして、原告らが、本件契約の締結の際に三和信託が金地金の現物売買を全く行つていないこと、顧客から預かつた金員の八〇パーセントもの金員を破産者レブコに送金することなどを知つていたなら、年輪、みのりまたはすくすく契約を締結することはなかつたというべきところ、三和信託は右のとおり金地金を現に保有せず、金地金の現物売買をするなどして金地金を保有しようとする意思もないにもかかわらず、これを秘して原告らとの間で年輪、みのりまたはすくすく契約を締結したのであるから、右は三和信託による詐欺に当たるというべきである。

これに対し、三和信託側は、破産者レブコとの間で現物条件付純金売買取引契約を締結しており、破産者レブコへの送金は金地金の買付代金としてされていた旨反論するが、破産者レブコは送金されてきた金員で金地金の先物取引をしていただけで、それは金地金の現物取引とはその性格を全く異にするから、破産者レブコが金地金の先物取引をしていたからといつて、三和信託が金地金の現物を保有していたということはできない。

また、破産者レブコは、三和信託から送金された金員を金地金の先物取引の委託証拠金として用いたほかには、名古屋または岡山に存する不動産を始めとするいわゆる事件ものの不動産や立川駅前のビル建築資金の協力金などに投資しただけで、金地金の現物売買を全くしていなかつたから、金地金を保有する意思はなかつたというべきである。結局、三和信託が、破産者レブコとの間で現物条件付純金売買取引契約を締結し、これに基づいて原告らから預かつた金員を送金したのは、三和信託が原告らから預かつた金員で金地金を購入しているかのように仮装するために過ぎなかつたというべきである。

このように、三和信託の商法のうち、同社が金地金の現物を保有していると告げた点は詐欺に当たるというべきである。

(イ) 賃借料支払の欺瞞性

三和信託は多数の営業員を雇い、豊田商事ほどではないにせよ、これに高額の歩合給を支給し、津田沼、立川、新宿で三店舗を賃借し、人件費、店舗の賃料、その他一般事務費等の営業経費をかなり必要としていたうえ、破産者レブコは三和信託から受け取つた金員を金地金の先物取引のほかには名古屋または岡山に存する不動産を始めとするいわゆる事件ものの不動産などに投資したのみで、人件費等の営業経費に費消していたのであるから、いずれも有効な収益を上げていなかつたというべきである。しかも、金地金の価額は、昭和五五年一月の一グラム六四八〇円をピークに以後一貫して値下がりを続けており、破産者レブコが先物取引で買い付けた金地金の値上がり益も期待できなかつた(だからこそ、三和信託は昭和五九年一二月からフルケアシステムを導入したのである。)のであるから、三和信託は営業を続ければ続けるほど損失が累積拡大し、それによる資金不足を本件契約により集めた金で補わざるを得ず、いわば自転車操業を行つていたのであり、早晩その経営が破綻することは免れなかつたのであつて、三和信託が原告らに対し、年平均一〇パーセントの利息を賃借料名下に支払うことはおよそ不可能であつた。

しかるに、三和信託は、顧客に対し、金地金は絶対に値上がりし、税金もかからないなどと申し向けて金地金の購入を勧め、原告らが金地金の現物を購入する意思を示すと、さらに金地金は保管していると紛失する危険があるし、そのままでは利息も生まない、三和信託に預ければ、年平均一〇パーセントの利息を支払う、銀行預金よりも有利だ、お金が必要になつたときは何時でも預かつている金地金を現金に換えることができるなどと申し向けて金地金を三和信託に預けることを勧め、もつて原告らをして本件契約を締結すると、金地金の現物が購入され、これが三和信託に保管されたうえ、年平均一〇パーセントという利息が支払われ、それゆえ本件契約は極めて安全、確実、有利な投資であるかのように誤信させ、よつて本件契約を締結させるとともに、原告らの郵便貯金、銀行預金、国債等を解約させ、これを金地金売買代金名下に交付させたのであり、右は三和信託による詐欺に当たるというべきである。

(ウ) 金の三大利点の虚偽性

被告らは換金自由、無税、値上がり確実という金の三大利点の話しを強調して本件契約の締結を勧め、原告らはその話しを信じて本件契約を締結したものであるが、そもそも本件契約では原告らが購入した金地金は三和信託に預けることになり、手元に金地金がないから換金のしようがなく、金地金を売却して利益があれば当然所得税を支払う義務があるから税金がかからないといえないうえ、金地金の価格は昭和五五年を境に以後値下がりを続けており、値上がりが確実に見込まれる状況にはなかつたから、被告らが話していた金の三大利点はいずれも虚偽であつた。被告らは本件契約の締結の際に元本は保証するとも述べているが、金地金の値下がりの結果、定期預金などを解約して本件契約を締結した者は元本自体を失うことになるから、その点でも虚偽といわざるを得ない。

(エ) 契約内容に関する欺罔行為

被告らの中には本件契約が金地金の売買契約であることを告げずに、預貯金よりも金利のよい商品であるとだけ告げて契約の勧誘をする者がいたが、前述のとおり、締結する契約は金地金の売買契約とその消費寄託契約であり、正確な説明をすると、契約をすることができないので、あえて契約の内容を偽つていたもので、それ自体詐欺若しくは社会的相当性を逸脱した違法な行為というべきである。

(オ) 勧誘文言の虚偽性

三和信託が営業を開始した昭和五八年九月には、既に豊田商事の商法に関してマスコミなどにより批判のキャンペーンが展開されていたため、三和信託の営業担当の従業員の中には、豊田商事とは異なることを強調して信頼を得る意味で、保険に入つているとか、通産省や大蔵省などの官庁の許可を得ているとか、昭和五八年九月に営業を開始したことを秘して相当以前から営業を続けてきたかのような話しや本件契約を締結する顧客が相当数いるかのような話しなどを顧客に告げて勧誘した者がいた。しかし、これらはいずれも虚偽の事実である。

このように三和信託の商法は、金地金の現物取引を前提とした安全、確実、有利な投資であるかのような外観をとりながら、実際には何ら金地金の現物の裏付けがなく、しかも資金運用が極めて杜撰なため、全く安全、確実、有利な投資とはいえない。したがつて、実態は金地金への投資ではなく、早晩経営の破綻することの確実な三和信託ないし破産者レブコという詐欺的組織そのものに対する投資に過ぎない。すなわち、三和信託の商法とは、三和信託には見せ金用のわずかの金地金を除いては全く金地金がないのに、あたかも多量の金地金を保有し、これを運用して郵便貯金、銀行預金、国債等よりも高い収益を上げることができるかの如く装い、その旨顧客を誤信させて金員の交付を受けるというものであつて、みのり、すくすくまたは年輪契約及び破産者レブコと三和信託が締結した現物条件付純金売買取引契約は三和信託が原告らから金員の騙取を隠蔽するための方便に過ぎない(みのり、すくすくは埼玉銀行(当時は埼玉銀行と呼ばれていたが、現在は協和埼玉銀行と呼ばれている。)の期日指定定期預金などと同じ名称であり、三和信託株式会社という商号の使用(その意義につき後記(3)を参照)と相まつて、顧客に三和信託が信用のおける金融機関であると思い込ませようとする意図が十分窺われる。)。年輪、みのりまたはすくすく契約は金地金の引渡しを一年、三年または五年先に引き延ばして本件契約による金員の騙取の早期発覚を防ぐために、現物条件付純金売買取引契約は三和信託が金地金の購入を全くしていないとの非難を避けるためにそれぞれなされたものというべきである。

(2) 勧誘行為の反社会性

次に述べる事実から明らかなとおり、三和信託の得意先係による契約の勧誘などの態様は社会的に許された限度を著しく超えるもので、極めて反社会的である。

(ア) 三和信託の商法は、テレフォンによる無差別の電話勧誘によつて少しでも反応のあつた客に対し、得意先係がその自宅を訪問して本格的な勧誘をするというものであり、一旦訪問するや、数時間ないし一〇時間以上も居座つたり、粘つたり、若しくは炊事、洗濯などのみせかけの親切行為をして、原告らの正常な判断ができないようにした上で本件契約を締結させていた。

(イ) 得意先係は、顧客を三和信託の支店に自動車で強引に連れて行き、豪華な応接室に案内し、上司である支店長、部長、課長等に引き合わせて、契約締結を迷つていた顧客に対し、集団的に強引に契約を勧誘し、結局、顧客をして金地金が自分のものになり、かつ、郵便貯金、銀行預金等よりも高い利息が受け取れる安全、確実な利殖方法であると信じ込ませて契約を締結させていた。

(ウ) そして、顧客が途中で翻意しないように預貯金の払戻しに同行し、あるいは、息子等になりすまして払戻手続の代行等をしていた。

(エ) 一旦顧客との間で契約が成立すると、次々と追加契約の勧誘を行い、短期間のうちに数百万円から数千万円の金員が本件契約の代金の名目で顧客から三和信託に預けられたのであり、このような追加契約の勧誘の態様は極めて異常であるというほかはない。

(オ) 得意先係は、意識的に年金生活者、老人、主婦などの社会的弱者を勧誘対象としており、被害金員は、例えば老後の生活資金であるとか、子供の教育資金であるとか、顧客にとつて今後生活していく上で必要不可欠の資金であつた。

以上はすべて三和信託の得意先係に対する入社当初に行われる研修や基本トーク等で周知徹底されており、三和信託はいわば会社ぐるみで社会的弱者ともいうべき老人、主婦に狙いを絞つて営業活動を行つていたのであり、得意先係による勧誘行為は社会的に許された限度を著しく超えるもので、極めて反社会的である。

(3) 三和信託株式会社という商号による欺罔性

顧客の多くは、三和信託株式会社との商号から、三和信託を三和銀行の信託部門であるとか、信託銀行の一つであると誤信していたが、三和信託は基本トークを通じて右誤信を最大限に利用して契約をとるよう営業社員に指示しており、現に営業社員は右誤信を最大限に利用し、本件契約は信託法上の契約であつて、利息を生む銀行預金と異ならず、政府(大蔵省または法務省)の許可を得ているから三和信託が倒産しても政府が保証してくれるなどと虚言を弄して原告らを一層誤信させていた。

(4) 出資法二条違反

本件契約は金地金の売買、その賃貸借の形式をとりながら現物の調達の裏付けのないものであるから、実態として三和信託が業として不特定かつ多数の者から金地金の売買代金名下に金員を受け入れているに過ぎず、したがつて、本件契約に際し原告らから交付された金員は出資の受入、預り金及び金利等の取締り等に関する法律二条の預り金に該当し、三和信託の商法は同法条に違反する。殊に金地金の売買であることを全く告げずに契約の勧誘をして本件契約が成立した場合には同法二条に違反しているといわざるを得ない。

(5) 三和信託と破産者レブコとの関係について

(ア) 三和信託の代表取締役であつた被告前田進(被告番号一番の被告で、以下「被告前田」ともいう。)と破産者レブコの代表取締役である被告石原こと李忠博(被告番号五三番の被告で、以下「被告石原忠博」ともいう。)はもと豊田商事の同僚の間柄で、昭和五八年七月ころ、豊田商事の商法に従業員として関与することに飽き足らず、自ら組織の主体となつて一層の利益を獲得するため、統一的な意思のもとに、豊田商事の商法を参考とし、その欠点を修正し、より巧妙に利益を獲得する目的で両社を設立したもので、三和信託は、被告前田、同原幸夫(被告番号二番の被告で、以下「被告原」ともいう。)らが、同年六月ころ休眠会社であつた株式会社シンワを買い取つて商号を三和信託株式会社に変更して、同年九月から営業を開始し、破産者レブコは、被告石原忠博らが同年七月五日に設立し、同年九月から営業を開始した。

(イ) 被告前田は昭和五九年一二月七日から同六〇年三月一一日まで三和信託の取締役を退いて破産者レブコの取締役となつており、被告石原忠博の妻である被告竹内文世(被告番号一五番の被告)は、同五八年六月二三日から同六〇年七月一一日まで三和信託の監査役であり、三和信託の発行済株式総数二万四〇〇〇株のうち被告前田と同竹内文世が各六〇〇〇株を所有し、破産者レブコの発行済株式総数四〇〇株のうち三九三株を被告石原忠博が所有している。そして、破産者レブコは三和信託に対し、しばしば融資を行つており、その総額は昭和六〇年六月までに金一二億円に達していること、三和信託と破産者レブコの営業開始の時期、破産者レブコと三和信託との間で締結された現物条件付純金売買取引契約の内容(前記(四)を参照)などを考えると、三和信託と破産者レブコの人的結合は極めて緊密で、両者は組織的には一体というべきである。

そして、前記(六)の(1)ないし(4)で述べたことなども考え合わせると、破産者レブコは、三和信託が顧客に売り渡した金地金を購入し、その売買代金を運用していることを仮装する目的で設立された会社といえ、三和信託の商法とはいわば三和信託と破産者レブコによる共同詐欺であつたというべきである。

(七) 以上から明らかなとおり、三和信託の商法は豊田商事の商法を模範とし、その欠点を修正してより巧妙としたもので、その違法性は極めて強いというべきである。

(八) 三和信託の商法の一環としてされた契約の勧誘以外の行為の違法性について

前記(三)の各行為のうち、翻意阻止は三和信託の商法に基づく契約の勧誘を助け、契約の成立に至らせるために、預金解約は成立した契約に基づく代金の支払を確実にするためにそれぞれされたものである。また、三和信託は、全く金地金がないのに多量の金地金を保有しているかのように顧客に説明して契約を締結し、その代金名下に金員の交付を受けていたから、顧客からの解約に応じていては会社の業務が成り立たなくなるので、契約の成立後は極力解約に応じない方針がとられていたのであり、解約阻止、和解契約の締結、証書の書換えはいずれも三和信託が一旦顧客から預かつた金員を顧客に返還することを阻止する目的でされたものというべきである。

したがつて、前記(三)の各行為は違法な三和信託の商法を推進するためにそれぞれされたもので、契約の締結の勧誘と同様違法というべきである。

2  被告番号四一番の被告(訴え提起時の被告番号は六六番、以下、かつこ書の中の数字は当該被告の訴え提起時の被告番号)の主張

一般に営業担当の従業員が取引の勧誘をする際には、社会的相当性の範囲内で多少の誇張や駆け引きは許されており、また、執拗で強引な勧誘行為というが、それらは三和信託に限らず他の業種の営業においても日常的にされていることである。営業の基本は断られても諦めずに説得することであり、それは他の面からみれば執拗で強引な勧誘ということになるに過ぎず、したがつて、執拗で強引な勧誘方法であるからといつて直ちに違法とはいえない。原告らは、被告が原告らの自宅に長時間居座つたというが、特に退去を求められたわけでもなく、被告と話しをすることを拒んだということもない。契約をとるには顧客との間の人間関係の形成が重要であり、被告が原告らにした親切行為が違法ということもできない。また、被告が原告らを会社に連れていつた点も被告が原告らの意思を抑圧した形跡は全くないのであるから、違法とはいえない。契約することに躊躇している者に対し集団的に強引に契約させたというが、余りにも抽象的な表現で、違法か否かの判断はできない。このように行為の客観的側面をみる限り、被告の勧誘などの行為は違法とはいえない。

3  被告番号一五番(一五)、五四番(九〇)、五五番(九二)の各被告の主張

被告石原忠博は、被告前田とともに豊田商事に勤めていたが、その商法がいずれは破綻することを予知し、昭和五七年一一月に退職した。その後、被告前田が合法的で健全な仕事をしたいと言つて協力を求めてきたことから、被告前田が三和信託を、被告石原忠博が破産者レブコをそれぞれ設立し、営業を開始した。両社の経営方針として豊田商事の商法を根本的に改善して合法的かつ合理的なものとし、現実に金地金を買い付けること、経費を節約し、不必要な支店は置かないこと、顧客本位を旨とし、解約にも応じることなどを営業の基本方針とし、同五八年九月一三日三和信託と破産者レブコは現物条件付純金売買取引契約を締結した。破産者レブコは、三和信託との間で、金地金を調達する方法として現物取引のほか先物取引を行うこと、先物取引で当初に納入した保証金以外の資金は自由に運用することができることなどを合意し、右に基づいて岡山の土地などを取得した。被告石原忠博は、その後、マスコミの誤つた報道により、三和信託の商法が窮地に追い込まれたため、破産者レブコが利益をあげる方法として、右の土地について金二七、八億円程度の抵当証券を発行することとし、ナショナル抵当証券株式会社(その後、商号を株式会社丸和モーゲージに変更)を設立して抵当証券を発行し、同六一年春までにはこれを完売した。しかし、マスコミが他の抵当証券会社の件で抵当証券の二重売り、空売りが行われているなどと報道したことから、ナショナル抵当証券株式会社においても約金一〇億円の解約が出てしまい、その後の販売が思わしくなく、結局、同社は同年一〇月に倒産した。

以上のとおり、金地金の商法も抵当証券の商法もいずれも合法的な商法であり、詐欺といわれるところはない。

二  原告らに対する具体的な不法行為について

1  原告らの主張

別紙被害状況一覧表の原告欄記載の各原告に対応する同表の不法行為者欄記載の各被告(被告番号一番、二番、四ないし九番、一一ないし一四番、一六ないし五二番、五七ないし七二番の各被告)及び件外人(もと三和信託の従業員として、原告らに対し本件契約の締結を勧めるなどした者で、不法行為者として主張されているが、右原告らとの関係で被告となつていない者)らは、その対応する各原告に対し、別紙加害態様表の加害態様等欄記載のとおり申し向けて執拗かつ強引に勧誘し(同表の関与類型欄記載の「契約勧誘」をいう。)、同表の加害態様表の加害態様表欄記載のとおり契約の締結を躊躇などしていた原告らに契約を締結する気にさせる(同表の関与類型欄記載の「翻意阻止」をいう。)などして原告らと三和信託との間で純金売買契約及びすくすく、みのりまたは年輪のいずれかの契約を締結させ、金地金などの代金の支払に充てるために原告らの預金などの解約手続を代行するなどして(同表の関与類型欄記載の「預金解約」をいう。)同表の支払金額欄記載の各金員を交付させ、代金支払に充てるために原告らから依頼されて原告ら名義の預金の解約手続を代行した際に代金充当後の残金で原告らに無断で純金売買契約及び右のいずれかの契約を締結したり(同表の関与類型欄記載の「無断契約」をいう。)、原告らに対し、三和信託は安全、確実な運用をしており、豊田商事のようなことには絶対にならないから心配はいらないなど別紙加害態様表の加害態様表等欄記載のとおり申し向け、もつと原告らが右のいずれかの契約を解約することを断念させ(同表の関与類型欄記載の「解約阻止」をいう。)、三和信託が社名を変更したことを理由に純金購入契約書、みのりまたはすくすく契約書及びみのりまたはすくすく契約証書を書換えさせ(同表の関与類型欄記載の「証書書換」をいう。)、原告らによる解約の申入れに対し、支払われる可能性がない支払不能な条件で和解を締結して解約に応じる(同表の関与類型欄記載の「和解契約」をいう。)などした。

2  被告番号一二番(一二)の被告の主張

原告番号五八番の原告は被告が契約を勧誘した相手方であると思う。その余の原告らについては記憶がない。上司としてあいさつ程度をかわした者は相当の数にのぼるので名前だけでは思い出せない。

3  被告番号一三番(一三)の被告の主張

被告は契約の勧誘の際原告番号二〇番の原告に対し原告が主張するような勧誘文言は述べていない。また契約の勧誘の際原告番号四五番の原告に対して原告が主張するような話しはしていない。

4  被告番号二三番(三五)の被告の主張

被告は原告番号一〇番、七四番、八一番の各原告に対して契約の勧誘をしたことはない。

5  被告番号二四番(三七)の被告の主張

被告は、原告番号一三五番の原告に対し同原告の自宅で契約の勧誘をして純金三〇〇グラムの契約を締結し、原告番号一三四番の原告に対し同原告の自宅で契約の勧誘をして純金一〇〇グラムの契約を締結し(同原告はその後再び契約しているが、それは熊木誠が担当したものである。)、原告番号一三八番の原告に対しては、同原告の自宅で契約の勧誘をして純金一五〇〇グラムを締結した後、同原告が会社を見たい、追加契約もしたいというので契約の翌日会社に連れて行き、支店長の被告北田一広(被告番号五番の被告で、以下「被告北田」という。)、上司の被告目黒武生(被告番号四八番の被告で、以下「被告目黒」という。)の説明を受けてさらに一口純金契約を締結した。いずれも指定された時間に原告らの自宅を訪問し、約一時間ほど話しをして契約を締結しただけで、不法に長時間滞留したとか、勧誘の際脅迫や詐欺をしたということはなく、右の原告らはいずれも自主的に契約をしたものである。

6  被告番号三五番(五六)の被告の主張

被告は原告番号六四番の原告に対し契約の勧誘をしたことはない。

7  被告番号三九番(六四)の被告の主張

被告は原告番号四番、一八番、二一番、二七番、四六番、四七番、六〇番、六六番、七七番、九三番、一四七番、一五〇番、一七一番、一七六番、一八一番、一九二番、二〇八番、二一〇番、二二二番の各原告に対し直接契約を勧誘したことはない。原告番号五五番の原告に対し契約を勧誘して本件契約を成立させたが、原告が主張するような不当な勧誘をしたことはない。原告番号九六番の原告に対し契約を勧誘して原告が主張する契約のうち一部を成立させたが、原告が主張するような不当な勧誘をしたことはない。原告番号一五七番の原告には通夜に行つて名刺を渡しただけで契約の勧誘は一切していない。

8  被告番号四一番(六六)の被告の主張

被告は原告番号七番、二〇番の各原告に対し契約の勧誘をしたが、同原告らは通常の預貯金では金利が低いと考えて三和信託との契紙を締結したのであり、本件契約の締結は同原告らの自発的な意思に基づくものである。原告番号四七番の原告には名刺を置いてあいさつをかわした程度で契約の勧誘はしていない。

9  被告番号四二番(七〇)の被告の主張

被告は原告番号二五番の原告との間で純金売買契約及びすくすく契約を締結したが、その代金額は約金三〇〇万円であり、原告番号一九八番の原告に対し契約の勧誘をして純金売買契約及びすくすく契約を締結したが、原告番号一六九番の原告に対して契約の勧誘をしたことはない。

10  被告番号四四番(七六)の被告(被告林田四波三郎で、以下「被告林田」ともいう。)の主張

被告林田は昭和六〇年五月原告番号六四番の原告に対しその自宅で契約の勧誘をしたが、自宅を訪問してから約三〇分を過ぎたころ上司である被告北野良雄(被告番号二四番の被告で、以下「被告北野」ともいう。)が来訪し、被告北野が同原告に対して専ら説明をして契約を締結した。被告林田は同年八月に同原告から追加契約をしたいと頼まれたが、同月二〇日ころ脳梗塞で倒れてしまい、その後の契約手続は被告砂田政明(被告番号三五番の被告で、以下「被告砂田」ともいう。)が行つた。

11  被告番号四五番(七八)の被告の主張

被告は昭和五九年一〇月一七日原告番号一七番の原告宅で商品の説明をした後、会社に連れて行き、上司で当時部長であつた被告長谷川植夫(被告番号一二番の被告で、以下「被告長谷川」ともいう。)が説明し、金五六七万一二〇〇円分の契約を締結し、被告が預金の解約手続を代行してその解約金を代金に充当したが、その残金の使い道がいまのところないというので、同月一八日そのうち金五七万一二三八円分の契約を締結した。同年八月六日原告番号三四番の原告宅で商品の説明をして金二八五万八〇四〇円分の契約を締結し、同月八日会社で被告長谷川が説明し、金八五〇万〇六八〇円の契約を締結し、同月三一日追加契約をお願いしたところ、同原告は金二八二万一三二〇円分の契約を締結してくれた。被告は同年一一月一日原告番号三六番の原告宅で商品の説明をした後、会社に連れて行き、被告鈴木信司(被告番号三四番の被告)が説明してその場で金二七六万七二六〇円分の契約を締結した。同年七月一六日原告番号六三番の原告宅で商品の説明をした後、会社に連れて行き、被告長谷川が説明し、その場で金六一七万五四八八円分の契約を締結した。同年一〇月三〇日原告番号九四番の原告宅で商品の説明をした後、会社に連れて行き、被告長谷川が説明した後、同原告宅に戻り、そこで金五五七万五三二〇円分の契約を締結した。同年六月六日原告番号一七三番の原告宅に赴き、商品の説明をして金六一万四〇八六円分の契約を締結し、同年九月一九日原告番号二三〇番の原告宅に赴き、商品の説明をして金八四万八八二三円分の契約を締結し、同月二一日会社で被告長谷川が説明した後、同原告宅で金一四一万四七四〇円分の契約を締結し、証書、印鑑、委任状を預かつた。右原告らはいずれも自発的に契約を締結した。

12  被告番号四七番(八一)の被告の主張

被告は原告番号八番、四八番、八九番の各原告との間で本件契約を締結したが、その余の原告らとの契約には関与していない。

13  被告番号五〇番(八四)の被告の主張

被告が原告番号四番の原告に対し契約の勧誘をしたのは昭和五九年一一月一三日であり、その際三和信託は三和銀行に関係があるようなことは述べていない。滞在時間も午後一時過ぎから三時ころまでであつた。被告は、三和信託の方針に従つたまでであり、原告らの主張するような違法、不当な勧誘をしたことはない。なお、原告番号四一番の原告に対しては契約の勧誘をしたことはない。

原告番号一六二番の原告に関する陳述録取書(甲各第一六二号証の一)の提出は、従前の被告本人尋問(第二回)の際、新たな証拠はないとしながら、結審間際に提出されたもので、時期に遅れた攻撃防御方法の提出として却下を求める。

14  被告番号五一番(八五)の被告の主張

被告は原告番号一番、四番、一四番、三八番、七二番、八三番、八四番、八六番、八八番、一四七番、一五〇番、二一四番、二三〇番の各原告に対し契約の勧誘をしたことはない。原告番号二〇五番の原告については契約をしたいというので同原告の自宅に赴いて契約を締結した。原告番号三五番の原告については三和信託の支店で商品の説明をして契約を成立させた。原告番号六番の原告については三和信託の支店で商品の説明をして第一回目の契約は成立させたが、第二回目の契約の勧誘はしていない。原告番号一六番の原告については昭和五九年七月三〇日同原告の自宅で第一回目の契約の勧誘をして契約を成立させたが、第二、第三回目の契約の勧誘はしていない。原告番号四八番の原告については三和信託の支店で商品の説明をして第二回目の契約は成立させたが、第一及び第三回目の契約の勧誘はしていない。原告番号五〇番の原告については三和信託の支店で商品の説明をして第二回目の契約は成立させたが、第一回目の契約の勧誘はしていない。原告番号一六八番の原告については第一回目の契約の勧誘はしていないが、第二ないし第四回目の契約は被告が成立させた。原告番号一九三番の原告については昭和六〇年一月一七日三和信託の支店で商品の説明をして第二回目の契約を成立させたが、第一回目、第三回目の各契約の勧誘はしていない。

15  被告番号五二番(八七)の被告の主張

被告は原告番号二四番の原告に対しては契約を勧誘し、本件契約を締結したが、原告番号一〇番、三四番、四〇番、五六番の各原告については契約を勧誘した覚えはない。原告番号五二番、六五番、八七番の各原告については各原告の自宅を何度か訪問したことはあるが、契約をしたことはない。原告番号三三番、四三番の各原告については三和信託の支店で他の従業員に勧誘されて契約した際に立ち会うなどしたことがあり、原告番号七九番の原告については自宅を訪問したことがあり、同原告が三和信託の支店で他の従業員に勧誘されて契約した際に立ち会うなどしたことがある。原告番号八五番の原告については昭和五八年一一月二六日三和信託の支店で契約を締結する際に立ち会つたが、その後の契約については知らない。被告は原告らの意思に基づいて本件契約を締結したのであり、いやがるものを無理やり契約したわけではない。

16  被告番号五七番(九五)の被告の主張

原告番号一二三番の原告は被告番号四八番の被告の担当で、同被告の指示に従い契約書の担当者欄に押印しただけであり、契約の勧誘などは一切行つていない。

17  被告番号五八番(九八)の被告の主張

被告は原告番号九八番、一一九番、一二八番、一四一番の各原告のために事務的手続をしたことはあるが、契約の勧誘をしたことはない。

18  被告番号六六番(一三一)の被告の主張

被告は原告番号一七〇番の原告に対し契約の勧誘をしたことはなく、同原告から代金を預かるなどの事務手続を行つたに過ぎない。

19  被告番号七二番(一四九)の被告の主張

被告は原告番号一五四番の原告に対し商品の説明をして契約を締結したが、同原告が主張するように強引に上がり込んだとか、居座つたとかしたことはない。

三  別紙被害状況一覧表の原告欄記載の各原告に対応する同表の不法行為者欄記載の各被告(被告番号一番、二番、四ないし九番、一一ないし一四番、一六番ないし五二番、五七番ないし七二番の各被告(本件の争点三の中でこれらを単に「被告ら」という。))及び件外人らのうち、その対応する各原告に対して本件契約の締結を勧めた者の責任について

1  原告らの主張

(一) 被告ら及び件外人らの三和信託の商法の違法性に対する認識または認識可能性について

(1) 金地金の現物まがい性に対する認識

被告ら及び件外人らは、顧客との契約の締結に当たり三和信託が金地金を保有したり、契約後に直ちに金地金を調達する必要がないこと(金地金の現物まがい性)について認識していた。

すなわち、被告ら及び件外人らは、三和信託の得意先係として顧客に対し本件契約の締結を勧めているが、金地金への投資とはいいながら、金地金を渡さずに証書などを渡して現金を集めてくるのであるから、顧客との契約の締結に当たつて金地金を保有していないことが三和信託の商法を遂行するうえでは何の支障にもならないことは十分わかつていたはずである。そして、三和信託はそれほど従業員が多くない会社であるから、会社全体の様子、自己の所属する支店の様子などは容易に把握できること、会社の組織としてはほとんどの従業員が営業部門に配属されていて、顧客から預かつた金員や金地金などを運用する部門などがないことは一目瞭然であること、同僚の得意先係が毎日多くの契約を成立させているのを見ていたこと、支店で顧客に対し、同人の金地金だなどと言いながら、何度も同じ金地金の現物を見せていることなどからみて、被告ら及び件外人らは、顧客との契約高に見合う金地金が会社に保管されていないことを知つていたはずである。

(2) 賃料支払の欺瞞性に対する認識または認識可能性

三和信託は、前記のとおり、顧客に年平均一〇パーセントもの賃借料の支払を約したうえ、被告ら及び件外人らをはじめとする従業員に豊田商事ほどではないにせよ、高額の給料を支払い、駅前の一等地に豪華な店舗を構えるなどして多額の経費を支出していたのであるから、企業として存続していくためには顧客から預かつた金員で高収益を上げる必要があつた。そのことは被告ら及び件外人らも十分に認識していたはずであるところ、原告らに対し契約の締結を勧めるにあたつて、高収益を上げる方法のひとつとして金地金の値上がり益があるとの説明をしているが、そもそも金地金は昭和五五年一月の一グラム金六四八〇円をピークに値下がりを続けており(このことは原告らに示したパンフレットにも記載されていた。)、右の説明は明白に虚偽であつて、このように収益源につき明らかに虚偽の説明をしているのは、そもそも被告ら及び件外人らが高収益を上げるだけの運用方法がないことを未必的にせよ知つていたからであるということができ、仮に知らなかつたとしても容易に認識することができたはずである。

(3) 勧誘方法、勧誘態様の反社会性に対する認識または認識可能性

前記のとおり、得意先係の顧客に対する勧誘方法、勧誘態様は極めて反社会的であり、被告ら及び件外人らは原告らに対し、別紙加害態様表記載のとおり申し向けて契約の締結を勧めているのであるから、その勧誘方法、勧誘態様の反社会性は十分認識したはずであり、仮に認識していなかつたとしても容易に認識できたはずである。

(4) 豊田商事または三和信託に関するマスコミなどによる報道状況について

三和信託が営業を開始した昭和五八年夏ころには既にマスコミなどにより豊田商事の商法を批判、弾劾する報道がされていたが、豊田商事の商法と三和信託の商法とは極めて類似しているから、右の報道に接した者は三和信託の商法に対し、疑問を抱いたはずである。そして、同五九年九月には新聞各紙に社団法人信託協会の「類似商号会社にご注意ください」と題する広告が掲載され、それ以後は豊田商事と同様の商法を展開している悪徳会社がある旨の記事がしばしば掲載され、特に同六〇年に入つてからは三和信託の名を挙げてその商法に疑問を呈する記事も現れるに至つた。そして、同年五月からは豊田商事に関する記事がマスコミを賑わす社会的大問題となり、同種商法に対する批判も頻繁に展開されるようになり、三和信託社内でも動揺と疑問が広がり、同年六月には被告石原忠博、同前田、同原、三和信託の顧問弁護士(但し、当時は弁護士資格はなかつた。)井上誠らが三和信託の営業社員を集めて、三和信託には豊田商事のような不正はないなどの趣旨の訓示をするに至つた。以上の経緯からすれば、少なくとも昭和五九年終わり頃ないし昭和六〇年に入つた頃は、三和信託の社員ならば誰でもその商法に強い疑問を抱いていたはずである。

(二) 被告ら及び件外人らの詐欺などについて

(1) 被告ら及び件外人らは、三和信託が真実は原告らとの金地金購入契約の取引高に相当する金地金を保有しておらず、ましてやこれを有利に運用する方法もないこと、及び、金地金代金名下に原告らから交付された金員のかなりの部分が三和信託の従業員の給料、営業所の経費等に費消され、その余の金員は資産をほとんど有していない破産者レブコに送金されていたことを知つていたにもかかわらず、原告らに対し、別紙加害態様表記載のとおり申し向けて契約の締結を勧め、原告らをして三和信託及び破産者レブコが優良で堅実な会社で、預けた金地金は三和信託によつて安全に保管するか、有利に運用され、返還時期には値上がりした金地金の現物または現金の返還が受けられ、かつ年平均一〇パーセントの賃借料の支払が確実に受けられると誤信させ、もつて本件契約を締結させて別紙被害状況一欄表の支払金額欄記載の各金員を金地金売買代金名下に騙取した。

(2) 仮に、被告ら及び件外人らが、破産者レブコの存在、同社における金員の費消状況、三和信託及び破産者レブコの経理内容などを知らなかつたとしても、被告ら及び件外人らは金地金の現物まがい性及び賃料支払の欺瞞性については十分認識していたということができ、被告ら及び件外人らには三和信託の商法の主要部分につき認識があるから、被告ら及び件外人らが原告らに契約の締結を勧め、もつて金地金の代金名下に金員を交付させた一連の行為は被告ら及び件外人らの詐欺であるということができる。

(三) 被告ら及び件外人らの不法行為(詐欺を除く。)について

(1) いわゆる利殖商品、金融商品は顧客に高率の利益配分を約して金員を出捐させるものであり、高率の利益を分配するには、売主が極めて高率の運用益を恒常的に上げていく必要があるから、右のような商品の販売を営業として行う者は、顧客から預かつた金員を返還できなくなるほど顧客に損害を与えることがないように自己の扱う商品の具体的な運用方法などについて十分確認し、顧客に対し約定どおりの利益の分配が行えるか否かを調べ、納得したうえで、顧客に対して契約の締結を勧める義務を負つているというべきであり、特に顧客に契約の安全性、有利性を強調して契約の締結を勧める場合には、右の注意義務の程度は高いというべきである。

(2) また、前記のとおり、被告ら及び件外人らは、三和信託の商法の違法性を容易に認識することができたといえるうえ、三和信託の商法が客観的には犯罪を構成するような反社会的な商法であつて、被告ら及び件外人らはその推進者であること、三和信託の業務内容は高価な金地金の売買に関するもので、特に他の預金より特段に有利な年平均一〇パーセントという利率を保証する利殖商品とされていたこと、被告ら及び件外人らは原告らに対して反社会的な方法、態様で契約の締結を勧め、これによつて高額の報酬を得ていたことなども考え合わせると、被告ら及び件外人らには三和信託の商法の違法性を認識して、原告らに損害を与えないよう損害の発生を回避すべき義務があつたというべきである。

(3) しかるに、被告ら及び件外人らは、右の注意義務を尽くさず、漫然と原告らに契約の締結を勧め、原告らに金地金の代金名下に金員を交付させ、もつて後記第三の七のとおり原告らに損害を被らせたのであるから、被告ら及び件外人らは、共同不法行為者として右の損害につき民法七〇九条に基づき損害賠償責任を負うというべきである。

なお、被告らの中には、得意先係には運用方法を調査、確認する方法がないとか、例えば、生命保険の外交員のようにおよそ末端の営業担当の従業員は運用方法などを知らずに契約の締結を勧めているなどを主張する者がいるが、三和信託の場合は生命保険会社や銀行などのように運用方法の基本的枠組みを説明することすらできないのであるから、被告ら及び件外人らに右の注意義務がないとはおよそいえない。

2  被告番号二三番の被告の主張

被告は三和信託の従業員であつたが、高額な歩合給を得て原告らから金員を騙取したことはない。

3  被告番号二四番の被告の主張

被告は昭和五九年三月に三和信託に入社し、同社の従業員として歩合給を得ていたが、高額な歩合給ではなかつた。被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけであり、後に何度か顧客が解約を申し出たり、不安を抱いている旨の話しを聞いて上司や社長に説明を求めたが、顧客が契約しただけの金地金もあり、他に資産もかなりあつて業績もよいから絶対に倒産することはないとの説明を受け、その説明を信じていた。

4  被告番号二一番、二二番、二五番、三三番、四八番、六六番、七〇番の各被告の主張

被告らは三和信託の従業員であつたが、会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

5  被告番号二九番の被告の主張

被告は昭和五九年一一月ころから同六〇年八月ころまで三和信託の従業員であつた。固定給は入社当時が金二〇万円で、歩合給はときおり変動していたが、原告が主張するような高額ではなかつた。被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

6  被告番号三五番の被告の主張

被告は三和信託の従業員であつたが、給料は一か月平均三〇万円程度であり、会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

7  被告番号三六番の被告の主張

被告は昭和五九年一二月に三和信託に入社したが、在職中は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

8  被告番号三八番の被告の主張

被告は昭和五九年八月ころから同六〇年一月まで三和信託の従業員であつたが、その間の給料は一か月約金二〇万円程度であり、歩合給は一度ももらつたことはなかつた。

被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

9  被告番号三九番の被告の主張

被告は三和信託の従業員として昭和五九年度には歩合給として約金八〇万円を得たことがあるが、それ以外は歩合給をもらつたことはなく、もらつた歩合給も一般に比して高額な歩合給ではなかつた。被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

10  被告番号四一番の被告の主張

被告は三和信託の従業員として歩合給を得ていたが、営業を担当する者として他と比較しても決して高額の歩合給を得ていたわけではない。被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけであり、上司の言葉を信用して営業を続けていたのである。

11  被告番号四二番の被告の主張

被告は昭和五八年九月ころ造花の販売員として三和信託に入社し、同五九年五月に退社したが、その間三和信託が顧客から預かつた金員で金地金を購入していなかつたことは知らず、知らないことに何の過失もない。

12  被告番号四五番の被告の主張

被告は昭和五九年二月末造花などの輸入品の販売の営業をするという三和信託の広告をみて同社に入社し、同年三月から同六〇年一月まで三和信託の従業員であつたが、固定給は月額約金二〇ないし三八万円で、歩合給は多いときで金六〇万円余り、少ないときで金六〇〇〇円余りであつた。

被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。被告自身同五九年五月に代金約金一七〇万円で本件契約を締結し、同年一一月には第一回の賃借料が支払われており、被告は三和信託が違法な営業をしているとは全く考えていなかつた。

13  被告番号四七番、七一番の各被告の主張

被告らは三和信託の従業員であつたが、会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

14  被告番号四九番の被告の主張

被告は昭和五九年二月から同六〇年六月まで三和信託の従業員であり、固定給は一か月平均二〇ないし二三万円で、歩合給は合計でも金一〇ないし一五万円で、賞与はもらわなかつた。

被告は三和信託に入社後、会社自体に不安を抱き、何度か上司に相談したが、上司からこれから伸びる会社だといわれて納得した。昭和六〇年五月ころになると、豊田商事の問題がマスコミなどで大きく報道されるようになつたため、再び会社の前途に不安を抱くようになつたが、上司は毎日のように朝礼の際に自信をもつて営業をするよう話しをした。そして、同年六月には被告前田、同石原忠博が会社の顧問弁護士と称する者を連れてきて三和信託の営業は違法ではなく、十分な資産もあるとの説明をした。被告はそれを聞いて安心した。

15  被告番号五〇番の被告の主張

被告は昭和五九年四月から同六〇年六月五日ころまで三和信託の従業員であつたが、得ていた歩合給は契約金額の〇・五ないし一・〇パーセントに過ぎず、支給された総額は金一二四万四一八〇円で、このうち顧客が解約したため金四一万七一三二円を会社に返還した。結局、被告が受領した歩合給は金八二万七〇四八円であり、支給された固定給の総額は金三七〇万六四四〇円で月平均金二三万一六五三円であり、歩合給を含めた給料は月平均金二八万三三四三円に過ぎないから、会社の実態を疑わなければならないほどの高額であるとは到底いえない。

被告は高校も卒業しておらず、それまで会社勤めの経験もない一介の従業員に過ぎず、三和信託が原告らから預かつた金員をどのように運用し、どの程度利益を上げていたかは全く知らないし、関心もなかつた。会社の上層部からは金の買付けはきちんと行つていると聞いて安全確実に運用しているものと信じていた。被告自身やその親族も三和信託との間で契約を締結しており、三和信託の営業が違法であるとは思つておらず、被告には違法性の認識がなかつた。上司から三和信託は豊田商事とは異なる旨の説明を受け、これを信じていた。ただ、昭和六〇年五月ころ豊田商事の会長が殺されるという事件が起こつた後、会社から三和信託の営業は合法的であるとの説明がされたが、不安になり、同年六月五日に退職したのである。

16  被告番号五一番の被告の主張

被告は三和信託の従業員であつたが、固定給は月平均約金三〇万円で、歩合給は月間の売上のノルマを達成しなければもらえず、その額も契約金額の〇・三ないし一パーセント程度であつた。被告は高額な歩合給を得て原告らから金員を騙取したことはない。

17  被告番号五二番の被告の主張

被告は三和信託の従業員として歩合給を得ていたが、高額な歩合給ではなかつた。会社からは金の買付けはきちんと行つていると聞いていた。原告らは自発的に契約に応じたのであり、無理やり契約をさせたわけではない。

18  被告番号五七番の被告の主張

被告らは三和信託の従業員であつたが、会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけであり、また被告自身も被告の母や祖母も三和信託と総額約金一二〇万円の契約を締結している。

19  被告番号五八番の被告の主張

被告は昭和五九年三月から同六〇年八月まで三和信託の従業員であつたが、営業担当ではなく、内勤であつたため月平均二〇万円の給料をもらつていたのみで、歩合給は一切もらつていなかつた。被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけであり、昭和六〇年六月ころに弁護士井上誠から三和信託は豊田商事とは異なるという説明を聞いて安心していた。

20  被告番号六七番の被告の主張

被告は昭和六〇年五月から同年九月まで三和信託の従業員であり、給料は月平均約二五万円であつた。被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

21  被告番号六九番の被告の主張

被告は三和信託の従業員であつたが、会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけであり、また昭和六〇年六月会社側の弁護士から三和信託の営業は順調であると言われて、それを信じていた。

22  被告番号七二番の被告の主張

被告は昭和五九年九月ころから同六〇年五、六月ころまで三和信託の従業員であつたが、会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけである。

四  別紙被害状況一覧表の原告欄記載の各原告に対応する同表の不法行為者欄記載の各被告(被告番号一番、二番、四ないし九番、一一ないし一四番、一六ないし五二番、五七ないし七二番の各被告)のうち、その対応する各原告に対し、本件契約の締結の勧誘以外の行為(別紙加害態様表の契約類型欄記載の「契約勧誘」以外の行為)をした者は、その対応する各原告に対して本件契約の締結の勧誘をした者とともに、その対応する各原告に対して共同不法行為に基づく責任を負うか。

(原告らの主張)

本件契約は金地金の売買契約と消費寄託契約との混合契約であるから、三和信託は本件契約の締結によつて原告らの請求があればいつでも原告らに対し金地金を返還する義務を負うことになるが、前記のとおり、三和信託は原告らとの契約に見合つた金地金を保有していなかつたのであるから、原告らからの返還請求に応ずることは不可能であり、そのため前記のとおり、三和信託の得意先係は、原告らに対し、三和信託は安全、確実な運用をしており、豊田商事のようなことには絶対ならないから心配はいらないなどと申し向けて金地金の引渡しを拒否し、金員の返還を免れるなどの行為を行つていたのである。

したがつて、被告ら及び件外人らの原告らに対する詐欺若しくは詐欺的行為は単に本件契約の成立、代金の授受にとどまらず、その後の本件契約による賃借期間が満了するまで継続しているというべきで、本件契約の勧誘、成立、代金支払、その後の賃借料の支払などの全過程を通じて連続的に行われていたものということができ、右の全過程が一個の不法行為を構成するから、被告ら及び件外人らのうち原告らに対して直接契約を勧誘して代金の交付を受けた者のみならず、右の全過程のいずれかに関与した者には全過程について不法行為が成立するものというべきであり、被告ら及び件外人らが別紙加害態様表の関与類型欄記載の契約勧誘、翻意阻止、預金(保険等)解約、無断契約、解約阻止、証書書換及び和解契約などのいずれに関与したかを問わず、関与者全員につき契約した原告に対する関係で共同不法行為が成立するというべきである。

そうすると、別紙被害状況一覧表の原告欄記載の各原告に対応する各被告は(そのうちの一つにでも関与していれば、当該原告の損害すべてについて)、その対応する各原告に対し、共同不法行為に基づき連帯して右の各原告が被つた損害を賠償する責任を負う。

五  破産者レブコ、別紙被害状況一覧表の原告欄記載の各原告(但し、原告番号五四番、七六番、八一番、九四番、一二〇番の各原告を除く。これらの者は訴えを取り下げた。)に対応する同表の不法行為者欄記載の各被告(被告番号一番、二番、四ないし九番、一一ないし一四番、一六ないし五二番、五七ないし七二番の各被告)とともに、その対応する各原告に対し、共同不法行為に基づき責任を負うか。

(原告らの主張)

破産者レブコは、三和信託によるその商法の実行に当たつて、三和信託が原告らに売り渡した金地金を購入して右売買代金を運用しているように仮装するために設立され、設立後は三和信託との間で現物条件付純金売買取引契約を締結して三和信託が原告らに売り渡した金地金を購入し、右売買代金を運用しているように仮装し、もつて三和信託の商法の実行に加巧したのであるから、破産者レブコの代表者である被告石原忠博は本件契約が違法であることを十分認識していたというべきである。

六  三和信託の取締役若しくは監査役(被告番号一ないし一五番の各被告)または破産者レブコの取締役若しくは監査役(被告番号五三ないし五六番の各被告)は、別紙被害状況一覧表の原告欄記載の各原告に対応する同表の不法行為者欄記載の各被告(被告番号一番、二番、四ないし九番、一一ないし一四番、一六ないし五二番及び五七ないし七二番の各被告)及び破産者レブコとともに、その対応する各原告に対し、共同不法行為に基づき責任を負うか。

1  原告らの主張

(一) 被告番号一ないし一五番の各被告は、三和信託の取締役または監査役として、共謀の上、違法な三和信託の商法を企画、立案、実行し、また、営業担当の従業員の管理職として部、課長会議、販売会議、朝礼等の各種会議、会合あるいは日常的な営業上の指揮、監督、社内教育などを通じて共同して会社ぐるみで三和信託の商法を遂行し、実現したのであるから、本件契約が違法であることを十分認識していたということができ、仮に本件契約の勧誘をするに当たつてそれが違法であることを認識していなかつたものがいるとしても、前記のとおりこれを容易に認識することができたのであるから、同被告らには重大な過失がある。

(二) 被告番号五三ないし五六番の各被告は、破産者レブコの取締役または監査役として、共謀の上、三和信託と一体となつて三和信託の商法を企画、立案、実行したのであるから、本件契約が違法であることを十分認識していたというべきであり、仮にそうでないとしても容易にこれを認識することができたはずである。

(三) そうすると、被告番号一ないし一五番の各被告及び同番号五三ないし五六番の各被告については、被告番号一番、二番、四ないし九番、一一ないし一四番、一六ないし五二番、五七ないし七二番の各被告または件外人らが別紙被害状況一覧表中の右の各被告または件外人らに対応する原告欄記載の各原告に対してした契約の勧誘などの行為のすべてについてこれらの被告または件外人ら及び破産者レブコとの間で共同不法行為が成立するというべきである。

したがつて、被告番号一ないし一五番、五三ないし五七番及び破産者レブコは、別紙被害状況一覧表の原告欄記載の各原告に対応する同表の不法行為者欄記載の各被告または件外人らとともに、右各原告に対し、共同不法行為に基づき連帯して右の各原告が被つた損害につき賠償する責任を負う。

2  被告番号五番の被告の主張

被告は三和信託の従業員であつたが、会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけであり、三和信託の営業が違法なものであるとは予見できなかつた。

3  被告番号一〇番の被告の主張

被告は昭和五九年二月から同六〇年五月まで三和信託の従業員であり、事務職として就業したことはあるが、取締役に就任したことはなく、取締役に就任したという話しを聞いたことも、就任することを承諾したこともなく、取締役会にも一回も出席したこともない。

4  被告番号一二番の被告の主張

被告は昭和五八年一〇月から同六〇年九月初旬まで三和信託の従業員で、最初の半年間は平社員として、その後は管理職として仕事をした。三和信託が破産宣告を受ける数か月前に、当時三和信託の代表取締役をしていた被告原から取締役に就任するように求められたが、これを辞退しており、取締役会、役員会議などには一度も出席したことがない。三和信託が破産宣告を受けた当時は得意先係部長で、支店長の指示で仕事をしていただけである。

被告は管理職に在籍して一か月金三〇ないし四〇万円の固定給を得、月間の売上のノルマを達成したときには歩合給を得ていたが、金額は二〇ないし三〇万円程度で、不当に高額な歩合給ではなかつた。ノルマを達成したのは一年間に三ないし四回であつた。三和信託には賞与などはなかつた。

被告は会社員としての職責を果たすために上司の指示に従つていただけであり、ことに三和信託が破産宣告を受ける数か月前に従業員全員が新宿店に集められ、弁護士と称する井上に三和信託の営業には違法性はないと言われており、その営業が違法なものとは到底予見できなかつた。

5  被告番号一三番の被告の主張

被告は昭和五九年一月から同六〇年七月二〇日まで三和信託の従業員であり、同年一月には同社の取締役に就任したとの辞令を受けたが、その後役員会議などには一回も出席したことはなく、取締役就任期間中、役員手当てなども得ていなかつた。

被告は歩合給を含め毎月金二〇ないし六〇万円の給料を得ていたが、歩合給は豊田商事のように契約金額の二〇ないし三〇パーセントというものではなく、せいぜいその一ないし二パーセントであり、他の会社の営業担当の従業員と比較しても決して法外なものではなかつた。

6  被告番号一五番の被告の主張

被告は三和信託の監査役とされているものの、右は夫である被告石原忠博の依頼により人数合わせのために名義上、三和信託の発起人及び監査役となつただけであつて、一回も実務を行つたことはなかつたから、被告には何らの責任もない。

7  被告番号五四番の被告の主張

三和信託や破産者レブコが行つていた商法はいずれも合法的なものであるから、被告には違法な商法によつて原告らに損害を与えるという故意がなかつた。

8  被告番号五五番の被告の主張

被告は破産者レブコの取締役とされているものの、右は被告石原忠博の依頼により人数合わせのために名義上、破産者レブコの発起人及び取締役となつただけであつて、一回も実務を行つたことはなかつたから、被告には何らの責任もない。

七  損害の有無

(原告らの主張)

原告らは、別紙被害状況一覧表の支払金額欄記載の各金額の金員の出捐を余儀なくされたが、原告らの一部はその後三和信託から同表の填補金額欄記載の各金額の金員の返還を受けているので、これを控除した金額が原告らが被告ら及び件外人らの共同不法行為によつて被つた直接的損害である。そして、原告らは、右の共同不法行為によつて精神的に著しい打撃を受けたが、この精神的苦痛を慰謝するには右の損害額の一〇パーセントが相当である。また、原告らは被告らから任意の支払を受けられないので、原告ら代理人弁護士に訴訟の提起を委任せざるを得ず、その際、日本弁護士連合会弁護士報酬基準所定の弁護士費用を支払うことを約したが、少なくとも同表の弁護士費用欄記載の各金額は、その対応する原告に対する被告らの負担とするのが相当である。

八  過失相殺の可否

(被告番号四一番の被告の主張)

三和信託が違法な営業をしていたとしても、原告らも本件契約によつて相応の利益を得ようとしていたのであり、専ら被告のみに落ち度があつたわけではない。

第四  原告らの被告番号二ないし四番、一八番、二〇番、二六番、二七番、三一番、三二番、三四番、三七番、四〇番、四三番、五九番、六二ないし六五番、六八番の各被告に対する請求について

一  右の被告らは、適式の呼出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない(但し、中には、裁判所が被告宛に送付したアンケート回答書を返送してきた者がいるが、不出頭のため、提出されていない。)。したがつて、右の被告らは、いずれも、民訴法一四〇条三項により、原告ら主張の事実(前記第二の事実及び第三の本件の争点一ないし七の事実)を明らかに争わないものとしてこれを自白したものとみなす。

二  被告番号二ないし四番の被告の責任(但し、被告番号四番の被告は、原告番号二〇四番の一ないし四の各原告らに対する関係では、その後公示送達となつたので、この関係の責任を除く。なお、右の点については後記第八を参照)

右の事実によれば、右のうち、被告番号二ないし四番の被告には、当該被告が行つた契約勧誘等について別紙加害態様表の不法行為者欄に記載された同被告らに対応する各原告に対して、その不法行為者欄に同被告らとともに記載されたその余の被告ら、件外人らとの間で共同不法行為が成立するとともに、三和信託の取締役などとしてその商法を推進した幹部の責任として、別紙加害態様表に記載された各原告に対応する不法行為者欄記載の各被告、件外人らとの間で、その対応する原告らに対して共同不法行為が成立する。

但し、後記第八以下で判断のとおり、その主張自体からみて、不法行為の成立しない被告に対する請求、原告の主張自体、加害態様等の主張を欠く請求について不法行為は成立せず、不法行為の成立する被告についても慰謝料請求は、認められない。そのほか、損害額の算定については、後記第八以下の認定と同一とすることとする(弁論の全趣旨からみて、原告らも、そこまでの各別の判断は求めていないと解する。)。

したがつて、被告番号二ないし四番の各被告に対する認容額は、別紙認容額一覧表中の、すべての原告に対応する認容額欄のとおりとなる。

三  被告番号一八番、二〇番、二六番、二七番、三一番、三二番、三四番、三七番、四〇番、四三番、五九番、六二ないし六五番、六八番の各被告の責任

右一の事実によれば、右被告番号の各被告には、別紙加害態様表の不法行為者欄に記載された同被告らに対応する各原告に対して、その不法行為者欄に同被告らとともに記載されたその余の被告ら、件外人(及び前記幹部)らとの間で、共同不法行為が成立する。

但し、不法行為の成立の有無、損害額の算定等は、右二と同様である。

第五  原告らの被告番号二八番の被告に対する請求について

一  被告番号二八番の被告は、弁論終結時には、公示送達となつているが、それまでの間適式の呼出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。したがつて、民訴法一四〇条三項により、原告ら主張の事実を明らかに争わないものとしてこれを自白したものとみなす。

二  右の事実によれば、被告番号二八番の被告には、別紙加害態様表の不法行為者欄に記載された同被告に対応する各原告に対して、その不法行為者欄に同被告とともに記載されていたその余の被告ら、件外人(及び前記幹部)らとの間で共同不法行為が成立する。

但し、不法行為の成立の有無、損害額の算定等は、前記第四と同様である。

第六  原告らの被告番号六番の被告に対する請求について

一  被告番号六番の被告は、弁論終結時には、公示送達となつているが、原告番号一四四ないし二三四番の各原告に対する関係では、適式の呼出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他準備書面を提出しない。したがつて、民訴法一四〇条三項により、右原告ら主張の事実を明らかに争わないものとしてこれを自白したものとみなす。

二  しかし、被告番号六番の被告の具体的な加害行為(原告番号一四六番、二一四番の各原告に対するもの)についての主張は、公示送達後にされているので、証拠により判断する。

《証拠略》によれば、同被告の、原告番号一四六番の原告に対する不法行為(別紙加害態様表(一四六)の事実のうち(三)の事実)を、甲各第二一四号証の一によれば、原告番号二一四番の原告に対する不法行為(同表(二一四)の事実のうち(一)の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  右の事実によれば、被告番号六番の被告には、原告番号一四六番、二一四番の各原告に対して、別紙加害態様表の不法行為者欄に同被告とともに記載されたその余の被告ら、件外人らとの間で共同不法行為が成立するとともに、三和信託の取締役などとしてその商法を推進した幹部社員の責任として、同表の原告欄に記載された各原告(原告番号一四四ないし二三四番の各原告)に対応する不法行為者欄記載の各被告、件外人らとともに、その原告らに対して共同不法行為が成立する。

但し、不法行為の成立の有無、損害額の算定等は、前記第四と同様である。

第七  原告らの被告番号五六番の被告に対する請求について

一  被告番号五六番の被告は、弁論終結時には、公示送達となつているが、それまでの間適式の呼出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しない。したがつて、民訴法一四〇条三項により、原告ら主張の事実を明らかに争わないものとしてこれを自白したものとみなす。

二  右の事実によれば、被告番号五六番の被告には、破産者レブコの取締役などとして三和信託の商法を推進した幹部の責任として、別紙加害態様表の各原告に対応する不法行為者欄記載の各被告、件外人らとの間で、その対応する原告らに対して共同不法行為が成立する。

但し、不法行為の成立の有無、損害額の算定等は、前記第四と同様である。

第八  争点に対する判断(原告らの被告番号一番、五番、七ないし一七番、一九番、二一ないし二五番、二九番、三〇番、三三番、三五番、三六番、三八番、三九番、四一番、四二番、四四ないし五五番、五七番、五八番、六〇番、六一番、六六番、六七番、六九ないし七三番の各被告に対する請求、原告番号一ないし一四三番の各原告の被告番号六番の被告に対する請求(公示送達にかかるもの)、原告番号二〇四番の一ないし四の各原告の被告番号四番の被告に対する請求(公示送達にかかるもの)について、なお、一部の被告との間では、争いのない事実も含む。)

一  三和信託の商法の違法性(本件の争点)について

1  後記第八の二で認定した事実、《証拠略》によれば、次の事実が認められる。

(一) 三和信託及び破産者レブコの設立に至るまでの経緯について

(1) 被告前田は昭和五六年一一月に、同原は同年九月に、同石原忠博は同五七年二月にそれぞれ豊田商事に入社して営業を担当し、同萩原光昭(被告番号三番の被告で、以下「被告萩原」ともいう。)、同福島幹雄(被告番号四番の被告で、以下「被告福島」ともいう。)、同鈴木光一郎(被告番号六番の被告)、同沢井弘孝(被告番号八番の被告で、以下「被告沢井」ともいう。)、同角町雅敏(被告番号九番の被告で、以下「被告角町」ともいう。)、同長谷川、同戸田登代二(被告番号一四番の被告で、以下「被告戸田」ともいう。)、同藤田利佐夫(被告番号四六番の被告で、以下「被告藤田」ともいう。)、同吉松由紀夫(被告番号五二番の被告で、以下「被告吉松」ともいう。)も豊田商事の従業員として営業を担当していた。

(2) 豊田商事は金地金の売買と純金ファミリー契約を組み合わせた商法を行つていた株式会社であり、純金ファミリー契約とは、顧客が豊田商事から購入した金地金を同社に預けさせ(契約書上はこれを「賃貸借」と称していた。)、同社は一年または五年後に同種、同量の金地金または満期時の金地金の取引価格相当の金員を返還するとともに、満期までの間に金地金の賃借料として、一年契約の場合には購入価格の一〇パーセント相当額の金員を、五年契約の場合には購入価格の一五パーセント相当額の金員をそれぞれ顧客に支払うというものであつた。そして、豊田商事の営業担当の従業員は、まず金の三大利点を説いて顧客に金地金の購入を勧め、顧客が購入の意思を示すと、次に有利な利殖方法として純金ファミリー契約の締結を勧め、顧客をして、右契約を締結すれば金地金が自分のものになるうえ利息も受け取ることができる安全、確実な利殖方法であると信じ込ませて右契約を締結させ、その代金名下に金員を交付させていたのであり、豊田商事はこのようにして集めた金員の六〇パーセントを営業担当の従業員の給料などをはじめとする一般経費に充てるとともに、その余は同社の関連会社である銀河計画株式会社(以下「銀河計画」という。)を介して投機の資金に充てており、金地金の買付けなどは全くしていなかつた。右の投資はいずれも失敗して回収の目処はなく、そのため顧客に毎年賃借料を支払つたり、満期に金地金を引き渡すことはおよそ不可能であつた。

(3) 被告前田と同石原忠博は豊田商事の従業員として互いに面識があつたが、金地金を買い付けると称して顧客から金員を受け取つておきながら、全く金地金を買い付けずにこれを多額の経費に費消したり、投機の資金に充てるなどする右(2)の豊田商事の商法に疑問を持ち、このままでは早晩会社自体が破綻すると考えたことなどから、同五七年には同社を退職した。しかし、被告前田も同石原忠博も、豊田商事のような商法がマスコミで盛んに批判、弾劾され(後記(五)の(1)を参照)、現に金地金の買付けなど全く行つていないにもかかわらず、警察が詐欺などを理由に摘発しないのは、右の商法自体は違法ではないからであり、経費をできるだけ押さえるとともに金地金の買付けを別会社に行わせて同社が金地金の買付けをしたという形をとれば、豊田商事のように社会問題は引き起こさないと考えた。そして、被告前田が顧客との間で金地金の売買契約とその賃貸借契約を締結するための会社を、被告石原忠博が被告前田が設立した会社から注文を受けて金地金の買付けを行う会社をそれぞれ設立して、豊田商事と同様の商法を行うことを企て、被告前田などに同調して豊田商事を退職した被告萩原、同福島、同鈴木光一郎、同沢井、同角町、同長谷川、同戸田、同藤田及び同吉松がこれらの会社の設立、運営に協力することになつた。

(4) そこで、被告前田、同原らは、昭和五八年六月ころ、当時休眠会社となつていた株式会社シンワ(食料品、雑貨品などの輸入、輸出を業とする資本金三〇〇万円の株式会社)を買い取つて、同月一一日被告前田がその代表取締役に、被告原及び同萩原がその取締役にそれぞれ就任し(同月二三日その旨の登記をした。)、右同日商号を三和信託株式会社に、会社の目的を宝飾品、貴金属の仕入れ、卸し販売及びリースなどに、本店を東京都豊島区南池袋二丁目一一番一号にそれぞれ変更し、同年七月二二日には被告福島が三和信託の取締役に就任し(同月二八日その旨の登記をした。)、同月二三日には本店を東京都立川市曙町二丁目四九番地に移転したうえ、同年九月一日から同所を立川店として営業を開始した。そして、被告鈴木光一郎、同沢井、同角町及び同戸田が三和信託の従業員となつた(なお、被告鈴木光一郎は同年一〇月一二日に、同沢井、同角町及び同戸田は同六〇年三月一一日にそれぞれ三和信託の取締役に就任し、同鈴木光一郎及び同沢井は同年八月三一日に、同戸田は同年七月一一日にそれぞれ取締役を退任している。)。その後、三和信託は、同五九年二月一日千葉県船橋市前原西二丁目一四番二号に津田沼店を開設し、同年四月一八日には東京都立川市曙町二丁目三四番六号(本店の移転に伴い、立川店も同所に移転した。)に、同年一二月六日には東京都新宿区二丁目五番一〇号にそれぞれ本店を移し、同月一八日同所二丁目四番三号に新宿店を開設した。

また、被告石原忠博は、昭和五八年七月五日宝飾品、貴石、貴金属等の輸出入、仕入れ、卸し販売及びリース業などを目的とする破産者レブコを設立し、被告石原忠博がその代表取締役に就任し、本店を三鷹市下連雀として同年九月一日から営業を開始した。そして、被告長谷川、同藤田及び同吉松が破産者レブコの従業員となつたが、昭和五九年に入るといずれも三和信託の従業員となつた(なお、被告長谷川は同六〇年三月一一日に三和信託の取締役に就任し、同年七月一一日に退任している。)。

(5) 三和信託は、昭和五八年九月一三日、破産者レブコとの間で前記第三の一のとおりの内容の現物条件付純金売買取引契約を締結し、この契約に基づいて、三和信託が顧客との間で締結した契約高に見合うだけの量の金地金の買い注文を出すことになつた。

(二) 得意先係による顧客に対する勧誘の方法の概要について

(1) まず、テレフォンが電話帳などにより無差別に電話をかけて金地金への投資または銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などよりも安全で有利な利殖方法であると勧めたうえ、家族関係、資産状況、購入の意思などできるだけの情報を収集し、多少とも見込みのある反応が得られた相手方を見込み客として得意先係に連絡する。

(2) 得意先係は、テレフォンが収集した情報に基づいて早速その見込み客方を訪ね、その見込み客方に長時間居座るなどして、同人に対し、金地金に関するパンフレットを示しつつ金地金の確実性、安全性を執拗に説き、金地金はいつでもどこでも換金することができ、銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などのようにマル優の廃止に伴つて課税されるおそれはないから税金対策になるうえ、必ず値上がりするなど金地金の三大利点をその見込み客に説明する。そのうえで、顧客が金地金を手元に置いても利息がつかないうえ、盗難の危険があるなど金地金の引渡しを受けることの欠点を引げ、それを補う、高利率の利殖方法がみのりまたはすくすく契約であると説く。その際、金地金の三大利点や銀行預金などの金利と比較した結果などを紙に記載して示していた。

営業開始当初はこのような勧誘方法がとられたが、その後、多くの得意先係は、金地金の確実性、安全性を執拗に説きつつ、三和信託に金員を預ければ、安全かつ有利に運用して銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などよりも高い利息を支払うなどの説明をして、あたかも三和信託との契約が有利な預金への預け替えであるかのように説き、得意先係の中には、見込み客に対し、本件契約が金地金の購入契約であることを告げずに、専らみのりまたはすくすく契約における賃借料が銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などよりも利率が高い点などを強調して、本件契約の締結があたかも有利な預金への預け替えであるかのような説明をしてその締結を勧める者もいた。

(3) そして、得意先係の中には、右(2)の勧誘の際に、金地金の現物には通し番号が付いていて顧客が買う金地金は世界にひとつしかないなどと説明したり、三和信託は保険に入つているから契約を締結した顧客に迷惑をかけるようなことはないとか、大蔵省、通産省、法務省などの官庁の認可を受けて営業をしているので倒産することはないなどと言つたり、相当の長期間にわたつて営業を行つてきていて、契約の実績のある会社であるかのようないずれも虚偽の話しなどをして、契約を躊躇している見込み客を安心させたり、契約は限られた人だけに紹介しており、すぐ契約しないと、その枠がなくなつてしまうかのような話しをして、躊躇している見込み客に契約の締結を急がせたりなどする者もあつた。また、中には、見込み客が三和信託という社名を聞いて三和銀行の関連会社であると誤信しているのに気づきながら、ことさらその誤信を利用したり積極的に三和銀行の関連会社であるかのような説明をするなどして、見込み客をして三和信託との契約が金融機関の扱う高金利の安全な定期預金であるかのように誤信させて契約する気にさせる者もあつた。

(4) 見込み客が、右(2)及び(3)のとおり得意先係の説明を受けて三和信託と契約する気になると、得意先係は、多くの場合、言葉巧みに見込み客を誘つてその当日または翌日などに三和信託の各支店にその見込み客を連れて行き、支店長や部長、課長などに引き合わせ、同人らは得意先係とともに会社の豪華な応接室で現実に金地金の現物(純金のインゴット)をその見込み客に見せ、それを顧客の買つた金だなどと言いながら、得意先係と同様の説明を繰り返し、更に、ほかにも預貯金があるなら預け替えた方がよいと言つて追加の契約を勧めるなどした。

他方見込み客が右(2)及び(3)のとおり得意先係の説明を受けてもなかなか三和信託と契約する気にならない場合にも、得意先係は右同様各支店にその見込み客を連れて行き、会社を見せてその見込み客をまず安心させ、同人を支店長や部長、課長などに引き合わせ、同人らは得意先係とともに会社の豪華な応接室で金地金の現物をその客に見せたうえ、得意先係と同様の説明を繰り返して、三和信託との契約を勧めた。

(5) 契約の手続は原則として三和信託の各支店で行われることになつており、手数料を含めた契約代金の支払は、顧客が手持ちの現金を直ちに支払うこともあつたが、原則として、得意先係が顧客に対し預貯金などを代わつて解約してくるともちかけて、通帳、保険や債券などの証書、印鑑、委任状などの交付を受け、これを三和信託の各支店の業務課の係員(主に顧客の預貯金などの解約手続を行う従業員)に渡し、同人がその顧客の預貯金などを解約し、その払戻しを受けた金員を右の契約代金、手数料などの支払に充て、得意先係が残金、印鑑、通帳などを顧客に返していた。右のような方法をとつたのは、三和信託が営業を開始した当時、既に豊田商事の商法が社会的に問題とされていた(後記(五)の(1)を参照)ため、顧客が金融機関に対して三和信託に代金を支払うため解約するなどというと、金融機関が顧客に解約を思い止まらせようとするおそれがあつたためである。

また、得意先係の中には、顧客に無断で、解約した預貯金などの残金で追加の契約を締結してしまうこともあつた。

(6) 得意先係の中には、右(4)のとおり一旦契約した顧客を契約した当日または翌日などに三和信託の各支店に連れて行つて追加契約を勧めたり、または預かつた通帳や印鑑あるいは払戻しを受けた残金などを返しに顧客方を訪ねた際に追加の契約を勧めるなどして、何度も追加の契約を締結させ、もつて短期間のうちに顧客の預貯金などをすべて三和信託との契約に振り替えさせてしまう者も多かつた。

(7) 三和信託と契約を締結した顧客には、老人や主婦が多く、しかも、中には、契約代金として、年金生活者の老後の資金やこどもの教育資金など顧客が生活していくうえで必要不可欠な資金が充てられていることもあつた。

(三) 得意先係による顧客に対する勧誘以外の行為について

(1) 翻意阻止

得意先係は、右(二)の勧誘をした結果、見込み客が一旦は三和信託と契約する気になつたものの、未だ契約を締結しないうちにやめたいなどと申し出た場合には、顧客の翻意をできるだけ阻止した。

(2) 解約阻止

得意先係は、顧客が契約を締結して代金を支払つた後などに解約を申し出た場合には、多額の違約金をとるとか、いま解約すると損だなどと言つて解約をできる限り阻止した(顧客からの解約の申し出の状況については後記(五)を参照)。

(3) 和解契約

得意先係は、説得したにもかかわらず、顧客が解約を断念しなかつた場合には、解約に応じることもあつたが、その場合は顧客が三和信託に支払つた金額の三〇パーセントの金員を三六回に分割して支払うなど返還金額を大幅に削つた和解契約を締結した。

(4) 証書の書換え

三和信託は、昭和六〇年七月一六日その商号を日本相互リース株式会社に変更したが、得意先係は、社名の変更に伴い証書の書換えが必要であるなどと称して、顧客から純金購入契約書、みのりまたはすくすく契約書及びみのりまたはすくすく契約証書を回収したうえ、三和信託が本件契約に基づいて顧客に対して負担する債務を第三者である日本相互リース保証が三和信託に代わつて引き受けるなどという内容の書面に署名押印をさせていた(三和信託の商号の変更の経緯、右の証書の書換えがされるに至る経緯及びその時期については後記(五)を参照)。

(四) 三和信託の経営状況、組織などについて

(1) 金地金の買付状況について

三和信託は、本件契約を締結した顧客から金地金代金名下に金員の交付を受け、その額は、昭和五八年九月一日から同五九年八月三一日まで(右の期間の三和信託の会計年度を以下「第一期」という。)の間で合計金二〇億五六二一万〇五二八円、倒産するまでには合計約金六〇億円(推定)にのぼつた。三和信託では本件契約が成立すると、現物条件付純金売買取引契約に基づき、破産者レブコに対し、金地金の買い注文を出した。金地金の買い注文は、昭和五八年九月一日から同六〇年五月末までで合計一八八〇・四キログラムで、その代金は金五〇億五四四五万四三〇〇円(なお、第一期では金二〇億七六三四万二〇〇四円であるから、昭和五九年九月一日から同六〇年五月末まででは金二九億七八一一万二二九六円となる。)で、現物条件付純金売買取引契約に基づき、手数料金一三億〇八五〇万〇九八〇円を差し引いた金三七億四五九五万三三二〇円を破産者レブコに支払つた。代金の支払方法は、三和信託の各支店からその日の売上げを本店に集め、これを被告沢井が破産者レブコ方に届けるというものであつた。三和信託は、現物条件付純金売買取引契約に基づく注文とは別に破産者レブコから金地金を買つてその引渡しを受けたことがあるが、右は三和信託の店舗に見せ金として置くためのものと顧客の求めに応じて買い求めたもので、全部で二〇キログラム程度に過ぎなかつた。

(2) 損益状況について

三和信託の売上げは、三和信託が現物条件付純金売買取引契約に基づいて破産者レブコに対し金地金の買い注文を出した際に同被告から支払われる手数料収入、本件契約の締結の際に顧客から支払われる手数料収入及び金地金の現物の売上げからなり、第一期の売上高(三和信託が顧客から金地金の代金名下に受け取つた金員はそのまま破産者レブコに金地金の買い注文の代金として送られ(但し、本件契約の際の金地金の価額と破産者レブコに対する買い注文の際の金地金の価額に差があるため、両者の金額は一致しない。)、賃借対照表上はそれぞれ前受金、前渡金として処理されていた。)は金五億七五八三万六九八〇円であつた。これに対し、人件費(従業員の給料、法定福利費、福利厚生費の合計)は金三億九三五四万三五五三円で、売上高の六八・三パーセントを占めており、その他の経費(顧客への賃借料金三〇〇七万一二一八円を含む。)を差し引くと、第一期は金一億一四五四万九〇五九円の損失となつていた。三和信託は、営業の開始にあたつて一店舗あたりの利益計画(基本的経営指標と呼ばれており、以下「基本的経営指標」という。)を策定していたが、第一期の決算と比較する限り、基本的経営指標は杜撰というほかないものであつた。

昭和五九年九月一日以降の売上高については帳簿類がすべて破棄されているため詳細は不明であるが、右同日から同六〇年五月三一日までに三和信託が顧客から受け取つた金員は、破産者レブコに対する買い注文の代金額などによれば、手数料(フルケア料を含。)などを含めて合計金三二億円余り(このうち金地金の代金として受け取つた金員は約金三〇億円)と推測され、同年六月一日から同年九月一三日までに受け取つた金員は、得意先係に支払つた歩合給などから考えて約金五億円と推測される。

(3) 組織、業務執行などについて

三和信託においては、会社の業務の統括はすべて本店で行われ、支店は専ら営業活動を行つていた。

本社の組織には、統括本部、総務、管理、経理の各部があり、統括本部は被告前田が、その余の部は他の取締役または総務部長である被告沢井が責任者となつていた。

支店には総務(出欠勤など一般の事務関係を管理、掌握する部署)、業務(契約書などの管理、顧客の預貯金などの解約手続の代行などを行う部署)、営業、テレフォンの各部が置かれ、支店に配属された従業員のほとんどが営業部とテレフォン部に配属されていた。営業部はいくつかの課に分かれ、課内には課長のほかに、係長、主任の肩書をもつ者と肩書をもたない者がいたが、業務内容はいずれも得意先係として顧客に契約の締結を勧めることであつて全く同じであり、ただ肩書があれば多少手当てがつくというに過ぎなかつた。課長は、その直属の得意先係に対し、見込み客を訪問する際に会社に電話を架けさせるなどしてその行動を把握し、各課に課された売上げのノルマ(一課当たり月間約金四〇〇〇ないし六〇〇〇万円)の達成に努力していた。支店に配属された従業員のうち若干名が内勤者として総務、業務を担当していたが、業務及び経理の処理はすべて本店の直接の指示で行われ、帳簿なども当日分しか支店には置かないことになつていた。支店長には取締役が当てられたが、数か月で交代することが多く、被告前田と同原が数か月単位で支店長を交代し、統括していたが、その後被告福島、同深見、同北田などが取締役に就任した後は、同被告らが支店長に就任することもあつた。

三和信託の代表取締役には、当初は被告前田が就任し、昭和五九年一一月一日には一旦退任して(被告前田は同年一二月七日から同六〇年三月一一日までの間破産者レブコの取締役に就任していた。)、被告原が代表取締役に就任したが、同六〇年三月一一日再び被告前田も代表取締役に就任し、以後倒産に至るまで、被告前田と同原がともに代表取締役であつた。

三和信託では、毎月部長以上の役職者で構成された営業会議(営業幹部会議ともいい、課長が出席することもあつた。)と呼ばれる会議が開かれ、毎月の売上げの経過などの報告を行つていたが、会社の重要事項の決定は、営業関係の議題については被告前田と同原が、そのほかの事項については被告前田がそれぞれ案件を提出して、幹部会議(経営幹部会議、取締役会議ともいい、三和信託の取締役である被告前田、同原、同萩原、同福島、同北田(同五八年一〇月一二日に取締役に就任し、同六〇年八月三一日に退任している。)、同鈴木光一郎、同中川(同五九年四月一八日に取締役に就任し、同六〇年八月三一日に退任している。)らが構成員であるが、被告沢井も総務部長として出席することが多かつた。)に諮つて行つていた。

三和信託の二万四〇〇〇株の株式のうち被告前田及び同竹内文世が各六〇〇〇株、破産者レブコが一万二〇〇〇株の株式を引き受けたことになつている。

(4) 従業員の職種、人数などについて

三和信託の従業員は、得意先係とテレフォンの営業担当が主体であり、得意先係一名につきテレフォンが一・五ないし二名の割合で配置されていた。立川店で営業を開始した当時は、得意先係が三〇名、テレフォンが六〇名、内勤者が約一五名であつたが、支店が三箇所に設置されたころには、内勤者を含めて約三五〇名となり、最盛期と思われる昭和六〇年三月の在籍者は、役員を含めて約五〇〇名で、そのうち得意先係が約一五〇名、テレフォンが約二七〇名であつた。しかし、同年八月初めには、合計二七二名、内勤者五八名、テレフォン一五八名と激減し、同年九月には内勤者のほかはほとんどが退職した。

(5) 従業員の給料について

得意先係には、固定給約二〇万円(但し、時期によりそれ以上)のほか一か月間に成立した契約金額に応じて歩合給が支給された。歩合給として概ね一か月間の契約金額が金七〇〇万円になると、その〇・五パーセント、金一〇〇〇万円になると、その一パーセント、金一〇〇〇万円以上になると、金二三万円に金一〇〇万円ずつ上がるごとに金一万円及び報償金一〇万円を加えた金額の金員が支給されたが、豊田商事に比べると相当低かつた。なお、顧客が解約すると、支給された歩合給を返還しなければならないことが多かつた。ほかに主任、係長、課長、次長、部長、支店長などの役職に応じて手当てが支給され、課長以上の者に対しては右の役職者としての手当てのほか部下である得意先係が一か月間に成立させた総契約高に応じて歩合給が支給された。なお、三和信託では賞与の支給はなかつた。

(6) 従業員の採用、得意先係に対する教育などについて

三和信託は、新聞社から募集広告を掲載することを拒否されたうえ、豊田商事の報道が盛んにされており、金地金の販売員の募集とすると、予定の人数が集まらないおそれがあると考え、新聞の折込み広告によつて輸入雑貨、造花、宝飾品などの販売員の名目で従業員を募集した。

採用した者には各支店ごとに一週間ほどの講習を受けさせたが、右の講習では、基本トークと呼ばれる契約の勧誘方法の講義が行われ、金の三大利点などの説明がされ、金地金の取引が如何に有利なものであるかということなどを学習させた。

なお、得意先係の中には、顧客に契約の締結を勧める際に前記(二)の(3)のとおりの虚偽の説明をする者があり、また、顧客が三和信託を三和銀行の関連会社と誤解している場合にはあえてその誤解を解かずに契約の締結を勧めるなどする者がいたが、三和信託ではとくに右のような勧誘方法を是正するための措置はとつていなかつた。

(7) 三和信託の営業方針について

三和信託では、ひとりでも多くの顧客を獲得することに主眼が置かれ、契約がとれ、一定の実績を上げさえすれば、経験年数にかかわりなく主任、係長、課長、次長、部長へと短期間に昇進したが、一旦契約がとれなくなると、たとえ部長、課長であつても降格させられ、各支店の営業部ごとに毎日行われていた朝礼では、契約を成立させた得意先係を表彰する一方、契約がとれない者は上司から罵倒されるなどした。また、朝礼では、得意先係に気合を入れるために気合三訓なる標語を唱和することもあつた。このため、一旦得意先係として就職してもすぐに退職する者が極めて多かつた。

(五) 三和信託の倒産に至るまでの経緯について

(1) 豊田商事は、顧客に対する勧誘の方法が執拗、強引であること、顧客が純金ファミリー契約を解約する際に成約金額の三〇パーセントもの違約金を取ることなどから顧客との間で紛争が絶えず、昭和五七年ころから通産省の全国各地の通産局、同省消費者相談室、同省悪徳商法被害者対策委員会または東京都消費者センターなどに顧客から相談や苦情が寄せられるようになつた。また、マスコミは昭和五六年九月に豊田商事の商法を取り上げ、その後も断続的に報道やキャンペーンを繰り返し、特に昭和五八年中ころには全国的に豊田商事の顧客から同社に対して損害賠償などを求める訴訟が提起されたため、右の商法を金の現物まがい商法または金のペーパー商法などとして豊田商事を批判する報道がされた。

通産省は、同五七年以降政府広報番組や政府広報などで金の現物まがい商法に対する警戒を国民一般に促すなどし、東京都消費者センターも、同五八年以降金の現物まがい商法に対する警戒を都民一般に促したり、悪質と思われる件については顧客のために豊田商事との間で解約の交渉を行うなどしていた。同五九年以降は、マスコミにおいて豊田商事や金の現物まがい商法を批判、弾劾する報道やキャンペーンが繰り返され、豊田商事の幹部社員が告訴されるなどした。兵庫県警は、同六〇年六月、豊田商事大阪本社及び銀河計画を外国為替及び外国貿易管理法違反の容疑で捜索し、帳簿類などを押収し、同月一八日には豊田商事の永野会長が刺殺されるという事件が起こり、同月二〇日には豊田商事の顧客から同社の破産が申し立てられ、大阪地方裁判所は豊田商事の全財産につき破産宣告前の仮差押えを行い、同年七月一日破産宣告がされた。そして、豊田商事と銀河計画の取締役五名が同六二年三月詐欺の疑いで逮捕され、同年四月詐欺罪で起訴された。

(2) 三和信託は、営業を開始した昭和五八年九月一日から一年間に顧客から金地金の代金名下に金二〇億五六二一万〇五二八円の金員の交付を受けたが、営業の開始とともに顧客との間で勧誘の方法や解約などについて紛争を生じ、顧客から東京都消費者センターに苦情が寄せられ、同センターでは悪質と思われる件については顧客のために解約の交渉を行うなどした。社団法人信託協会(以下「信託協会」という。)は、同五九年九月一六日類似商号会社にご注意との表題のもと、信託株式会社などの商号を用いて信託業を営むかのような誤解を与えて金銭を預かつたり、金地金の取引をしている業者があるとの広告を新聞に掲載して読者に警告した。マスコミも、同六〇年以降、三和信託の商法を金の現物まがい商法または金のペーパー商法であるなどとして批判する報道をするようになつた。これに対し、被告沢井と同角町は、同年二、三月東京都消費者センターや同センター多摩西支所を訪ねて、三和信託には金地金の現物があり、三和信託の商法は適法である旨反論するなどした。しかし、マスコミはその後も三和信託による金の現物まがい商法によつて被害が続出しているとの報道を繰り返し、信託協会は、再度同年三月三一日、前回と同趣旨の広告を新聞に掲載して読者に警告をした。また、東京法務局は、同年二月七日三和信託を信託業法違反の疑いで東京地方裁判所に審査通知した。このため三和信託は同年五月一日その商号を三和信拓株式会社に変更することとし、その旨の変更登記を申請したが、東京法務局から拒否された。国会は、同年六月七日衆議院商工委員会において三和信託の問題を取り上げてその商法が豊田商事の商法と同じであることなどを問題とし、関係行政官庁に善処を求めるなどした。

(3) 三和信託は、右(2)のような状況のもとで昭和五九年秋ころから売上げが低下したことから同年一二月ころフルケアシステムを採用し、また同年秋ころから顧客の解約の申出が相次いだことから、同年一二月に本社を新宿に移転した際、苦情を処理するために本社に相談センターを設けて苦情の処理に対応した。但し、一度に多くの顧客の解約に応ずると、会社が倒産するおそれがあることから、従業員には極力解約に応じないように指導し、応対に出た従業員も極力解約に応じないようにした。しかし、昭和六〇年六月には、やむを得ず解約に応じた顧客に対する返済金額の合計が相当の額にのぼる一方、三和信託を豊田商事と同じようなものと考える者が多いため、新規の顧客に対する勧誘が困難となつて、資金的に苦しくなつた。そのため、それまでは一、二回の分割払いという条件で解約に応じることもあつたのが、右の条件では解約に応ずることができなくなり、また、顧客から交付を受けた金員のほとんどが経費などの支払にまわされるようになつて、破産者レブコに対する金地金の買い注文ができなくなつた。また、右(2)のような状況のもとで退社する従業員が相次いだため、同年五月ころには従業員を退社させないよう極力慰留に努めた。同年六月一二日顧客の申立てに基づいて三和信託新宿店において動産の仮差押えがされたが、金庫には金地金も現金もなかつた。

同月一八日には豊田商事の永野会長が刺殺されるという事件が起こると、三和信託の顧客からは解約の申出が急増したうえ、そのころ被告前田、同原などが以前豊田商事に在籍していたことが一般の従業員に知れ渡るようになり、従業員にも動揺がみられるようになつた。そのため、営業会議などを開いて部長以上の役職者に三和信託の営業が違法ではないことを再確認させようとするとともに、同月二九日新宿店に得意先係などの従業員を集め、被告前田及び弁護士と称する井上誠(元弁護士ではあるが、当時は弁護士の資格を失つていた。)らが、三和信託の商法は豊田商事と異なり、適法であるとの説明をするなどして、従業員の動揺を抑えることに努めた。

三和信託は、前記のとおり顧客からの解約の申出に応じることがあつたが、破産者レブコとの間の現物条件付純金売買取引契約に基づく金地金の買い注文については解約しないこととしていたので、顧客からの解約の申出の増加によつて、破産者レブコに対してした金地金の買い注文の数量と三和信託が顧客から受けた金地金の買い注文の数量との差が相当な量にのぼつた。そこで、三和信託は、同年六月末、破産者レブコとの間で、昭和五九年一二月以降のフルケア付の取引分金一八億四六四七万五七〇〇円を中途解約することにし、右金額から破産者レブコが三和信託に支払つた手数料金三億六九二九万五一四〇円と中途解約により三和信託が破産者レブコに支払うべき違約金一億八四六四万七五七〇円を差し引いたうえ、その残りの金額と破産者レブコの三和信託に対する貸付金一二億円及びその利息金九〇〇万円余りが相殺され、結局金八〇〇〇万円余りが破産者レブコから三和信託に返還された。

(4) 東京地方裁判所は、昭和六〇年七月五日、東京法務局からの審査通知を受けて三和信託株式会社という商号の使用は信託業法違反であるとして、三和信託を過料に処した。そこで、三和信託は同月一六日その商号を日本相互リース株式会社に変更したが、右(2)及び(3)のような状況のもとで、新規の顧客が大幅に減少したうえ多数の顧客が解約を求めたことなどから、賃借料及び解約金の支払の資金に窮するようになり、同月、顧客を集めやすいように契約期間が一年、賃借料が年八・四パーセントで解約の際に違約金などを徴収しない年輪という商品を売り出した。しかし、同年八月にはこのままでは倒産は必至であるとして、三和信託の顧客に対する債務を引き受けさせることを目的として株式会社ビデオテクニカルという休眠会社を買い取り、その商号を日本相互リース保証株式会社、その目的を債権の譲受け及び債務の保証業務などに変更し、その代表取締役に被告前田が就任した。そして、三和信託は、顧客全員に対し、社名を変更したので証書などの書換えが必要であるなどとして証書などの書換えを求め、書換えに応じた顧客から本件契約の締結の際に三和信託が顧客に交付した純金購入契約書、みのりまたはすくすく契約書及びみのりまたはすくすく契約証書をすべて回収し、顧客には日本相互リース名義の返還債務確約保証書と題する書面を交付したうえ、三和信託が本件契約に基づき顧客に対して負担する債務を代わつて日本相互リース保証が引き受けるなどという内容の返還債務保証合意書と題する書面(以下「返還債務保証合意書」という。)に署名押印を求めた。顧客はその会社の名義が異なることを看過し、日本相互リースとの間で書面を作成するものと誤信して右の旨の内容の書面の作成に応じた。その際、書換えの手続を行つた得意先係の従業員は、顧客に前記年輪契約の締結を勧め、かなりの数の顧客が新たに金地金の売買契約と年輪契約を締結した。また、三和信託は、書換えに応じない顧客との間では、顧客が三和信託に支払つた金額の三〇パーセントを三六回に分けて支払うなど返還金額を大幅に削つた和解契約を締結した。東京地方裁判所八王子支部は、同年八月二八日三和信託の顧客の申立てに基づいて三和信託立川店において動産の仮差押えをしたが、金庫には金地金はなかつた。三和信託は、同年七月末から賃借料の支払を中止し、同八月には新宿店における営業を中止した。

(5) 東京都消費者センターは、豊田商事の永野会長刺殺事件後、都民などからの相談が急増したうえ、右(3)及び(4)の仮差押えの際、契約高に見合う金地金が保管されていなかつたことが判明したことなどから、昭和六〇年九月四日三和信託に対し、金の現物まがい商法を早急に中止し、解約を申し出た者に対し誠意ある対応をすることを強く要請した。三和信託は、同月七日破産者レブコに対し、現物条件付純金売買取引契約に基づく取引を解約したい旨を申し出、同月一四日に破産者レブコとの間で、昭和五八年九月から同五九年一二月二二日までの取引分金三二億〇七九七万八六〇〇円について中途解約すること、破産者レブコが三和信託に返還すべき金額は、右の取引金額から破産者レブコが三和信託に支払つた手数料金九億三九二〇万五八四〇円と中途解約により三和信託が破産者レブコに支払うべき違約金六億四一五九万五七二〇円を差し引いた残金一六億二七一七万七〇四〇円であり、破産者レブコはこれを第一回目は金五二一七万七〇四〇円、第二回目以降は各金四五〇〇万円の三五回の分割払いでそれぞれ支払うことを合意した。破産者レブコは三和信託に対し右の支払のために右の各金額を額面とする約束手形を振り出した。

そして、三和信託は、昭和六〇年九月一二日には前記和解契約に基づく支払を停止し、同月一七日ころまでには立川店及び津田沼店を事実上閉鎖し、得意先係もそのころそのほとんどが退職した。三和信託は、同月一九日東京都消費者センターに対し、前記要請を受け入れて同月一三日に営業活動を中止した旨を伝えたが、営業停止にあたり、大部分の重要な帳簿類を破棄、処分した。三和信託の顧客から同年一〇月五日破産宣告の申し立てがされ、東京地方裁判所により、同月八日三和信託の全財産につき破産宣告前の仮差押えがされ、同月一六日破産宣告がされた(同庁昭和六〇年(フ)第八三八号)。

(六) 破産者レブコの経営状況、組織などについて

(1) 資金の調達方法について

(ア) ナショナル信金株式会社(以下「ナショナル信金」という。)との間の資金運用契約

被告石原忠博が豊田商事に勤務していたころの知合いで、同被告が豊田商事を退職したのと相前後して同社を退職した勝原英樹は、昭和五八年六月に豊田商事の純金ファミリー契約と同様金地金の売買とその賃貸借を行うナショナル信金を設立した。破産者レブコは、ナショナル信金との間で同社が顧客から集めた金員を破産者レブコで運用することなどを合意し、右合意に基づいて昭和五八年七月から同年一一月まで送金を受けたが、同年一二月には右の合意を解除した。

(イ) 三和信託による金地金の買い注文

破産者レブコは、前記(一)の(5)のとおり、現物条件付純金売買取引契約に基づいて三和信託から金地金の代金名下に金員を受け取つていたが、前記(五)の(3)のとおり、三和信託の資金繰りの悪化から金地金の買い注文がされなくなり、そのため三和信託から金員が払い込まれなくなつたうえ、前記(五)の(5)のとおり、昭和六〇年九月一四日三和信託との間で現物条件付純金売買取引契約を合意解約したため、三和信託から後記(2)の投資、運用のための資金の供給を全く受けられなくなつた。

(ウ) 株式会社丸和モーゲージ(以下「丸和モーゲージ」という。)による抵当証券の発行

そこで、被告石原忠博は、三和信託に代わつて資金を供給する会社として抵当証券の発行会社を設立することを思い立ち、昭和六〇年六月二四日ナショナル抵当証券株式会社(昭和六一年一〇月一日丸和モーゲージに商号を変更した。)を設立した。そして、丸和モーゲージは、破産者レブコが後記(2)の(エ)の岡山市の土地について所有権を取得し、その移転登記を得ると、丸和モーゲージの破産者レブコに対する貸金債権を担保するため右土地の上に順次抵当権を設定した。丸和モーゲージは、破産者レブコから右の金額に見合う抵当証券の発行を受け、他の土地について第三者から発行を受けた抵当証券も含め、同六〇年九月から同六一年九月までの間に抵当証券(原券でなく売上証券預かり証)を販売して合計約金三〇億円の金員を顧客から集めた。被告石原忠博は三和信託の従業員を丸和モーゲージに就職させ、抵当証券の販売に従事させた。

そして、丸和モーゲージは、同六〇年一〇月三〇日から同六一年六月三〇日までの間にそのうち合計金二二億七〇〇〇万円を破産者レブコに貸し渡した。

しかし、丸和モーゲージは、明確な資金計画を持たず、専ら抵当証券の購入者から入る金員を無計画に宣伝費、人件費などの経費に充てるなどしたことから、資金繰りが悪化し、昭和六一年一一月二六日東京地方裁判所で破産宣告を受けた(同庁昭和六一年(フ)第七二三号)。

(エ) 大成モーゲージ株式会社(以下「大成モーゲージ」という。)による抵当証券の発行

大成モーゲージは、昭和五九年六月二八日被告石原忠博の資金援助を受けて設立された会社(当時の商号は株式会社システム・ノアであつた。)で、当初はコンピューターソフトの製作をしていたが、同六〇年六月ころ石原忠博の指示によつて新たに抵当証券の発行を行うことになり、同年七月二五日その商号を大成モーゲージ株式会社に、その目的を抵当証券の取得などにそれぞれ変更し、同年一〇月抵当証券の販売を開始し、同月一日から同六一年一〇月末までに合計金六億二〇五〇万円の金員を顧客から集めた。

大成モーゲージは、同六〇年九月四日購入した名古屋の土地(後記(2)の(ウ)の土地と同一の土地かは不明である。)の代金二億円を破産者レブコが立替払いしたことを理由に、同年一二月から同六一年三月までの間に合計金二億円を被告レブコに支払つた(右の金員は経理上は破産者レブコに対する貸付金として処理されている。)。

しかし、大成モーゲージは、すぐに資金繰りが悪化し、同六二年二月二六日東京地方裁判所で破産宣告を受けた(同庁昭和六二年(フ)第五四号)。

(2) 金地金の買付け

破産者レブコは、三和信託が顧客との間で契約した量に見合う金地金を保有しているといえるようにするため、現物条件付純金売買取引契約の締結に先立つて、昭和五八年八月ころから東京金取引所の商品取引員であるカネツ貿易株式会社を介して金地金の先物取引(現物の受渡しを、一定の条件のもと、一定期間後に実行することとして、売買の約定を結ぶ取引)を開始した。現物条件付純金売買取引契約に基づく三和信託に対する金地金の引渡しはその買い注文から三年後であるのに対し、金地金の先物取引は取引から一年後の決済であるため、破産者レブコは先物取引の決済の度に新たな先物取引の注文を出した。そして、破産者レブコは、昭和五八年一〇月から同六〇年一〇月までに延べ一五七〇キログラムの注文を発し、同月現在の残取引高は七五〇キログラムであつた。しかし、金地金は昭和五五年以降世界的に値下がりを続けていたことなどから、先物取引によつて昭和六〇年一〇月末現在の損失は約金二億八九六〇万円となり、結局倒産するまでの間に合計金一〇億円余りの損失を出した。

(3) 右(1)の資金の運用方法

破産者レブコは、三和信託から受け取つた金地金の代金の一部を委託証拠金として用いて金地金の先物取引をする一方、その余の金員及び丸和モーゲージ、大成モーゲージから借り入れた金員を次のような方法で投資、運用した。

(ア) 川越における遊技場などの経営のための土地の取得

破産者レブコは、昭和五九年三月三〇日パチンコ遊技場とホテルの経営を目的として社団法人復興土地住宅協会から土地(埼玉県川越市新富町一丁目一七番、地積四一三四平方メートル)を代金六億八〇〇〇万円で買い受けたが、資金繰りのため、同六〇年七月二六日金七億二〇〇〇万円で売却した。

(イ) 立川における遊技場などの経営のための建物の賃借

破産者レブコは、昭和五九年一〇月一七日パチンコ遊技場とホテルの経営を目的として小川ハルとの間で同人所有の建物(東京都立川市紫崎町三丁目に建設が予定されていた建物で、地下一階、地上六階、通称立川南口小川ビル)を昭和六一年三月一日から二〇年間賃借する旨の契約を締結し、その保証金及び敷金としてそれぞれ金三億六〇〇〇万円と金一億九〇〇〇万円を支払つた。破産者レブコは右の建物の一、二階をパチンコ遊技場、三ないし六階をホテルとして営業することを企図し、同六一年六月までにホテルの内装工事、パチンコ遊技設備などの設備投資として合計金五億五二二五万九八五一円を出捐したが、資金繰りのため同月右の建物の設備、賃借権などを代金一二億円で南栄商事株式会社に売却した。

(ウ) 名古屋の土地の取得

破産者レブコは、昭和六〇年一月二一日、大山良信とともに、野沢建設株式会社の株式会社大耀に対する昭和五〇年一一月二五日金銭消費貸借契約に基づく金一億円の貸金債権及びこれを被担保債権とする株式会社大耀所有の土地(名古屋市港区南陽町大字藤高新田字千島六八六番、原野、二八万四三七五平方メートル、同所六八六番の一、原野、一九万九〇九六平方メートル)に対する抵当権を代金五億円(破産者レブコが金四億円を、大山良信が金一億円をそれぞれ負担した。)で買い受け、同六一年四月大山の持分を金三億円で買い受けたが、同年一〇月二七日には右の二筆の土地を光商事有限会社に金一億五〇〇〇万円で売却し、金六億六九二五万円を売却損として計上した。

(エ) 岡山の土地の取得

破産者レブコは、昭和六〇年七月二九日から同六一年二月二七日までの間にパチンコ遊技場、ホテルなどの経営を目的として岡山市の土地(岡山市郡三〇〇九番、公衆用道路、四四八二平方メートル、同所三〇一〇番、宅地、一万三八九三・七三平方メートルほか四筆の土地(宅地))を代金合計金九億四三四〇万六七八〇円で買い受けた。

(オ) 静岡の土地の取得

破産者レブコは、昭和六一年二月三日中条久義とともに墓地の経営を目的として静岡市の土地(静岡市羽島二三五九番四、山林、二万一三六五平方メートルほか四筆の土地(山林))を代金八億五一八一万円で買い受けたが、同年一〇月二八日破産者レブコの光商事有限会社に対する借入金八五〇〇万円の弁済に充てるため、同社に譲渡した。

(カ) レブコインターナショナルなどの設立

破産者レブコは、旅行の斡旋を行う日本ツアーセンターなる会社を経営していた楠原大輔(以下「楠原」という。)に融資を始めたが、回収ができなくなつたうえ、同社の資金の手当てをすべて破産者レブコで賄うようになつたことや将来的には会員権の販売を含めたリゾート開発を行わせようと企図したことなどから、同社の商号をレブコインナーナショナルに変更して破産者レブコの子会社としたうえ、楠原を通じてレブココリア、レブコグアム、レブコサイパンなどを設立したが、いずれもペーパーカンパニーで、旅行の斡旋業のほかはほとんど活動していなかつた。

(4) 破産者レブコの組織について

破産者レブコの事務所は東京都三鷹市下連雀三丁目にあり、代表取締役は被告石原忠博で、同被告が実際の仕事をし、他に経理などを担当する従業員が若干いただけであつた。

破産者レブコは一〇〇株の株式のうち九三株を被告石原忠博が、その余の株式を被告石原昌雨(被告番号五四番の被告)、同藤田、同竹内文世(被告番号一五番の被告)、同長谷川、同吉松らがそれぞれ一株ずつを引き受けたとされているが、実際には被告石原忠博が一〇〇株すべての払込金を支払つており、昭和五九年に増資をした際にも同被告が増資分三〇〇株のすべてを引き受けており、従業員の数、業務内容なども考えると、いわば破産者レブコは同被告の個人会社というべきものであつた。

(5) 三和信託との交流について

被告前田、同原及び同石原忠博は、三和信託及び破産者レブコの営業開始後、緊密に連絡を取り合つており、被告石原忠博は、三和信託で行われる会議や同社の従業員の忘年会に出席するなど、時おり、三和信託の従業員の前に顔を出すことがあつた。

(6) 破産者レブコの営業方針

被告石原忠博は、パチンコ遊技場の経営が極めて高収益であるとして、破産者レブコが三和信託に支払う手数料などの支払を確保するため、収益を上げる事業としてパチンコ遊技場の経営を企図し、三和信託の代表取締役である被告前田の承認のもと、三和信託から提供を受けた資金を前記のとおりパチンコ遊技場の経営などのために用いた。しかし、漠然と、とにかくパチンコ遊技場の営業を開始しさえすれば、相当高い利益を上げることができると考えていたに過ぎず、その目的を達成するための具体的かつ詳細な計画案などはなかつた。そのうえ、前記のとおり、資金繰りに窮して、取得した不動産を利用せずに売却するなどし、また、前述のその他の事業についても採算性など明確な見通しもなしに場当たり的に投資を行つていたに過ぎなかつた。

(七) 破産者レブコの倒産について

破産者レブコは、前記のとおり採算性を無視した不合理な支出を続けるとともに、三和信託の倒産、丸和モーゲージや大成モーゲージによる抵当証券の販売に行き詰まり、前記のとおり三和信託宛に振り出した約束手形を決済することができず、三和信託の破産管財人から破産の申立てを受け、昭和六一年一二月四日東京地方裁判所で破産宣告を受けた(同庁昭和六一年(フ)第七四五号。)

以上の事実が認められる。

《証拠判断略》

他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  右認定の事実を前提に三和信託の商法の違法性について判断する。

(一) 三和信託の商法について

三和信託の商法とは、結局のところ、顧客が現に銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などの形で預けていた金員を、銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などよりも安全(元本を失わないという意味での安全性)かつ有利(銀行の定期預金や郵便局の定額貯金などの高金利の金融商品よりも高収益を上げられるという意味での有利性)な利殖方法であるなどと称して、銀行や郵便局などから三和信託に預け替えさせようとするもので、得意先係の顧客に対する勧誘の結果、顧客が三和信託と契約することにすると、得意先係は、顧客との間で、三和信託が顧客に対し金地金を売却する旨の契約を締結したうえ、期限(一年、三年または五年)の到来するまでの間売買代金額の約一〇パーセントに相当する額の金員を年二回にわけて賃借料として支払うとの約定でその金地金を借り受けるという内容のみのり、すくすくまたは年輪契約を締結し、顧客から金地金の売却代金(手数料を含む。)を受け取るというものである。

そして、三和信託は、金地金の売却代金名下に顧客から受け取つた金員で金地金の買付けを行わずに、破産者レブコとの間で締結した現物条件付純金売買取引契約に基づき、破産者レブコに対し、三和信託が顧客に売却した量に見合うだけの量の金地金の買い注文を出し、その代金額の八〇パーセントに当たる金員を送金し、破産者レブコは送金を受けた金員の一部を委託証拠金として、三和信託から買い注文を受けただけの量の金地金の先物取引を行つて、三和信託に対する三年後の満期の際の金地金の引渡しに備えるとともに、その余の金員をパチンコ遊技場やホテルなどの経営のための資金に充て、それらの経営による収益を破産者レブコが現物条件付純金売買取引契約において三和信託に対して約した手数料(三和信託の破産者レブコに対する金地金の買い注文の代金額の各二〇パーセント合計四〇パーセントに相当する金員)の支払に充てようとしていた。

(二) 三和信託と破産者レブコの関係について

このように、三和信託は破産者レブコからみれば同社の集金部門であり、破産者レブコは三和信託からみれば同社の投資、運用部門であるということができる。

原告らは、これについて破産者レブコは三和信託が顧客に売つた金地金を現に購入し、その売買代金を運用していることを仮装する目的で設立された会社であり、三和信託の商法とは、両者による共同詐欺である旨主張する。

破産者レブコは三和信託が顧客からの解約の申出の増加によつて金地金の買い注文を出すことができなくなつた昭和六〇年六月には、フルケア付の取引分について同社との間で合意解約し、貸付金などの相殺を行つたうえ、後に抵当証券の販売を行う丸和モーゲージを設立するなどしていること、他方、三和信託は、同六〇年八月には倒産が必至であるとみて休眠会社を買い取り、これを当時の三和信託の商号「日本相互リース株式会社」と極めて類似した「日本相互リース保証株式会社」とし、社名変更のために必要などと称して顧客が保有する証書などを回収したうえ、日本相互リース保証と顧客との間で免責的債務引受けをする旨の書類を作成させたこと、三和信託の経理帳簿類は同社の倒産時にはそのほとんどが破棄されるなどして散逸していたこと、三和信託と被告レブコの設立の経緯及びその人的結合、交流など前記認定の事実、後記(五)の(4)説示の三和信託株式会社という商号の使用などに鑑みると、直ちに原告の主張のとおり即断はし得ないが、三和信託及び破産者レブコは、少なくともある時期からは極めて濃厚に共同して顧客から詐欺的行為により金員を得ることを目的とした組織体であつたということができる。

(三) 三和信託の商法と豊田商事の商法の相違について

前記認定の三和信託及び破産者レブコの設立の経緯から明らかなとおり、両者の商法は、顧客に金地金を売却し、売却代金を受け取ると同時に、当該金地金を顧客から期限を定めて預かり、売買代金の何パーセントかに相当する金員を満期までの間賃借料として支払うという基本的仕組みなどの点は、同じである。

ただ、前記認定のとおり、三和信託の商法では、同社が専ら顧客からの集金を担当し、破産者レブコがその金員の運用を担当するというように、集金部門と投資、運用部門を別会社とし、両者の間で契約を締結している。これは、一面、顧客に対する賃借料の支払等の確保を図つたといえるが、右(二)や前記認定の破産者レブコの資金運用状況などに照らすと、豊田商事が顧客から多額の金員を集めておきながら金地金の買付けを全くしていない点を違法と指摘されたことに鑑み、金地金を買い付けているという外観をとることによつて、その商法が違法であるとの誹りを回避しようとしたものともいえる。

したがつて、ある意味では、三和信託の商法は豊田商事の商法を手本としたうえ、より巧妙な仕組みになつていたということができ、その本質は同じであると評価すべきものである。

(四) 本件契約の詐欺性(勧誘文言や勧誘方法が詐欺に当たるか否かなどの点については後記(五)を参照)について

(1) 三和信託と契約した顧客の動機について

前記認定の事実によれば、得意先係は、顧客に本件契約の締結を勧めるに当たり、その内容について、いく通りかの説明をしているが、いずれにせよ、顧客が三和信託と契約を締結するについては、三和信託に顧客が契約したのに見合う金地金が保有されていること(いわば本件契約には金地金の裏付けがあること)、及び、そのため本件契約が預貯金などと同様に安全な契約であるうえ、年平均一〇パーセントの賃借料を支払うという点で預貯金などよりも有利であることが、本件契約を締結する大きな動機となつていたというべきである。

(2) 金地金の裏付けに関する欺瞞性、詐欺性について

(ア) しかし、三和信託は、契約の勧誘の際の見本としてのわずかな金地金を保有するのみで、顧客の契約に見合うだけの金地金を一切保有していなかつた。

三和信託は、顧客との間で本件契約を締結すると、直ちに破産者レブコに金地金の買い注文を出していたものの、現物条件付純金売買取引契約によれば、破産者レブコは三年後に金地金を引き渡しさえすれば、それまでの間は金地金の代金名下に三和信託から送られてきた金員をどのような方法で運用してもよく、したがつて、破産者レブコには三和信託による買い注文と同時に金地金の現物を買い付ける義務はなく、実際にも金地金の現物を買い付けてはいなかつた。そうすると、三和信託が契約に基づいて破産者レブコに金地金の買い注文を出したからといつて、それだけでは三和信託が金地金を買い付けたことにはならず、結局、三和信託は顧客との契約に見合う金地金の現物を保有していなかつたというべきである。

(イ) ただ、破産者レブコは、右の金員で金地金の先物取引をしていたので、現物の受渡しをしなければならないときに約定の金地金の代金額を支払うことができるのであれば、金地金の現物を手に入れることができ、その限りでは金地金を保有しているといえなくもない。

ところで、三和信託との間の現物条件付純金売買取引契約によれば、三和信託から買い注文を受けたときの金地金の代金額から二〇パーセントを差し引いた金員しか受け取ることができないのみならず、三年後の満期までの間に右代金額の二〇パーセントに当たる金員を二回にわたり手数料の名目で三和信託に支払わなければならないのであるから、結局、破産者レブコは三和信託から金地金の買い注文を受けたときの代金額の四〇パーセントの金員で金地金を買い付けなければならないことになる。これに加えて、破産者レブコが三和信託から受けた金地金の買い注文は昭和六〇年五月末までに合計一八八〇・四キログラムにのぼり、前記認定の事実に照らせば、破産者レブコの代表取締役である被告石原忠博は、豊田商事で働いていたときの経験から、短期間のうちに三和信託から破産者レブコに対し膨大な量の金地金の買い注文がされることは予見していたと推認されるうえ、前記認定のとおり、金地金の価額は昭和五五年を境に値下がりを続けており、その値上がり益を期待することは相当困難な状況にあつたから、三和信託から買い注文を受けた量の金地金の現物の引渡しを実現するには、破産者レブコが相当の高収益を上げる必要があることは十分予見していたと推認される。被告石原忠博は、この点につき、パチンコ遊技場の経営が極めて高収益であることに着目して、その経営を企図していたと供述するけれども、そもそもパチンコ遊技場の収益もその立地条件などによつて左右され、常に高収益を得られるわけでもないと考えられるうえ、立川と川越のパチンコ遊技場の営業を開始することによつて一か月当たりどの程度の具体的利益を上げることができたかなどの点については、その供述をみても必ずしも明らかではなく、本件全証拠に照らしてもその点を裏付ける具体的な証拠はないこと(被告石原忠博は、パチンコ遊技場の一日の売上げ金を金一〇〇〇万円と見込んでいたなどと供述するが、右売上げはむろんその利益等を裏付ける証拠もない。)、前記認定の不動産への投資は事前の詳細な調査と採算性などを考慮して行つたものとは考え難いことなどの事実に照らすと、破産者レブコが右の高収益を上げられるという見込みがあつたとは、到底認め難い。

現に、前記認定のとおり、破産者レブコが行つた不動産に対する投資は場当たり的なものに終始したため、完成間近のパチンコ遊技場を手放さざるを得なかつたなどし、結局、破産者レブコは収益を上げられないまま破産宣告を受けるに至つている。

以上の事実によれば、破産者レブコには、将来、先物取引によつて買い注文を出した金地金の現物の受渡しを受ける際に、金地金の代金を支払う能力がおよそないか、そうでないとしてもその支払が極めて困難な状況にあつたということができる。したがつて、破産者レブコが金地金の先物取引をしていたからといつて、それをもつて破産者レブコ、ひいては三和信託が金地金を保有していたということはできないというべきである。

なお、被告石原忠博は、その本人尋問において、パチンコ遊技場の経営が頓挫したのは、破産者レブコにおいて、三和信託が倒産しかかつたために資金を融通したり、丸和モーゲージに顧客からの解約が殺到してその解約金を用意する必要があつたりなどしたため、完成間近のパチンコ遊技場を売却しなければならなかつたからで、マスコミなどが三和信託などを批判、弾劾する報道をしなければ、破産者レブコは当初の予定どおりパチンコ遊技場の経営によつて相応の利益を上げることができたはずであると供述する。しかし、そもそも、前記認定のとおり三和信託などの商法は、極めて批判されるべき点が多かつたのであるから、マスコミの報道をとやかくいうことはできないし、顧客からの解約はある程度予想されたはずであり、なお、後記第八の二で認定した事実によれば、顧客のうち相当数の者が未だ解約代金の返還を受けていないのであるから、パチンコ遊技場を売却するに至つた経緯に関する被告石原忠博の弁解はにわかに信用することができないうえ、前記認定の事実に照らせば、静岡、岡山、名古屋などの土地への場当たり的な投資を控えれば、完成間近のパチンコ遊技場を手放す必要がなかつたとも考えられるから、パチンコ遊技場の経営が頓挫したのはマスコミの報道が原因であるとは到底認められず、同被告の右の供述はたやすく信用することができない。

したがつて、本件契約には金地金の現物の裏付けがあるかのような説明はいずれにせよ欺瞞的、詐欺的であるといわざるを得ない。

(3) 本件契約の安全性、高収益性に関する欺瞞性、詐欺性について

破産者レブコは、金地金の代金名下に三和信託から受け取つた金員でパチンコ遊技場やホテルなどの経営のために不動産を取得するなどしているが、いずれも収益を上げるに至らない段階で手放しており、右はそもそも確たる見込みもないのに場当たり的に投資したことが原因というべきであるうえ、前記認定、説示のとおり、仮にパチンコ遊技場の経営が軌道に乗つたとしても、買い注文のあつた金地金の購入代金の二〇パーセントに相当する前記手数料を満期までの間毎年三和信託に支払うとともに金地金の買い注文から三年後に注文に見合うだけの金地金を買うだけの収益を上げることが可能であつたかは極めて疑わしいといわざるを得ない。

そのうえ、三和信託では人件費の売上げに占める割合が極めて高く、第一期は金一億円余りの損失となつており、営業活動の進展に伴い店舗の増設や従業員の増強に努めていたので、第一期以降は人件費その他の経費が大幅に上昇していたと考えられる。しかも、三和信託は、当初から、破産者レブコから融資を受けるなどして、相当の負債をかかえ、破産者レブコからの手数料収入も、右負債と相殺されるような状況にあつた。

そうすると、三和信託の営業自体が早晩破綻に陥ることは容易に想像されるところであり、前記認定の三和信託と破産者レブコの設立の経緯、被告前田と同石原忠博の人的関係などの事実に鑑みると、三和信託は、破産者レブコとの間で現物条件付純金売買取引契約を締結した際、三和信託の営業自体が早晩破綻に陥ることは容易に予測することができたということができ、これを免れるため、短期的には新たな顧客から集めた金員で営業を続けていくとしても、破産者レブコが収益を上げることが不可能である以上、近い将来必然的に前記賃借料の支払に窮し、顧客からの申出による金地金の引渡しもできない事態に陥ることは容易に予測することができたというべきである。

そして、前記認定、説示のとおり、破産者レブコが現物条件付純金売買取引契約に基づいて約定の手数料を支払つたうえ、満期の際に三和信託に金地金を引き渡すことが可能であつたかは極めて疑わしい状況にあつたといえ、そのことは、被告前田と同石原忠博の関係に照らせば、被告前田も十分認識していたか、認識することが可能であつたということができるから、三和信託において、その顧客に説明したように、およそ本件契約が安全かつ有利なものとは到底いえなかつたというべきである。

したがつて、本件契約に預貯金などのような安全性があると説明したうえ、顧客に年平均一〇パーセントの賃借料の支払を約した点は欺瞞的、詐欺的である。

(五) 勧誘文言の欺瞞性、勧誘方法の反社会性

(1) 金地金の三大利点などについて

(ア) 三和信託の得意先係は、契約の勧誘の際、顧客に対し、金地金の三大利点として換金が自由にできること、税金がかからないこと、値上がりが確実であることを説明していた。

(イ) 前記認定のとおり、金地金は昭和五四年以降値下がりを続けており、また、三和信託は顧客が本件契約によつて同社に預けた金地金を実際には保有していなかつたから、金地金の三大利点のうち値上がりが確実であるとの点及び換金自由であるとの点はいずれも真実に反する(この点、被告深見、同中川及び同鯨岡は、いずれもその本人尋問(被告深見及び同鯨岡はいずれも第一回)において、金地金は一〇年周期で価額が変動するので、いずれは値上がりすることが確実であるとの趣旨で説明したと弁解しているが、みのり、すくすくまたは年輪契約の契約期間は、三年、五年または一年であり、更新されることが当然の前提とされていたわけではないから、得意先係が説明する金地金の値上がりとは通常、右の契約期間内における短期的な値上がりを意味するものと認められ、したがつて、右被告らが弁解するような趣旨で説明したとは到底認められない。)

(ウ) 金地金はこれを譲渡しない限り税金がかからないから、無税との点は必ずしも虚偽とはいえない。

しかし、そもそも得意先係は、いわゆるマル優が廃止されて預貯金の利息に税金がかかることになることを前提に、金地金には税金がかからないから、たとえマル優が廃止されて預貯金の利息に税金がかかるようになつても、金地金自体を運用して利益を上げている三和信託の賃借料に税金がかかることはなく、はるかに有利であることを顧客に納得させるための方便として金地金には税金がかからないと述べていた。このように金地金が無税であるとの説明は、金地金自体を運用することが可能であり、それが極めて安全、確実で有利な運用方法であるかのような説明を説得力のあるものにするためにされていたというべきであり、その限りで、金地金が無税であるとの説明は欺瞞的であるといわざるを得ない。

(2) その他の勧誘文言について

得意先係は、前記1の(二)の(3)のとおり説明することもあつたが、前記認定のとおり、右はいずれも虚偽であつた。

(3) 本件契約を預金であるかのように説明したことについて

得意先係が、本件契約が金地金の売買契約とその賃貸借契約であることを秘して、顧客に対し、あたかも預金の預替えに過ぎないかのような説明をして契約の締結を勧誘したことは、それ自体が詐欺的というべきである。

(4) 三和信託株式会社という商号の使用について

前記認定のとおり、顧客の中には、三和信託株式会社という商号から、三和信託を三和銀行ないしその関連会社と思い込む者が多く、得意先係にはその誤解を利用し、あるいは積極的にその旨の説明をして契約の締結を勧めた者がおり、前記認定の商号の使用に対する過料の決定、得意先係に対する教育内容などの事実を考え合わせると、三和信託は、その営業の開始に当たり、顧客が三和銀行の関連会社と誤解して勧誘がしやすくなるような商号を選んだと推認され、右商号の使用は詐欺的色彩が濃厚というべきである。

(5) 契約の勧誘態様について

前記認定のとおり、得意先係の中には、顧客方に数時間ないし一〇時間以上も居座つて契約の締結を勧めた者もおり、また、顧客を三和信託の各支店に連れて行き、豪華な応接室に案内し、上司である支店長や部長、課長などに引き合わせて、契約の締結を躊躇していた顧客に対し、集団的に契約の締結を勧めるなどしたうえ、契約が成立するや、自ら、あるいはこれを専門とする業務課の係において代金の支払のための預貯金の解約手続に同行したり、解約手続を代行したりする者が多かつた。そして、一旦顧客との間で契約が成立すると、次々と追加契約の締結を勧め、短期間のうちにいくつもの契約を成立させた。

右の一連の行為は、短期間のうちに預貯金などの形で預けていた多額の金員をほとんどすべて三和信託との契約に振り替えさせるというもので、極めて執拗であり、社会的相当性を逸脱しているといわざるを得ず、しかも勧誘の対象とされた者の相当の部分は老人や主婦などいわゆる社会的弱者ともいうべき者らであることを考えると、右勧誘行為は反社会性が強いというべきである。

(六) 出資法二条違反

三和信託の商法では、みのり、すくすくまたは年輪契約の満期が到来したときに、金地金ではなく、金地金の価額に相当する金員の交付を受けることもでき、また、購入した金地金の代金額に対する一定割合の金銭を満期までの間数回にわたり賃借料の名目で受け取るのであるから、それは、いわば名目上金地金の売買、賃貸借の形式をとりつつ、その実質は、売買代金の名目で受け入れた代金相当額の金員の返還及びこれに対する一定割合の金銭の支払を保障して、代金相当額の金員を受け入れたものということができる。したがつて、右金員は、出資法二条所定の預り金に該当し、三和信託は、法律の特別の規定もないのに、業として預り金をしたものであつて、本件契約は出資法二条に該当する違法な契約というべきである。

(七) 結論

以上によれば、三和信託が斡旋する本件契約は、金地金の現物の裏付けがあるから安全であるうえ、年平均一〇パーセントの賃借料の支払を約するから有利であるというものであつたが、その内容において欺瞞的、詐欺的であり、また、出資法二条にも違反しているうえ、その勧誘方法においても巧みに虚偽の勧誘文言を駆使し、また、多くは社会的弱者を相手に執拗かつ集団的に行われるなど社会的相当性を逸脱しており、これらの点からみて、三和信託の商法は、豊田商事の商法と本質的には異ならず、ある意味ではむしろその欠点を巧妙に塗糊したものといえ、極めて違法性の強いものというべきである。

3  ところで、三和信託では、得意先係による契約の締結の勧誘のほかに、その従業員が前記1の(三)で認定した各行為を行つているので、それらの行為の違法性について、次に判断する。

(一) 翻意阻止、預金(保険等)解約

得意先係は、顧客が三和信託との契約をやめたいなどといつて翻意することを阻止し、契約の成立後に、自らまたは業務課の係において、代金の支払のため顧客に代わつて預貯金などを解約しているが、前記認定の事実によれば、翻意阻止は顧客に本件契約を締結させるために、預金解約は本件契約に基づいて顧客からの金員の交付を確実にするためにされたもので、いずれも三和信託の商法の一環として行われており、違法というべきである。

(二) 解約阻止、和解締結

得意先係は、顧客が三和信託に代金を支払つた後、解約したいと申し出ると、極力解約に応じないようにし、解約に応じる場合にも返還金額を大幅に削つた和解契約を締結していた。しかし、解約を申し出る顧客に対し、前記認定のとおり申し向けて解約を阻止するのは、その方法、態様などに鑑み、社会的相当性を逸脱しているといわざるを得ず、また、前記認定の事実によれば、和解契約の締結を始めた昭和六〇年五、六月以降、三和信託はその和解金を支払つていくことができる経営状況になかつたから、そのような状況のもとで長期分割を前提とする和解契約を締結することは欺瞞的、詐欺的であるといわざるを得ない。したがつて、解約阻止及び和解締結の各行為はいずれも三和信託の商法の一環として行われたもので、違法というべきである。

(三) 証書の書換え

得意先係は、前記(1)の(五)の(4)のとおり、昭和六〇年七月ころから社名変更に伴い必要であると言つて顧客に証書の書換えを求め、顧客が保有していた証書などを回収したうえ、第三者である日本相互リース保証が三和信託に代わつて債務を引き受けるなどという内容の返還債務保証合意書に署名押印させた。

しかし、前記認定の事実によれば、得意先係の右説明から、顧客の多くは返還債務保証合意書を商号変更後の三和信託の新たな証書と誤信していたこと、しかも、債務を引き受ける会社の商号は、三和信託の当時の商号と極めて類似していたこと、顧客に右合意書を作成させたのは、三和信託が倒産必至であるとみて、同社の債務を何らの財産的裏付けのない日本相互リース保証に引き受けさせるためであり、三和信託の顧客に対する債務を事実上返済不能の状況に置こうとするものと認められることなどに照らすと、得意先係が顧客に返還債務保証合意書を作成させた行為は、その方法、態様及び結果において詐欺的というべきである。

したがつて、返還債務保証合意書の作成を含めた得意先係による証書の書換えは違法であるというべきである。

(四) なお、後記認定の被告らの加害態様表記載の行為のうちには、必ずしも右(一)ないし(三)に該当しないものもあるが、その中には、これらに準じ、三和信託の商法の一環として行われ、違法というべきものが認められる。

二  原告らに対する具体的な不法行為(本件の争点二)について

1  原告番号一番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば(なお、証拠が、事実上、重複するのは、関連する被告の呼出、出頭の関係による。以下同じ)、原告番号一番の原告に対する不法行為(別紙加害態様表(一)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

2  原告番号二番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二番の原告に対する不法行為(同表(二)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

3  原告番号三番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号三番の原告に対する不法行為(同表(三)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

4  原告番号四番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号四番の原告に対する不法行為(同表(四)記載の事実、但し、(二)記載の事実は、契約の締結には至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

5  原告番号五番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号五番の原告に対する不法行為(同表(五)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

6  原告番号六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号六番の原告に対する不法行為(同表(六)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

7  原告番号七ないし九番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号七番の原告に対する不法行為(同表(七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号八番の原告に対する不法行為(同表(八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号九番の原告に対する不法行為(同表(九)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

8  原告番号一〇番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一〇番の原告に対する不法行為(同表(一〇)記載の事実のうち、(一)の事実、及び、(二)及び(三)で、原告上平が契約代金などの支払に充てるため井上公子に預金通帳と印鑑などを預けて払戻手続の代行を依頼した際、金五〇万用だけ払い戻すよう頼んだが、井上公子が三和信託の解約担当の従業員に解約手続の代行を依頼したところ、全額が払い戻されてしまい、払戻しを受けた金員金六一万二〇二六円全額を右の契約代金などの支払に充てたこと)認めることができ(る。)《証拠判断略》

9  原告番号一一、一二番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一一番の原告に対する不法行為(同表(一一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一二番の原告に対する不法行為(同表(一二)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

10  原告番号一三番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一三番の原告に対する不法行為(同表(一三)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

11  原告番号一四ないし一五番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一四番の原告に対する不法行為(同表(一四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一五番の原告に対する不法行為(同表(一五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一六番の原告に対する不法行為(同表(一六)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

12  原告番号一七番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一七番の原告に対する不法行為(同表(一七)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

13  原告番号一八ないし二〇番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一八番の原告に対する不法行為(同表(一八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一九番の原告に対する不法行為(同表(一九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二〇番の原告に対する不法行為(同表(二〇)記載の事実、但し、同表(二)の事実は、契約の締結に至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

14  原告番号二一番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二一番の原告に対する不法行為(但し、同表(二一)記載の事実のうち、被告北野の息子である北野育雄が被告黒子とともに原告大熊に対し、同表(二一)記載の(一)ないし(三)のとおり契約の締結を勧めたこと(したがつて、この関係では、被告北野の不法行為は認められない。なお、(二)の支払金額は金一〇五三万七四一五円となるが、請求の範囲で認める。)、及び、(四)の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

15  原告番号二二番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二二番の原告に対する不法行為(同表(二二)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

16  原告番号二三番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二三番の原告に対する不法行為(同表(二三)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

17  原告番号二四番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二四番の原告に対する不法行為(同表(二四)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

18  原告番号二五番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二五番の原告に対する不法行為(同表(二五)記載の事実、但し、(七)の事実は、契約の締結に至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。なお、(九)の事実を認めるに足りる証拠はない。)を認めることができ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

19  原告番号二六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二六番の原告に対する不法行為(同表(二六)記載の事実、但し、(三)及び(五)の事実を除く。)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同表(二六)記載の事実のうち(三)の事実を、《証拠略》によれば、同(五)の事実をそれぞれ認めることはできず、甲各第二六号証の一は右各証拠に照らして直ちに採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

20  原告番号二七、二八番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二七番の原告に対する不法行為(同表(二七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二八番の原告に対する不法行為(同表(二八)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

21  原告番号二九番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二九番の原告に対する不法行為(同表(二九)記載の事実、但し、支払金額は、《証拠略》によれば、金一五〇万円と認められ、また、(二)の事実を除く。)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同表(二九)記載の事実のうち(二)の事実を認めることはできず、甲各第二九号証の一は右各証拠に照らして直ちに採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

22  原告番号三〇ないし三三番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号三〇番の原告に対する不法行為(同表(三〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号三一番の原告に対する不法行為(同表(三一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号三二番の原告に対する不法行為(同表(三二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号三三番の原告に対する不法行為(同表(三三)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

23  原告番号三四番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号三四番の原告に対する不法行為(同表(三四)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

24  原告番号三五番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号三五番の原告に対する不法行為(同表(三五)記載の事実、但し、(一)の支払金額は金四三五万八九六〇円となるが、請求の範囲で認める。また、(二)の事実は、契約の締結に至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

25  原告番号三六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号三六番の原告に対する不法行為(同表(三六)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

26  原告番号三七ないし四〇番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号三七番の原告に対する不法行為(同表(三七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号三八番の原告に対する不法行為(同表(三八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号三九番の原告に対する不法行為(同表(三九)記載の事実、但し、損害額の合計は、金九二一万三〇〇八円となる(計算違い)。同原告の請求金額の範囲内である。)を、《証拠略》によれば、原告番号四〇番の原告に対する不法行為(同表(四〇)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

27  原告番号四一番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号四一番の原告に対する不法行為(同表(四一)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同表(四一)記載の事実のうち(二)の事実を認めることはできず、甲各第四一号証の一は右各証拠に照らして直ちに採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

28  原告番号四二ないし四六番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号四二番の原告に対する不法行為(同表(四二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号四三番の原告に対する不法行為(同表(四三)記載の事実、但し、(一)の事実のうち、被告砂田による預金解約の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を、《証拠略》によれば、原告番号四四番の原告に対する不法行為(同表(四四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号四五番の原告に対する不法行為(同表(四五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号四六番の原告に対する不法行為(同表(四六)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

29  原告番号四七番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号四七番の原告に対する不法行為(同表(四七)記載の事実、但し、(一)の事実を除く。)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同表(四七)記載の事実のうち(一)の事実は認めることはできず、甲各第四七号証の一は右各証拠に照らして直ちに採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

30  原告番号四八ないし五一番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号四八番の原告に対する不法行為(同表(四八)記載の事実、但し、(一)の支払金額の合計は、金四九八万二六三二円となる。)を、《証拠略》によれば、原告番号四九番の原告に対する不法行為(同表(四九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号五〇番の原告に対する不法行為(同表(五〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号五一番の原告に対する不法行為(同表(五一)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

31  原告番号五二番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号五二番の原告に対する不法行為(同表(五二)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

32  原告番号五三ないし六九番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号五三番の原告に対する不法行為(同表(五三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号五四番の原告に対する不法行為(同表(五四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号五五番の原告に対する不法行為(同表(五五)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を、《証拠略》によれば、原告番号五六番の原告に対する不法行為(同表(五六)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。この事実は、契約締結に至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。)を、《証拠略》によれば、原告番号五七番の原告に対する不法行為(同表(五七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号五八番の原告に対する不法行為(同表(五八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号五九番の原告に対する不法行為(同表(五九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号六〇番の原告に対する不法行為(同表(六〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号六一番の原告に対する不法行為(同表(六一)記載の事実、但し、支払金額は、金二二四万五九六一円になるが、請求の範囲内で認める。)を、《証拠略》によれば、原告番号六二番の原告に対する不法行為(同表(六二)記載の事実、但し、支払金額は、金三〇七万二七九〇円と認める。)を、《証拠略》によれば、原告番号六三番の原告に対する不法行為(同表(六三)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を、《証拠略》によれば、原告番号六四番の原点に対する不法行為(同表(六四)記載の事実、なお、《証拠略》によれば、同(二)では、同北野が原告土門に対し、契約の締結を勧めたと認められる。したがつて、被告鈴木信司について不法行為は認められない。)を、《証拠略》によれば、原告番号六五番の原告に対する不法行為(同表(六五)記載の事実、但し、(四)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を、《証拠略》によれば、原告番号六六番の原告に対する不法行為(同表(六六)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号六七番の原告に対する不法行為(同表(六七)記載の事実、但し、(一)の支払金額は金二八九万二九二〇円となるが、請求の範囲内で認める。)、《証拠略》によれば、原告番号六八番の原告に対する不法行為(同表(六八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号六九番の原告に対する不法行為(同表(六九)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

33  原告番号七〇番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号七〇番の原告に対する不法行為(同表(七〇)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

34  原告番号七一ないし七五番の各被告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号七一番の原告に対する不法行為(同表(七一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号七二番の原告に対する不法行為(同表(七二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号七三番の原告に対する不法行為(同表(七三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号七四番の原告に対する不法行為(同表(七四)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を、《証拠略》によれば、原告番号七五番の原告に対する不法行為(同表(七五)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

35  原告番号七六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号七六番の原告に対する不法行為(同表(七六)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

36  原告番号七七ないし八四番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号七七番の原告に対する不法行為(同表(七七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号七八番の原告に対する不法行為(同表(七八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号七九番の原告に対する不法行為(同表(七九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号八〇番の原告に対する不法行為(同表(八〇)記載の事実、但し、(二)の事実は、契約の締結に至つていないので、その主張自体からみて不法行為は成立しない。)を、《証拠略》によれば、原告番号八一番の原告に対する不法行為(同表(八一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号八二番の原告に対する不法行為(同表(八二)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

37  原告番号八三番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号八三番の原告に対する不法行為(同表(八三)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

38  原告番号八四番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号八四番の原告に対する不法行為(同表(八四)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

39  原告番号八五番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号八五番の原告に対する不法行為(同表(八五)記載の事実、但し、(六)の事実を除く。)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

40  原告番号八六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号八六番の原告に対する不法行為(同表(八六)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

41  原告番号八七番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号八七番の原告に対する不法行為(同表(八七)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。)を認めることができるが、甲各第八七号証の一だけでは同表(八七)記載の事実のうち(三)の事実を認めるに足りず、右認定を左右するに足りる証拠はない。

42  原告番号八八ないし九四番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号八八番の原告に対する不法行為(同表(八八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号八九番の原告に対する不法行為(同表(八九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号九〇番の原告に対する不法行為(同表(九〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号九一番の原告に対する不法行為(同表(九一)記載の事実、但し、(三)の支払金額は金八七万五七〇六円となるが、請求の範囲内で認める。)を、《証拠略》によれば、原告番号九二番の原告に対する不法行為(同表(九二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号九三番の原告に対する不法行為(同表(九三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号九四番の原告に対する不法行為(同表(九四)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

43  原告番号九五番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号九五番の原告に対する不法行為(同表(九五)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

44  原告番号九六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号九六番の原告に対する不法行為(同表(九六)記載の事実、但し、(二)及び(四)の事実を除く。)を認めることができるが、《証拠略》によつても同表(九六)記載の事実のうち(二)の事実を認めるに足りず、また、《証拠略》によれば、同(四)の事実を認めることはできず、甲各第九六号証の一は、右原告の主張とも異なるし、右各証拠に照らして直ちに採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

45  原告番号九七ないし一〇三番の各原告に対する不法行為について

甲各第九七号証の一によれば、原告番号九七番の原告に対する不法行為(同表(九七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号九八番の原告に対する不法行為(同表(九八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号九九番の原告に対する不法行為(同表(九九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一〇〇番の原告に対する不法行為(同表(一〇〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一〇一番の原告に対する不法行為(同表(一〇一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一〇二番の原告に対する不法行為(同表(一〇二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一〇三番の原告に対する不法行為(同表(一〇三)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

46  原告番号一〇四番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一〇四番の原告に対する不法行為(同表(一〇四)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。)を認めることができるが、甲各第一〇四号証によつても同表(一〇四)記載の事実のうち(三)の事実を認めるに足りず、右認定を左右するに足りる証拠はない。

47  原告番号一〇五ないし一一一番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一〇五番の原告に対する不法行為(同表(一〇五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一〇六番の原告に対する不法行為(同表(一〇六)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一〇七番の原告に対する不法行為(同表(一〇七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一〇八番の原告に対する不法行為(同表(一〇八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一〇九番の原告に対する不法行為(同表(一〇九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一一〇番の原告に対する不法行為(同表(一一〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一一一番の原告に対する不法行為(同表(一一一)記載の事実、但し、(一)の支払金額は、金八七四万七七九〇円、(二)のそれは、金一〇七万二四〇〇円となるが、いずれも請求の範囲で認める。)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

48  原告番号一一二番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一一二番の原告に対する不法行為(同表(一一二)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同表(一一二)記載の事実のうち(三)の事実を認めることはできず、甲各第一一二号証の一は右証拠に照らして直ちに採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

49  原告番号一一三ないし一二三番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一一三番の原告に対する不法行為(同表(一一三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一一四番の原告に対する不法行為(同表(一一四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一一五番の原告に対する不法行為(同表(一一五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一一六番の原告に対する不法行為(同表(一一六)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一一七番の原告に対する不法行為(同表(一一七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一一八番の原告に対する不法行為(同表(一一八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一一九番の原告に対する不法行為(同表(一一九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一二〇番の原告に対する不法行為(同表(一二〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一二一番の原告に対する不法行為(同表(一二一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一二二番の原告に対する不法行為(同表(一二二)記載の事実、但し、(一)の支払金額は金六二七万九七二二円となるが、請求の範囲内で認める。)を、《証拠略》によれば、原告番号一二三番の原告に対する不法行為(同表(一二三)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

50  原告番号一二四番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一二四番の原告に対する不法行為(同表(一二四)記載の事実、但し、(四)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

51  原告番号一二五番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一二五番の原告に対する不法行為(同表(一二五)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

52  原告番号一二六、一二七番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一二六番の原告に対する不法行為(同表(一二六)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一二七番の原告に対する不法行為(同表(一二七)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

53  原告番号一二八番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一二八番の原告に対する不法行為(同表(一二八)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

54  原告番号一二九番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一二九番の原告に対する不法行為(同表(一二九)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

55  原告番号一三〇、一三一番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一三〇番の原告に対する不法行為(同表(一三〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一三一番の原告に対する不法行為(同表(一三一)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

56  原告番号一三二番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一三二番の原告に対する不法行為(同表(一三二)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

57  原告番号一三三番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一三三番の原告に対する不法行為(同表(一三三)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

58  原告番号一三四番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一三四番の原告に対する不法行為(同表(一三四)記載の事実、但し、(二)のうち、熊木が追加の契約の勧誘をしたとの事実は除く。)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同表(一三四)の(二)記載の事実のうち、熊木が追加の契約の締結を勧めたことは認めることができず、甲各第一三四号証の一は右証拠に照らして直ちに採用することができず、(但し、結局、秦野の勧誘による追加の契約の事実は認められるから、不法行為が成立する。)、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

59  原告番号一三五ないし一四二番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一三五番の原告に対する不法行為(同表(一三五)記載の事実、但し、(二)の事実のうち、契約勧誘は、契約締結に至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。)を、《証拠略》によれば、原告番号一三六番の原告に対する不法行為(同表(一三六)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一三七番の原告に対する不法行為(同表(一三七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一三八番の原告に対する不法行為(同表(一三八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一三九番の原告に対する不法行為(同表(一三九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一四〇番の原告に対する不法行為(同表(一四〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一四一番の原告に対する不法行為(同表(一四一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一四二番の原告に対する不法行為(同表(一四二)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

60  原告番号一四三番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一四三番の原告に対する不法行為(同表(一四三)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

61  原告番号一四四、一四五番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一四四番の原告に対する不法行為(同表(一四四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一四五番の原告に対する不法行為(同表(一四五)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

62  原告番号一四六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一四六番の原告に対する不法行為(同表(一四六)記載の事実(但し、(二)及び(四)の事実を除く。なお、(六)の事実は、契約の締結に至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同表(一四六)記載の事実のうち(二)及び(四)の事実を認めることはできず、甲各第一四六号証の一は右各証拠に照らして直ちに採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

63  原告番号一四七、一四八番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一四八番の原告に対する不法行為(同表(一四八)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

64  原告番号一四九番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一四九番の原告に対する不法行為(同表(一四九)記載の事実)を認めることができ、右認定に反する乙第三八号証の二は右各証拠に照らして直ちに信用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

65  原告番号一五〇、一五一番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一五〇番の原告に対する不法行為(同表(一五〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一五一番の原告に対する不法行為(同表(一五一)記載の事実、但し、(二)の事実は契約の締結に至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

66  原告番号一五二番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一五二番の原告に対する不法行為(同表(一五二)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

67  原告番号一五三ないし一五六番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一五三番の原告に対する不法行為(同表(一五三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一五四番の原告に対する不法行為(同表(一五四)記載の事実)を、甲各第一五五号証の一によれば、原告番号一五五番の原号に対する不法行為(同表(一五五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一五六番の原告に対する不法行為(同表(一五六)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

68  原告番号一五七番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一五七番の原告に対する不法行為(同表(一五七)記載の事実、但し、(二)及び(四)の事実を除く。なお、(一)の事実のうち、原告番号一五七番の原告の損害は、二分の一の相続分に当たる金一四四万五八五〇円と認められる。したがつて、その余は理由がない)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同表(一五七)記載の事実のうち(二)の事実を認めることができず、甲各第一五七号証の一は、右各証拠に照らし、直ちに採用することができず、同表(一五七)記載の事実のうち(四)の事実を認めるに足りる証拠はなく、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

69  原告番号一五八ないし一六一番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一五八番の原告に対する不法行為(同表(一五八)記載の事実、但し、(二)の支払金額は、金一四七万九五一〇円となる。同原告主張の支払額の合計に変わりはない。)を、《証拠略》によれば、原告番号一五九番の原告に対する不法行為(同表(一五九)記載の事実、但し、(一)の支払金額は、金一四七万九五一〇円となる。)を、《証拠略》によれば、原告番号一六〇番の原告に対する不法行為(同表(一六〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一六一番の原告に対する不法行為(同表(一六一)記載の事実、なお、被告番号一一番の被告が勧誘して契約させた金額は、証拠上、明確ではないが、弁論の全趣旨によれば、当時の一〇〇グラム当たりの金の価額からみて、総契約高は約四〇〇〇グラムと推定されるので、総契約高に占める同被告の関与したグラム数(三六〇〇グラム)により、按分計算すると、少なくとも、金一〇〇〇万円と認める。)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

70  原告番号一六二番の原告に対する不法行為ついて

《証拠略》によれば、原告番号一六二番の原告に対する不法行為(同表(一六二)記載の事実)を認めることができ(る。)

《証拠判断略》

なお、被告山本慶子は、甲各第一六四号証の一につき時機に遅れた攻撃方法であると主張するところ、その取調べは容易であり、訴訟の完結が遅延することもないから、同被告の主張は採用できない。

71  原告番号一六三番の原告に対する不法行為について

右原告については、同表(一六三)に加害態様についての主張がなく、《証拠略》によつても、加害者、加害態様が明らかではないから、右原告に対する不法行為を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

72  原告番号一六四、一六五番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一六四番の原告に対する不法行為(同表(一六四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一六五番の原告に対する不法行為(同表(一六五)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

73  原告番号一六六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一六六番の原告に対する不法行為(同表(一六六)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

74  原告番号一六七番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一六七番の原告に対する不法行為(同表(一六七)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

75  原告番号一六八番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一六八番の原告に対する不法行為(同表(一六八)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

76  原告番号一六九番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一六九番の原告に対する不法行為(同表(一六九)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

77  原告番号一七〇番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一七〇番の原告に対する不法行為(同表(一七〇)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。)を認めることができるが、《証拠略》によれば、同被告は、得意先係ではなく、臨時に形式的な金員受領、契約書交付の行為をしたに過ぎないものと認められ、契約の勧誘をした事実は認められないから、同被告には右原告主張の不法行為は成立せず、甲各第一七〇号証の一は右各証拠に照らして直ちに採用することができず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

78  原告番号一七一ないし一八二番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一七一番の原告に対する不法行為(同表(一七一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一七二番の原告に対する不法行為(同表(一七二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一七三番の原告に対する不法行為(同表(一七三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一七四番の原告に対する不法行為(同表(一七四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一七五番の原告に対する不法行為(同表(一七五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一七六番の原告に対する不法行為(同表(一七六)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一七七番の原告に対する不法行為(同表(一七七)記載の事実、但し、(一)の支払金額は、金二八二万一四七〇円、(二)のそれは、金二八一万九〇〇〇円である。)を、《証拠略》によれば、原告番号一七八番の原告に対する不法行為(同表(一七八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一七九番の原告に対する不法行為(同表(一七九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一八〇番の原告に対する不法行為(同表(一八〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一八一番の原告に対する不法行為(同表(一八一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一八二番の原告に対する不法行為(同表(一八二)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

79  原告番号一八三番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一八三番の原告に対する不法行為(同表(一八三)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

80  原告番号一八四ないし一九一番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一八四番の原告に対する不法行為(同表(一八四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一八五番の原告に対する不法行為(同表(一八五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一八六番の原告に対する不法行為(同表(一八六)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一八七番の原告に対する不法行為(同表(一八七)記載の事実、(三)の支払金額は金五六万二一七〇円となるが、請求の範囲内である。)を、《証拠略》によれば、原告番号一八八番の原告に対する不法行為(同表(一八八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一八九番の原告に対する不法行為(同表(一八九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一九〇番の原告に対する不法行為(同表(一九〇)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一九一番の原告に対する不法行為(同表(一九一)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

81  原告番号一九二番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一九二番の原告に対する不法行為(同表(一九二)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

82  原告番号一九三、一九四番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一九三番の原告に対する不法行為(同表(一九三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号一九四番の原告に対する不法行為(同表(一九四)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

83  原告番号一九五番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一九五番の原告に対する不法行為(同表(一九五)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

84  原告番号一九六番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一九六番の原告に対する不法行為(同表(一九六)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

85  原告番号一九七番の原告に対する不法行為について

右原告については、同表(一九七)に加害態様についての主張がなく、《証拠略》によつても、加害態様が明らかではないから、右原告に対する不法行為を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

86  原告番号一九八番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一九八番の原告に対する不法行為(同表(一九八)記載の事実、但し、(二)の事実を除く。)を認めることができるが、《証拠略》によつても、同表(一九八)記載の事実のうち(二)の事実を認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

87  原告番号一九九番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号一九九番の原告に対する不法行為(同表(一九九)記載の事実)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

88  原告番号二〇〇番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二〇〇番の原告に対する不法行為(同表(二〇〇)記載の事実、但し、(六)の事実、及び、(七)で、被告藤田が原告田栗に和解金三五万円を支払つた際に、三和信託が二回目以降の返済を行う能力もないのにそれがあるかのように装い、もつて代金の即時返還を阻止したことを除く。)を認めることができるが、同表(二〇〇)の記載の事実のうち右で除いた事実については、これを認めるに足りる証拠はなく(したがつて、被告杉田、同藤田の不法行為は認められない。)、右認定を左右するに足りる証拠はない。

89  原告番号二〇一番の原告に対する不法行為について

右原告については、同表(二〇一)に加害態様についての主張がなく、《証拠略》によつても、加害態様が明らかではないうえ、被害者も判然としないから、右原告に対する不法行為を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

90  原告番号二〇二ないし二〇九番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二〇二番の原告に対する不法行為(同表(二〇二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二〇三番の原告に対する不法行為(同表(二〇三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二〇四番の原告に対する不法行為(同表(二〇四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二〇五番の原告に対する不法行為(同表(二〇五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二〇六番の原告に対する不法行為(同表(二〇六)記載の事実、但し、同号証によれば、同原告は、一部返金を受けているので、同原告の支払額は、合計金一六八八万四九四五円となるから、その余の請求について、不法行為は成立しない。)を、《証拠略》によれば、原告番号二〇七番の原告に対する不法行為(同表(二〇七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二〇八番の原告に対する不法行為(同表(二〇八)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二〇九番の原告に対する不法行為(同表(二〇九)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

91  原告番号二一〇番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二一〇番の原告に対する不法行為(同表(二一〇)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

92  原告番号二一一ないし二一七番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二一一番の原告に対する不法行為(同表(二一一)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二一二番の原告に対する不法行為(同表(二一二)記載の事実)を、甲各第二一三号証の一、弁論の全趣旨によれば、原告番号二一三番の原告に対する不法行為(同表二一三)記載の事実を、《証拠略》によれば、原告番号二一四番の原告に対する不法行為(同表(二一四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二一五番の原告に対する不法行為(同表(二一五)記載の事実、但し、(四)の事実を除く。《証拠略》によつても、この事実を認めるに足りない。なお、(二)の支払金額は、金二〇四万三二二四円である。)を、《証拠略》によれば、原告番号二一六番の原告に対する不法行為(同表(二一六)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二一七番の原告に対する不法行為(同表(二一七)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

93  原告番号二一八番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二一八番の原告に対する不法行為(同表(二一八)記載の事実(但し、(三)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

94  原告番号二一九、二二〇番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二一九番の原告に対する不法行為(同表(二一九)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二二〇番の原告に対する不法行為(同表(二二〇)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

95  原告番号二二一番の原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二二一番の原告に対する不法行為(同表(二二一)記載の事実)を認めることができ(る。)《証拠判断略》

96  原告番号二二二ないし二三四番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二二二番の原告に対する不法行為(同表(二二二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二二三番の原告に対する不法行為(同表(二二三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二二四番の原告に対する不法行為(同表(二二四)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二二五番の原告に対する不法行為(同表(二二五)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二二六番の原告に対する不法行為(同表(二二六)記載の事実、但し、(一)の支払金額は金四四九万九四二八円となるが、請求の範囲で認める。)を、《証拠略》によれば、原告番号二二七番の原告に対する不法行為(同表(二二七)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二二八番の原告に対する不法行為(同表(二二八)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

97  原告番号二二九番の原告に対する不法行為について

右原告については、加害態様表(二二九)に加害態様の主張がなく、《証拠略》によつても加害態様が明らかではないから、右原告に対する不法行為を認めることはできない。

98  原告番号二三〇ないし二三四番の各原告に対する不法行為について

《証拠略》によれば、原告番号二三〇番の原告に対する不法行為(同表(二三〇)記載の事実、但し、(三)の事実を除く。この事実を認めるに足りる証拠はない。)を、《証拠略》によれば、原告番号二三一番の原告に対する不法行為(同表(二三一)記載の事実、但し、同(二)の事実は、契約の締結に至つていないので、その主張自体からみて、不法行為は成立しない。)を、《証拠略》によれば、原告番号二三二番の原告に対する不法行為(同表(二三二)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二三三番の原告に対する不法行為(同表(二三三)記載の事実)を、《証拠略》によれば、原告番号二三四番の原告に対する不法行為(同表(二三四)記載の事実)をそれぞれ認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  被告らの責任(本件の争点三ないし六について)

1  別紙被害状況一覧表の不法行為者欄記載の被告ら(前記第四ないし第七の被告らを除いたその余の被告らで、被告番号四番(但し、原告番号二〇四番の一ないし四の各原告に対する関係で)、五番、六番(但し、原告番号一ないし一四三番の各原告に対する関係で)、七ないし九番、一一ないし一四番、一六番、一七番、一九番、二一ないし二五番、二九番、三〇番、三三番、三五番、三六番、三八番、三九番、四一番、四二番、四四ないし五五番、五七番、五八番、六〇番、六一番、六六ないし六七番、六九ないし七二番の各被告)及び件外人ら(以下「被告ら及び件外人ら」という。)のうち、原告らに本件契約の締結を勧めた者の責任(本件の争点三)について

(一) 前記第八の一で認定した事実、《証拠略》によれば、次の事実が認められる。

(1) 三和信託が原告らとの契約高に見合うだけの金地金を現に保有していたかどうかの点については、被告ら及び件外人らの中には金地金の現物を保有しているとの上司の説明を信じる者もいたが、金地金の現物を保有していないのではないかと疑う者もあり、中には、顧客から預かつた金員を運用しているので、三和信託の各支店には顧客との契約高に見合うだけの金地金が保管されていないと考える者もいた。

他方、被告ら及び件外人らの中には、三和信託の取引先が金地金の買付けをしているとの話しを聞かされていた者がおり、それが破産者レブコであることを知つている者もいたが、その存在自体を知らない者も多かつた。

(2) 被告ら及び件外人らの多くは、特に顧客から預かつた金員の運用方法や運用先などにおよそ関心を抱いていないか、会社の説明をそのまま鵜呑みにするなどしており、会社の説明などから、運用方法としては、三和信託が金地金の現物そのものを運用しているとか、海外で投資しているとか、委託会社に金員を預けて運用しているとか、不動産に投資しているとか、外国の債券や株式などに投資しているとかなどと考えていた。

しかし、そのような運用方法で果たして顧客に年平均一〇パーセントもの賃借料を支払つたうえ、会社の経費などを賄うだけの利益を上げられるかどうかについては、被告ら及び件外人らの多くは漠然と可能であろう程度に考えていたに過ぎなかつた。中には、賃借料がかなり高率であつたことや豊田商事に関する報道などから困難ではないかと疑つていた者もいた。

(3) 三和信託は、従業員向けに解約手数料が不要の契約(マル特と呼ばれていた。)を扱つていたが、被告ら及び件外人らの中には会社の説明を信じるなどして親族または自分のために購入する者もいた。

(4) 被告ら及び件外人らの中には、顧客に対する勧誘の方法が強引、執拗ではないかなどと疑問をもつていた者、顧客宅を訪ねたその日のうちに契約を成立させてしまうのか不思議に思つていた者、明らかに虚偽の説明をして契約の締結を勧めている場合があると思つていた者がいた。

(5) 被告ら及び件外人らの中には、豊田商事や三和信託に関する報道をみて、扱つている商品、顧客に対する勧誘方法などの点で両社の商法が極めて似ているとか、三和信託の商法自体が成り立ち難いものではないかと考えていた者もおり、昭和六〇年六月豊田商事の永野会長が刺殺される事件が起こる前にも、両社の商法が酷似しており、三和信託の商法は豊田商事と同様に違法ではないかとか、三和信託は倒産するのではないかということが従業員の間で話題にのぼつたことがあつた。しかし、上司から、三和信託は豊田商事と異なり、きちんと金地金の買付けを行い、賃借料も支払つているとか、歩合給は豊田商事よりも低いなどとして、豊田商事の商法との違いの説明を受け、一応違法な営業を行つていないと考える者もいた。

永野会長の刺殺事件が起こり、新規の顧客に対する勧誘の際に不審の目で見られるようになると、被告ら及び件外人らをはじめとする従業員の多くは、三和信託の商法自体に疑念を抱くようになつた。もつとも、昭和六〇年六月二九日新宿店で被告前田らから三和信託の現状、その商法の正当性などに関する説明を聞いて一応それを信じたが、中には会社の説明を信用せず、退職する者もいた。永野会長の刺殺事件の後は、顧客からの解約が急増したことなどから、従業員の多くが会社が倒産するのではないかと考えるようになつていた。

(6) 被告ら及び件外人らの中には、固定給や歩合給がほかの販売員の仕事に比べると高い方だと考えていた者がいたし、客観的にみても、他の職種よりは、かなり高かつた。それゆえ、多くの者が三和信託に応募した。但し、得意先係の中には、夜間、遅くまで働いても、残業手当てなどは一切出なかつたため、仕事量の割りには必ずしも高いとは思つていなかつた者もいた。

以上の事実が認められ(る。)《証拠判断略》

(二) 前記第八の一で認定した事実、右(一)で認定した事実を前提に被告らの責任について判断する。

(1) 詐欺の成否

三和信託が原告らとの金地金の購入契約の取引高に相当する金地金を保有せず、また、客観的にみてみのり、すくすくまたは年輪契約において約した年平均一〇パーセントの賃借料の支払及び満期の際の金地金の引渡しなどは極めて困難ないし不可能であつたと考えられることは前記認定のとおりであるが、本件全証拠に照らしても、被告ら及び件外人らが、別紙被害状況一覧表においてそれぞれ対応する各原告に対し契約の締結を勧めた際に、これらの事実を確定的に認識していたとまで認めることはできない。

したがつて、被告ら及び件外人らが原告らに対してした契約の締結の勧誘が直ちに詐欺に当たるとはいえない(なお、原告らは、被告ら及び件外人らが本件契約に金地金の裏付けがないことを確定的に認識して原告らに本件契約の締結を勧めている以上、詐欺が成立すると主張するもののようであるけれども、本件契約は満期までの間に約定の賃借料を支払うとともに満期の際に金地金を原告らに引き渡すというものであり、たとえ本件契約には金地金の裏付けがないとしても、満期までの賃借料の支払と満期の際の金地金の引渡しが確実に履行されれば、原告らとの間の債務はすべて履行されたことになるうえ、前記認定のとおり、破産者レブコは、三和信託からの買い注文に見合うだけの量の金地金の先物取引を行つていたから、被告ら及び件外人らが金地金の裏付けがないことを認識して本件契約の締結を原告らに勧めたとしても、それをもつて直ちに詐欺に当たるということはできない。)。

(2) 未必の故意または過失による法不行為の成否

(ア) 原告らに本件契約の締結を勧めた被告ら及び件外人らの責任

<1> 前記第八の一で認定した事実及び右(一)で認定した事実に照らすと、三和信託は、多数の従業員を雇用し、一般の水準からみれば、高額といえる給料を支払い、駅前の一等地などに支店を設けるなどしていたことから、相当の経費を必要とすると考えられ、しかも、本件契約によると、年に約一〇パーセントという相当高率の賃借料を支払うのであるから、企業として存続するためには、相当高い収益を安定的に得る必要があると考えられる。

<2> 三和信託の各支店には営業部とテレフォン部があるだけで、金地金の買付けやその運用を担当する部署はなく、各支店に置かれた金地金の現物は顧客に見せるために用意されたもので、その量もわずかに過ぎなかつたから、被告ら及び件外人らは、契約高に見合う金地金の現物が保管されていないことに気づいたはずであること、しかも、顧客に対しては金地金ないし受け取つた金員を運用するなどと説明しながら、ほとんどの社員が三和信託からは、何らの具体的な運用方法について説明も受けておらず、その点についての理解もなかつたこと、年約一〇パーセントという相当高率な賃借料を支払うと顧客に説明しながら、この点についても、同様、何らの理解もなかつたことなど前記認定、説示の事実及び右<1>の事実に照らすと、被告ら及び件外人らは、三和信託が原告らとの金地金の売買契約の取引高に見合うだけの金地金を保有しておらず、金地金などの運用によつて利益を上げ、顧客に説明した高い賃借料を支払うことは著しく困難であるか不可能であることをある程度認識していたか、少なくとも容易にこれを認識することができたというべきである。

<3> 右の事実に加えて、三和信託が設立され、営業を開始した当時、すでに豊田商事を批判、弾劾する報道が盛んにされており、その後も同様の報道が繰り返されていたこと、被告ら及び件外人らの中にも、三和信託の商法自体に疑問をもつ者がいたこと、両社の商法の類似性など前記認定、説示の事情も考え合わせると、被告ら及び件外人らは、本件契約は金地金の裏付けがなく、顧客に高い賃借料を支払つたうえ、満期に金地金を引き渡すことなどが著しく困難であるか不可能であることを容易に知ることができる状況にあつたということができる。

<4> しかも、前記認定、説示のとおり、セールストークのひとつである金の三大利点のうち金地金が必ず値上がりするとの点は、その当時の金地金の価格の推移を見る限り、期待できる状況になく、前記認定の事実によれば、そのことは被告ら及び件外人らも容易に認識することができたということができる。

そのうえ、前記認定のとおり、原告らに対して本件契約の締結を勧める場合には、時に明らかに虚偽とわかる勧誘文言を駆使し、しかも、多くの場合、執拗かつ集団的、眩惑的に、いわば即日即決とでもいうように契約の締結を勧め、一旦契約するや、その顧客の預貯金を短期間のうちにほとんどすべて三和信託に預け替えさせてしまつており、その勧誘方法、勧誘態様は社会的相当性を逸脱しており、反社会的というべきものであつて、被告ら及び件外人らもそのことは十分認識していたか、容易に認識することができたというべきである。

<5> 以上の諸点によれば、被告ら及び件外人らは、三和信託に入社後、原告らに本件契約の締結を勧めるに際し、その商法が右のような点において問題点を含み、違法ないし不当であることをある程度認識していたか、そうでないとしてもこれを容易に認識することができたというべきであり、それにもかかわらず、漫然、契約の締結を勧誘した右の者らには、少なくとも過失がある。

したがつて、原告らに本件契約の締結を勧めた被告ら及び件外人らは原告らの被つた損害を賠償する義務がある。

なお、被告ら及び件外人らの中には、金地金ないし顧客から受け取つた金員の運用方法について、漫然と会社の説明を信じていたり、この点について上司に尋ねたにもかかわらず、末端の従業員は知る必要がないなどと言われた者もいる。しかし、そもそも、前記認定、説示のとおり、本件商法にはかなり疑問を抱く余地が多かつたといえること、上司に拒否されたとしても、会社の上層部に明確な説明を求めるなり、疑問を解消しない場合には、会社を辞めるなりすることなども可能であつたから、これらの点をもつて、被告ら及び件外人らに過失がないということはできない。

(イ) 原告らに本件契約のうち殊に年輪契約の締結を勧めた被告ら及び件外人らの責任

前記第八の二で認定したとおり、被告ら及び件外人らの中には、昭和六〇年七月ころ以降原告らに対し年輪契約の締結を勧めた者がいるが、同年六月ころには新規の顧客の開拓が相当困難な状況に陥つていたうえ、豊田商事の永野会長が刺殺された後は、顧客からの解約の申出が急増し、三和信託の従業員の間にも動揺が見られるようになり、三和信託側の説得にもかかわらず、従業員の中にはその説明を信じないで退職する者がいたこと、残つた従業員の中にもこのまま顧客からの解約の申出が続けば、早晩会社が倒産するのではないかと考えていた者もいたこと、昭和六〇年六月以降の豊田商事及び三和信託に関するマスコミの報道の状況など前記認定の事情に照らすと、原告らに年輪契約の締結を勧めた被告ら及び件外人らは、顧客への賃借料の支払のみならず、満期の際の金地金の引渡しあるいはこれに相当する金員の支払が不可能であることを認識していたか、容易に認識をすることができたということができる。そうすると、原告らに年輪契約の締結を勧めた被告ら及び件外人らには、右の点に関して未必の故意または重大な過失があつたというべきであり、原告らの被つた損害を賠償する義務がある。

(ウ) 以上によれば、被告ら及び件外人らが原告らに対し、加害態様表記載のとおり、本件契約の勧誘をして契約を締結させ、その契約代金などを出捐させたことは、被告ら及び件外人らの過失に基づく不法行為ということができ、また、同様にして殊に年輪契約を勧誘し、原告らにその代金などを出捐させたことは、未必の故意または重大な過失に基づく不法行為ということができるから、被告ら及び件外人らにはそれによつて被つた原告らの損害を賠償する義務がある。

なお、被告らの多くは、右いずれの場合も、三和信託の従業員として会社の指示に従つていたに過ぎない旨主張するが、前記認定のとおり、本件契約にはいくつもの疑問点があり、しかも、その勧誘の方法や態様が社会的相当性を逸脱していることや当時の社会状況などに照らすと、被告らが単に会社の指示に従つて原告らに本件契約の締結を勧めたことをもつて、被告らの責任を否定することはできないというべきであり、被告らの中に、自ら契約をするなどした者がいることも、右の判断を左右しない。

2  本件契約の締結の勧誘以外の行為をした被告ら及び件外人らの責任(本件の争点四)について

(一) 翻意阻止、預金(保険、債券)解約について

別紙被害状況一覧表の不法行為者欄記載の被告らの中には、前記認定のとおり、原告らの翻意を阻止したり、その預金等の解約を代行するなどした者がいるが、右の各行為は契約の勧誘と一体となつてこれを助けるか、原告らに契約代金などを交付させる目的でされたものであるから、これらの被告ら及び件外人らには三和信託の得意先係として前記認定、説示したと同様の注意義務があつたということができ、したがつて、漫然とこれらの行為をした被告ら及び件外人らには同様、過失があり、原告らが被つた損害を賠償する義務がある(なお、別紙加害態様表の不法行為者欄記載の被告らの中には、原告らから契約代金などの支払に充てるために預金通帳などを預かつた後、依頼を受けた以上の金額の払戻しをして原告らに無断で契約を締結した者がいるが、前記第八の二などによれば、原告らはその後右契約を追認しているものと認められるから、無断契約自体が不法行為を構成するとまではいえない。)。

(二) 解約阻止、証書の書換え、和解契約の締結について

(1) 本件契約は、前記認定のとおりその内容において欺瞞的、詐欺的であるうえ、その勧誘方法、勧誘態様も社会的相当性を逸脱し、反社会的であることなどに鑑みると、違法、無効なものというべきであり、したがつて、原告らは、本件契約の成立後、三和信託に対し契約代金などの返還を求めることができると解される。

(2) 被告ら及び件外人らの中には、原告らからの本件契約の解約の申出及び契約代金などの返還の請求に対し、今解約すると損であるなどと言つて原告らの解約を阻止した者がいるが、解約を阻止された原告らはこれによつて、三和信託に対する前記請求権を適宜行使する機会を失つたということができる。そして、漫然と解約を阻止した被告ら及び件外人らには前同様、少なくとも過失があり、原告らが被つた損害を賠償する義務がある。

(3) 被告ら及び件外人らの中には、原告らからの本件契約の解約の申出及び契約代金などの返還の請求に対し、原告らとの間で和解契約を締結する手続をとつた者がいるが、和解契約を締結した原告らは、その結果、三和信託に対する前記請求権を即時行使する機会を失つたということができる。そして、前記認定、説示のとおり、和解契約の手続を行つた当時(昭和六〇年五、六月以降)、被告ら及び件外人らは、三和信託が顧客からの解約の申出の増加などによつて経営状況が悪化して、賃借料の支払のみならず、満期の際の金地金の引渡しなどができないことを認識していたか、容易に認識をすることができたということができたのであるから、和解契約の締結の手続を行つた被告ら及び件外人らには、前記1の(二)の(イ)と同様未必の故意ないし重大な過失があるといえ、したがつて、原告らが被つた損害を賠償する義務がある。

(4) 被告ら及び件外人らの中には、原告らとの間で証書の書換えを行つた者がいるが、前記認定のとおり、それは日本相互リース保証という実体のない会社が債務の返還を保証するなどというもので、その時期も三和信託の倒産が予想されたころであるとはいえ、証書の書換えに応じた原告らはその結果三和信託に対する前記請求権を行使する機会を失つたということができる。そうすると、その当時、証書の書換えを行つた被告ら及び件外人らには、右(3)と同様未必の故意ないし重大な過失があるから、原告らが被つた損害を賠償する義務がある。

3  破産者レブコの責任(本件の争点五)について

破産者レブコ及び三和信託の設立に至るまでの経緯、両社の日頃の交流状況、破産者レブコの投資の状況及びその結果など前記認定の事実によれば、破産者レブコは三和信託が顧客から集めた金員を運用する機関として、被告石原忠博が設立した会社であるが、前記第八の一の2の(四)で認定、説示したとおり、被告石原忠博は、破産者レブコが三和信託との間で締結した現物条件付純金売買取引契約に基づき、三和信託から受けた金地金の買い注文の代金額の二〇パーセントに相当する手数料を満期までの間に支払つたうえ、満期の際に金地金を三和信託に引き渡すことは著しく困難または不可能であることを十分認識することが可能であつたと認められるうえ、両社の設立に至るまでの経緯、三和信託の代表取締役である被告前田と破産者レブコの代表取締役である被告石原忠博との人的関係、三和信託と豊田商事の商法の類似性、被告石原忠博がかつて豊田商事の従業員として営業を担当していたことがあることなど前記認定の事実も考え合わせると、破産者レブコの代表取締役である被告石原忠博は、破産者レブコを含めた三和信託の商法が違法であり、いずれ破綻を免れないことを認識していたか、容易にこれを認識することが可能であつたというべきである。

しかるに、被告石原忠博は、破産者レブコの代表取締役として、被告前田らとともに三和信託の商法を推進し、その従業員である被告ら及び件外人らをして、原告らとの間で本件契約の勧誘等をさせ、原告らから金員を交付させるなどしたのであるから、破産者レブコには過失があり、したがつて、原告ら(但し、原告番号五四番、七六番、八一番、九四番、一二〇番の各原告を除く。)の被つた損害を賠償する義務がある。

4  三和信託及び破産者レブコの取締役または監査役の責任(本件の争点六)について

(一) 前記第八の一及び二で認定した事実、《証拠略》によれば、次の事実が認められる。

(1) 被告番号一番、四番、六番及び九番の各被告は、三和信託及び破産者レブコの設立を推し進め、あるいはこれに協力した後は、同社が破産宣告を受けるまで、三和信託における最高の幹部社員として、幹部会議の構成員になるなどとして三和信託の基本的な営業方針などの決定に関与し、また、新入社員の研修の講師をしたり、営業部の管理職として直属の部下である得意先係を統括するなどして三和信託の商法を推進し、顧客から金地金の代金名下に多くの金員を集めた。

(2) 被告番号五番の被告は、昭和五八年九月ころ三和信託に就職し、同五九年二月には津田沼店の支店長に就任し、営業部の管理職として直属の部下である得意先係を統括するなどして三和信託の商法を推進し、顧客から金地金の代金名下に多くの金員を集めた。同被告は同五八年一〇月一二日から同六〇年八月三一日までの間取締役に就任していた。

(3) 被告番号七番の被告は、昭和五八年八月ころ、かねてから親しい仲であつた被告石原忠博に誘われて三和信託に入社したが、入社当初から営業部の管理職の待遇を受け、同五九年一月には立川店の営業課長、同年三月には津田沼店の営業次長(但し、一、二か月間、立川店の営業課長に降格されたこともある。)、同年一二月に新宿店の営業部長、同六〇年二月には客からの解約申出に対応する本社の営業統括本部の部長にそれぞれ昇進し、同五九年四月一八日から同六〇年八月三一日までの間取締役に就任していた。同被告は、幹部会議に出席するなどして三和信託の重要な営業方針の決定などに関与し、基本トークの原案に手直しを加えて甲第二四号証のような形に仕上げるとともに、その後も随時改訂を行い、また新入社員の研修の際の講師を務めるなどし、昭和六〇年八月に行われた証書の書換えを行う旨の三和信託の決定にも関与した。

(4) 被告番号八番の被告は、三和信託及び破産者レブコの設立に協力した後は、総務部長、社長室長として三和信託の各支店から集まつてくる契約代金などの取りまとめなどを行つた。

(5) 被告番号一〇番の被告は、カシオ計算機株式会社に勤務していたが、同五九年二月、かつての同僚であつた被告番号八番の被告に誘われ、被告石原忠博の面接を受けて経理課長として入社し、その後、経理部長となり、同六〇年五月に退職するまで三和信託の経理を担当していたが、その職務内容は三和信託の経理全般を統括するものではなく、被告番号八番の被告の指揮のもとに仕事をした。同被告は、登記簿上同六〇年三月に取締役に就任したことになつており、同被告もそのことは知つていたが、経理の仕事に終始し、格別取締役としての職務を行つたことはなかつた。

(6) 被告番号一一番の被告は、昭和五八年九月二二、三日ころに新聞の折込み広告をみて三和信託に入社し、入社後約二か月ごとに主任、係長、課長に昇進し、同五九年四月に津田沼店の営業次長、同六〇年五月に同店の支店長(部長)にそれぞれ昇進し、同年一〇月ころ三和信託を退職した。同被告は、登記簿上同年三月ころ、三和信託の取締役に就任したことになつており、一、二回幹部会議に出席したことがあつた。

(7) 被告番号一二番の被告は、三和信託及び破産者レブコの設立に協力した後は、破産者レブコの従業員になつたが、同五九年二月ころ、三和信託に移り、以後は三和信託における幹部社員として、営業部の管理職として直属の部下である得意先係を統括するなどして三和信託の商法を推進し、顧客から金地金の代金名下に多くの金員を集めた。同被告は同六〇年七月ころには三和信託を退職して丸和モーゲージに移つた。同被告は、同五九年三月一一日から同六〇年七月一一日までの間三和信託の取締役に就任していた。

(8) 被告番号一三番の被告は、昭和五九年一月に入社し、同年三月に立川店で主任、同年四月に係長、同年七月に津田沼店の営業課長、同年一〇月に営業次長、同年一一月に営業部長、同年一二月に新宿店の営業部長に就任し、登記簿上、同六〇年三月ころ取締役に就任したことになつているが役員の会議に出席したことはなく、同年七月二〇日ころに退職した。

(9) 被告番号一四番の被告は、三和信託及び破産者レブコの設立に協力した後は、三和信託における幹部社員として、営業部の管理職として直属の部下である得意先係を統括するなどして三和信託の商法を推進し、顧客から金地金の代金名下に多くの金員を集めたが、昭和六〇年七月ころには同社を退職して丸和モーゲージに移つた。

(10) 被告番号一五番の被告は、登記簿上三和信託及び被告レブコの監査役に、被告番号五四番及び五五番の各被告は登記簿上破産者レブコの取締役にそれぞれ就任したことにされているが、被告番号一五番の被告は被告石原忠博の妻であることから名義上、三和信託及び被告レブコの監査役とされたに過ぎず、被告番号五四番の被告は被告石原忠博の弟であることから、被告番号五五番の被告は被告石原忠博の義弟(被告番号一五番の被告の弟)であることから、それぞれ破産者レブコの取締役とされたに過ぎず、いずれも破産者レブコを含めた三和信託の商法に幹部として関与してはいなかつた。

以上の事実が認められ(る。)《証拠判断略》

(二) 被告番号一番、四ないし九番の各被告の責任について

前記認定の事実によれば、被告番号一番の被告(及び被告番号五三番の被告)が三和信託及び破産者レブコをそれぞれ設立して豊田商事の商法と同様の商法を行うことを企図したこと、被告番号四番、六番、八番、九番の各被告はいずれも豊田商事に勤務して営業を担当していたことがあり(第八の一参照)、被告前田及び同石原忠博による三和信託及び破産者レブコの設立に協力していること、被告番号一番、四ないし九番の各被告は三和信託の幹部会議の構成員などとして会社の経営方針の決定に関与していたことが認められる。

また、右(一)で認定した事実に照らせば、被告番号七番の被告は、三和信託への入社に当たり同社の商法の概略を十分認識していたと推認され、これに反する被告中川本人尋問の結果は直ちに信用することができない。

そして、以上の事実のほか、右(一)で認定した事実、前記認定、説示の豊田商事及び三和信託の各商法の違法性なども考え合わせると、被告番号一番、四ないし九番の各被告は、三和信託の営業開始の当初から、同社の商法が違法であることを認識していたか、容易にこれを認識することができたというべきである。

しかるに、被告番号一番、四ないし九番の各被告は、三和信託の営業開始後は同社が営業を中止するまで、同社の幹部社員とし、得意先係をして原告らに本件契約の締結を勧めてこれを成立させ、金地金の代金名下に金員を交付させるなどし、もつて三和信託の商法の推進に当たつたのであるから、右の被告らには過失があるというべきであり、したがつて、原告らの被つた損害を賠償する義務がある。

(三) 被告番号一二番及び一四番の各被告の責任について

被告番号一二番の被告が三和信託に在籍していたのは昭和五九年二月ころから同六〇年七月ころまでであるけれども、同被告は、かつて豊田商事に勤務したことがあり、三和信託及び破産者レブコの設立に協力し、三和信託では取締役に就任し、同社の幹部社員として三和信託の商法の推進に当たつたうえ、三和信託に入社する前は破産者レブコに、同社を退職した後は丸和モーゲージに就職したことが明らかである。

また、被告番号一四番の被告が三和信託に在籍したのは同六〇年七月ころまでであるけれども、同被告は、かつて豊田商事に勤務したことがあり、三和信託及び破産者レブコの設立に協力し、三和信託では同六〇年三月一日から同年七月一一日まで取締役に就任し、同社の幹部社員として三和信託の商法の推進に当たつたうえ、同社を退職した後は丸和モーゲージに就職したことが明らかである。

これらの事実に加え、丸和モーゲージと破産者レブコとの関係など前記認定の事実に鑑みると、被告番号一二番及び一四番の各被告は、事実上、三和信託の営業開始当初から営業中止まで幹部社員として同社の商法を推進したということができるから、その商法が違法であることを認識していたか、容易に認識することができたというべきであり、前同様右の被告らには過失がある。したがつて、同被告らは、原告らの被つた損害を賠償する義務がある。

(四) 被告番号五三番の被告の責任について

前記第八の三の3で認定、説示したとおり、被告石原忠博は、被告前田らとともに三和信託及び破産者レブコをそれぞれ設立し、その最高責任者として、三和信託の商法が違法であることを知つていたか、容易に知ることができたと認められるにもかかわらず、これを推進したのであるから、過失があるというべきであり、したがつて、原告らの被つた損害を賠償する義務がある。

(五) 被告番号一〇番、一一番及び一三番の各被告の責任について

原告らは、被告番号一〇番、一一番及び一三番の被告についても三和信託の取締役または幹部社員としての責任を主張する。前記認定の事実によれば、右の被告らは確かに、順次昇進するなどして、ある時期以降、登記簿上、取締役とされていたが、いずれも、三和信託に就職した後に三和信託の商法の概要を知るに至つたものの、必ずしもその全貌を熟知していたわけではないことが窺われ、前記認定の同被告らの三和信託の商法への関与の態様、その事実上の地位、職責などをも考え合わせると、直ちに右の被告らが前記被告番号一番などの被告と同様の意味で、三和信託の幹部職員としてその商法を推進したとまでは認め難い。したがつて、右の被告らに原告らが主張する責任を認めることはできない。

(六) 被告番号一五番、五四番、五五番の各被告の責任について

前記で認定の事実によれば、被告番号一五番、五四番、五五番の各被告は、三和信託の商法に幹部として関与したものとは認められないから、同被告らについて、原告ら主張の責任を認めることはできない。

5  連帯責任の有無及び範囲について

(一) 原告らに本件契約の締結を勧め、その翻意を阻止し、預金通帳などを預かるなどしてその解約手続に関与する行為は、ひとつの契約の成立及びその代金などの交付に向けられたもので、いずれも三和信託の商法の一環としてされていること、解約の申出を阻止し、和解契約の締結の手続を行い、また証書の書換えを行う行為は、集金した金員を確保するためにされたもので、いずれも三和信託の指示に基づき、その営業の一環としてされていること、被告番号一番、四ないし九番、一二番、一四番、五三番の各被告は、幹部職員として三和信託の商法を推進していたことなど前記認定、説示の事実に照らせば、被告らの前記認定の行為のうち、契約勧誘、翻意阻止、預金などの解約の一連の行為(以下「契約成立に至るまでの行為」という。)には客観的関連共同性が認められ、また、契約成立に至るまでの行為と解約阻止、和解契約締結、証書書換えの一連の行為(以下「顧客への返金を阻止する一連の行為」という。)にも客観的関連共同性が認められ、契約成立に至るまでの行為、顧客への返金を阻止する一連の行為(なお、これらの行為に準ずる行為を含む。)と右幹部職員としての各被告が三和信託の商法を推進したことにも客観的関連共同性が認められるから、それぞれ客観的関連共同性が認められる範囲内においてその関与者全員について共同不法行為が成立するというべきである。

なお、契約勧誘、翻意阻止、預金の解約手続に関与した者は、自らが関与して成立させた契約の代金などとして原告らに支払わせた金額を限度として責任を負い、解約阻止、和解契約の締結または証書書換えに関与した者は、自らが関与するまでに原告らが支払つた契約代金などの金額を限度として責任を負うと解すべきである。

原告らは、別紙被害状況一覧表及び別紙加害態様表のとおり各原告に対し、右いずれかの関与をするなどした被告らはその関係で全員につき被害額の全部について共同不法行為が成立する旨主張するが、本件証拠に照らしても、右の認定、説示を超えて、被告ら全員についてそのような客観的関連共同性を認めることはできないし、また、主観的関連共同性も認められないから、原告の主張は採用することができない。

(二) 以上認定、説示したところによれば、被告らの責任の範囲は次のとおりとなる。

(1) 被告番号一番、四番(但し、原告番号二〇四番の一ないし四の各原告に対して)、五番、六番(但し、原告番号一ないし一四三番の各原告に対して)、七ないし九番、一二番、一四番、五三番(以上、前記幹部職員としての被告、なお、被告番号二番、三番、五六番の各被告、被告番号四番、六番の各被告のうち、その余の部分については、第四ないし第七で判断済みである。)、七三番(原告番号一ないし一四三番の各原告に対して、但し、原告番号五四番、七六番、八一番、九四番、一二〇番の各原告を除く。)の各被告の責任

各被告の自らの関与態様(別紙加害態様表の関与類型欄に記載された契約勧誘、翻意阻止、預金(保険、債券)解約、解約阻止、和解締結、証書書換などをいう。)が契約勧誘、翻意阻止、預金解約である場合には、別紙加害態様表の不法行為者欄に記載された同被告らに対応する各原告に対して、同被告らが関与して契約を成立させ、支払わせた契約代金につき、その不法行為者欄に記載されたその余の被告ら、件外人らとの間で共同不法行為が成立し、また、同被告らの自らの関与態様が解約阻止、和解締結、証書書換である場合には、原告らがそれまでに支払つた契約代金などのすべてにつき、同表の不法行為者欄に記載されたその余の被告ら、件外人らとの間で共同不法行為が成立する(但し、第八の二で認定、説示したとおり、具体的な加害態様の主張がないとか、契約の勧誘をしたけれども、それによつて契約が成立したわけではないとか、証拠がないなどの理由で不法行為が成立したとはいえないものや一部棄却部分を除く。)。

さらに、右被告らは、三和信託の商法を推進した幹部として、別紙加害態様表に記載された各原告に対応する不法行為者欄記載の各被告ら、件外人らとの間で共同不法行為が成立する(結局、すべての原告に対し、責任を負う。但し、前同様、不法行為が成立したといえないものなどを除く。以下同じ。)。

(2) 被告番号一〇番、一一番、一三番、一六番、一七番、一九番、二一ないし二五番、二九番、三〇番、三三番、三五番、三六番、三八番、三九番、四一番、四二番、四四ないし五二番、五七番、五八番、六〇番、六一番、六六番、六七番、六九ないし七二番の各被告(右(1)の被告、被告番号一五番、五四番、五五番の各被告、第五ないし第七で判断済みの各被告を除く)の責任

各被告の関与態様が契約勧誘、翻意阻止、預金(保険、債券)解約である場合と、解約阻止、和解締結、証書書換である場合に分かれるが、右(1)の前段と同様の限度で別紙加害態様表の不法行為者欄に同被告らとともに記載されたその余の被告ら、件外人らとの間で(なお、前記幹部との間でも)共同不法行為が成立する。

四  原告らの損害(本件の争点七)について

1  前記第八の二で認定したとおり、原告番号一ないし二三四番の各原告は、別紙加害態様表の支払金額欄記載の金額(但し、第八の二で一部棄却したことになる分を除く。)を三和信託に支払つたことが認められる。

そうすると、原告らが支払つた金額は、別紙認容額一覧表の支払金額欄記載のとおりとなる(これは、加害態様表において認容された金額を合計したものである。)。

原告らの一部が別紙認容額一覧表の填補金額欄記載の各金員を三和信託から受け取つたことは、右原告らの自認するところであり(但し、《証拠略》によれば、原告番号一三四番の原告は自認していないが、填補金額として金二万七二八四円を受け取つたことが認められる。)、また、《証拠略》によれば、三和信託の破産手続において、同表の配当金額欄記載の各金員が原告らに配当されたことが認められるから、これを差し引くこととする(なお、被告らのうち、別紙加害態様表から明らかなとおり、原告らが三和信託に支払つた契約代金などの一部につき責任を負う者については、その範囲で、全部について責任を負う者と連帯(不真正)して支払義務を負う。なお、その場合、同表の填補金額欄記載の金員及び配当金額欄記載の金員の合計が右両者の負担の差額を超える場合は、右一部についてだけ責任を負う者の債務もその限度で消滅すると解すべきであり、その場合は、配当金額欄に充当額を記載して計算した。)。

したがつて、別紙認容額一覧表の支払金額欄記載の金額から填補金額欄記載の金額及び配当金額欄記載の金額を差し引いた実損害額欄記載の金額が原告らが被つた損害となる。

2  慰謝料について

原告らは、被告らの行為によつて相当の精神的苦痛を被つたとして、別紙被害状況一覧表の慰謝料欄記載の金額を慰謝料として請求するが、前記認定の本件における一切の事情を考慮すると、被告らの行為によつて被つた原告の損害は、その出捐した実損害額の賠償、すなわち財産的損害の賠償を得ることによつて償われるものと認めるのが相当であるから、右慰謝料の請求は理由がない。

3  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告らは、原告訴訟代理人らとの間で、本訴の提起、追行と報酬、手数料として、日本弁護士連合会弁護士報酬基準所定の弁護士費用を支払う旨の取決めをしていることが認められ、本件事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌すると、被告らの不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用は、別紙認容額一覧表の弁護士費用欄記載の各金額(実損害額の約一割)とするのが相当である。

五  過失相殺(本件の争点八)について

被告番号四一番の被告は、原告らの過失相殺を主張するもののようであるが、前記認定の事実に照らせば、主として被告ら及び件外人らが執拗かつ集団的、眩惑的に原告らに対して本件契約の締結を勧めた結果、原告らの多くが三和信託との間で多額の契約を締結することとなつたものと認められ、このような状況のもとでは、仮に原告らに必ずしも冷静に対処しなかつた点があつたとしても、それは被告ら及び件外人らの行為によつて誘発させられたものといえ、しかも、被告ら及び件外人らの中にはむしろ積極的に原告らの冷静さを失わせて、金員の交付を受けた者も認められることなどの諸事情に照らすと、右のような点をもつて過失相殺の事由とするのは相当ではないというべきである。したがつて、右主張は採用することができない。

第九  結論

以上によれば、被告番号一ないし九番、一二番、一四番、五三番、五六番の各被告と別紙認容額一覧表の被告番号欄に記載された被告ら(被告番号七三番の被告を除く。)は、連帯して原告らに対し、別紙認容額一覧表の認容額欄記載の各金額の限度(同じ原告番号の認容額が複数になつているものについては、最下段の分が全部の認容額、その余はいずれもその内金である。但し、充当計算の結果、上、下段の金額が同じとなるものがあり、その場合は、上、下段の者も連帯して認容額について支払義務を負う。)でこれを賠償する義務を負い、右被告らが支払うべき賠償額には、不法行為の日の後であることが明らかな昭和六〇年一〇月一七日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金を付して支払うことを要する。

また、同表の原告番号一ないし五三番、五五ないし七五番、七七ないし八〇番、八二ないし九三番、九五ないし一一九番、一二一ないし一四三番の各原告が、破産者レブコに対し、同表認容額欄記載(但し、同じ原告番号の認容額が複数のものについては、そのうち最下段の認容額、また、原告番号一一九番の原告については、右認容額の範囲内である別紙債権届出一覧表の請求金額欄記載の金額)の破産債権を有することを確定する。

原告番号一六三番、一九七番、二〇一番、二二九番の各原告の金員支払請求、その余の原告らの被告らに対するその余の請求(但し、右かつこ書内で番号記載の原告の破産債権確定請求を除く。)はいずれも理由がないから、これを棄却する。

(裁判長裁判官 淺野正樹 裁判官升田純は、転官のため、裁判官鈴木正紀は、転任のため、署名押印することができない。裁判長裁判官 淺野正樹)

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